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黒い夢と白い夢Ⅴ ――暗躍の悪夢――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 †理由† ――クロント州――
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第18話 ダムテムシティの戦い

※ルーシー視点です。

 【クロント州東部 ダムテムシティ】


 私はキャルア中将の逃げ込んだダムテムシティを攻撃していた。気が付けば朝になっていた。昨日の夜にパトラー長官はクロント城に入ったらしい。


「ルーシー将軍、東より連合軍の援軍です!」

「…………!」


 ダムテムシティはクロント州の東端にある。連合政府勢力がうろつく東のレート州にも近かった。恐らくキャルアが援軍を要請したのだろう。

 空に1隻の中型クラスの飛空艇である軍艦が現れる。艦底の砲身が私たちに向けられる。空から地上の私たちを全滅させようというのだろう。


「させるか!」


 私はビリオン=レナトゥスから購入した“スピーダー・アサルト”に飛び乗る。スピーダー・アサルトはカモメのレリーフのような物――カモメを模して造られた板状の乗り物だ。

 このタイプの乗り物はスピーダー・スカイと呼ばれる新型兵器で、空を飛ぶのに使われる。スピーダー・スカイはスピーダー・アサルト以外にもいくつも種類があるらしい。


「しょ、将軍っ!?」

「私があの軍艦を片付けてくる。お前たちはダムテムシティの近くにまで逃げるんだ!」

「イ、イエッサー!」


 私はスピーダー・アサルトを発進させる。このマシンは立って乗る機械だ。かなりの操縦訓練を必要とする(素人だとしがみ付く者も多い)。

 スピーダー・アサルトはスピードに特化したスピーダー・マシンだ。飛んでくる砲弾を避けながら、あっという間に空に浮かぶ軍艦に迫る。

 軍艦の前頭部にあるガラス張りの最高司令室が見えてきた。中では人間型ロボットのバトル=コマンダーたちが軍艦を操縦している。

 私は最高司令室に近づくと、槍の先端に黒と青のエネルギーを溜めていく。


「これ、好きじゃないっ……」


 自分の命を削るような魔法だ。だが、あの最高司令室を破壊するには、これしかない。エネルギーを充分に溜めると、私は槍を勢いよく振る。

 黒と青の魔法弾――ラグナロク・ランスは一直線にガラス張りの最高司令室へと飛んでいく。強化ガラスに当たり、そこを木端微塵に砕き、破壊的なエネルギーを誇るそれは中へと突っ込む。

 たちまち凄まじい爆発を起こし、内部は何もかも吹き飛んでしまう。内部での爆発でガラスが全て吹き飛ぶ。


「よし……」


 自らに回復弾を当てながら、私は軍艦と距離を取る。軍艦は高度を急速に落とし、ダムテム・フォレストへと落ちていく。

 私はスピーダー・アサルトを逆方向に向け、再びダムテムシティへと戻って行く。軍艦は墜落し、爆発・炎上した。轟音が背後で鳴り響いた。



「ルーシー将軍、ご無事で!」

「さすが、ルーシー将軍!」


 戦場へと戻ると、部下たちが歓声を上げる。一方、最初は援軍が来たと喜んでいたダムテムシティのファンタジア軍は完全に意気消沈してしまっている。

 私は拡声器を部下から受け取ると、気分が沈んでしまっているファンタジア兵が大勢いるダムテムシティの方を向く。城壁には悔しそうな顔をするキャルアの姿もある。


[ファンタジア王国軍よ、これ以上の戦いはもはや無意味だ! 連合軍の援軍も、もう来ないぞ! すぐに降伏すれば臨時政府の名において君たちの保護を約束しよう! 君たちが戦い続ければ、兵力で圧倒的優位にある君たちは勝てるかも知れない。だが、次はクラスタ将軍が大軍で押し寄せて来る。私を殺していたら、君たちはもはや保護されないだろう!]


 ファンタジア兵たちの間で動揺が起こる。実は軍艦は破壊したものの、こっちは圧倒的に不利な状況にあった。なにしろ兵力が全然違うのだ。あっちは10万人近くいる。なのに、こっちは5000人だ。

 だが、すでにファンタジア軍は疲れ果てている。逃げ出す兵士も多い。キャルア1人が一生懸命戦っているだけだ。


「黙れ、槍女! 我ら偉大なるファンタジア軍は降伏しないぞ! 例えクラスタがやって来ようとも、ファンタジア王国の為に、最後の1人まで戦い続ける!」


 キャルアは怒鳴るように言う。全く降伏の意志はない。まぁ、メートル平原からこんなに遠いダムテムシティまで落ち延びてくるぐらいだからな。サファティらファンタジア王国に対する忠誠心は相当に強いのだろう。

 しかし、疲れ果てたファンタジア兵は違った。キャルアの言葉に、動揺がますます激しくなってきている。

 そのとき、城壁にいるキャルアに誰かが近づいて行く。ただのファンタジア兵の1人だ。彼はキャルアの背後から彼を勢いよく突き飛ばす。


「う、うわーーっ!」


 城壁から突き飛ばされたキャルアは、悲鳴を上げながら落っこちていく。地面は岩ばかりだ。そこに頭を打ち付ける。血が飛ぶ。アレじゃ生きてないだろう。

 ダムテムシティの城門が開いて行く。どうやら、城兵たちは降伏の道を選んだようだった。


 日が高く昇り切らない内に、ダムテムシティでの戦いは終わりを迎えた。これでクロント州東部は、臨時政府によって制圧された。

 残るのはパトラー長官が向かったクロントシティだけだ。上手くサファシアを捕まえているといいのだが……。

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