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黒い夢と白い夢Ⅴ ――暗躍の悪夢――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 †理由† ――クロント州――
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第11話 クラスタの作戦

※クラスタ視点です。

 【メートル平原東部 臨時政府軍駐屯地】


 メートル平原に夜が訪れた。緒戦での作戦が成功した私たちは、メートル平原の東部に駐屯していた。これから第二段階に入る予定だった。


「クラスタ将軍、ライポート中将、ロッド中将、ティラス中将、スピーシー中将がやって参りました」


 駐屯地に着陸させた中型飛空艇の最高司令室。私の側にいたシューティ少将が言う。それと同時に、最高司令室の扉が開き、4人の中将が入ってくる。今回、率いてきた中将は彼ら4人だけだ。


「そろそろ時間だ。攻撃に移るぞ」

「……分かりました」


 今は深夜だ。美しい月明かりが、メートル平原を照らしている。長い草が、風になびいている。今日は風が強いらしい。

 私はやってきた4人の中将たちに命令を下していく。


「ライポート中将は一個旅団(=1万5360人)を率いて、ファンタジア軍陣営を西部から攻撃しろ」

「イエッサー!」

「ロッド中将は一個連隊(=3840人)を率いて、ファンタジア軍陣営を北部から攻撃しろ。攻撃のタイミングはライポート中将の部隊が攻撃し、敵の軍勢が西部に向かってからだ」

「了解です。お任せを!」

「ティラス中将は一個連隊を率いて、ファンタジア軍陣営を南部から攻撃しろ。攻撃開始のタイミングはロッド中将の部隊と同じだ」

「はっ!」


 ロッドとティラスも、そこそこ実力がある中将だ。私との行動期間はライポートの方が長いため、彼らの実力を本当に理解しているワケではないが、今は亡き政府軍の将軍がかなり信頼していたらしい。恐らく2人も中将としての実力はあるだろう。


「スピーシー中将は一個大隊(=960人)を率いて、ファンタジア陣営を東部から攻撃しろ。攻撃のタイミングはロッド中将とティラス中将が攻撃し、軍勢が混乱してからだ。そして、敵の指揮官を捕まえろ。情報によれば、敵の指揮官は陣営中央の飛空艇着陸場だ」

「イエッサー!」


 スピーシーは力強く返事をする。彼は降水都市プレリアシティまで行動を共にしていたジェルクス将軍の片腕とも言われる軍人だ。彼なら、必ず敵の指揮官と飛空艇艦隊を制圧するだろう。

 4人の中将たちは全員、最高司令室から出ていく。残されたのは私とシューティ少将だけだ。


「クラスタ将軍、それでは我らも……」

「ああ、そうだな。そろそろ移動した方がいいだろうな」


 私とシューティは共に中型飛空艇の最高司令室から出ていく。これでファンタジア一般軍は制圧したも同然だ。





 【メートル平原 西部】


 私たちは僅かな部下と共に、メートル平原の西部へとやってきた。巨大なシールドに守られたファンタジア軍の陣営は煌々と明かりが灯っている。

 しばらく待機していると、私の持つ小型通信機に連絡が入る。通信を入れると、小さな立体映像が現れる。“ファンタジア軍陣営の内部にいる”我が軍の兵士だ。


[クラスタ将軍、お見事です。将軍の予測が当たりました]

「そうか」


 私はニヤリと笑う。まぁ、そうだろうな。

 実は昼間の無茶な緒戦は、わざわざ負けに行ったワケじゃない。戦いの最中、私たちの軍は中型飛空艇を着陸させ、歩兵部隊を上陸させた。すると、ファンタジア軍も歩兵部隊を出し、両軍入り乱れての戦いとなった。その戦いに紛れて、ファンタジア一般兵の姿をした我が軍の兵士を、スパイとしてファンタジア軍陣営に侵入させたのだ。

 75万人の超大軍。しかも、大勢が徴兵と傭兵、賞金稼ぎ。挙句の果ては海賊や囚人までいる。陣営内では、それぞれが勝手にテントを立てている。オマケに特に点呼などもしていない。それらの事実は、事前に得ていた。


「ライポート、あと20分後に攻撃を開始しろ」

[イエッサー]


 私はライポートに、攻撃のタイミングを伝える。

 今、この陣営には50万ほどの将兵がいる。残りの25万人は、私の駐屯地へ夜襲をしにいったらしい。率いているのはキャルア中将。不意を突いて攻撃する戦法が得意らしい。それで多くの戦い――連合軍との戦いを勝っている。


「自信過剰だな」


 今、私たちの駐屯地には誰もいない。明かりだけが灯っている。キャルアも私を警戒しているだろう。ゆっくりと、慎重にメートル平原の長い草の中を進んでいるハズだ。到着し、謀られたことに気が付くまで、だいたい30分はかかるだろう。


「メートル平原とはいい場所だな」

「……長い草、ですか?」

「そう。この草がいい」


 メートル平原全体を覆う長い草。普通に2メートルはある。長いものだと3メートルぐらいはあるだろう。これだけ長い草に覆われた平原。身を隠すには十分だ。

 それに平原での白兵戦は、兵力がキーポイントとなる。それはキャルアやランドゲートも分かっているだろう。だから、私は敢えてメートル平原に進んだ。彼らも乗ってきた。

 だが、警戒はしているようだ。なぜ、私が明らかに不利な場所に布陣したのか、不思議がっているだろう。昼に追撃しなかったのも、そこに理由の1つがある。



「……クラスタ将軍、そろそろですな」

「これで指揮官を取り押さえれば、私たちは勝てる――!」


 私がそう行ったとき、遠くから大勢の声が聞こえてきた。そして、僅かながらに戦闘音も。ライポート率いる軍勢が、ファンタジア軍陣営の西側から攻め込んだようだ――。

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