表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅴ ――暗躍の悪夢――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 †理由† ――クロント州――
11/103

第10話 メートル平原での緒戦

※クラスタ視点です。

 【クロント州西部 メートル平原】


 私たちは2万の兵を率いてメートル平原へとやってきた。相手はランドゲート中将、スネイム中将、トトール中将、キャルア中将、バケット中将の5人が率いるファンタジア一般軍。その数は75万人にもなるらしい。メートル平原の西部に、その大兵団が見える。

 一応、ファンタジアの一般軍は、あれで全てらしい。この前降伏させた60万の兵団とここにいる75万の兵団。それがファンタジアの一般軍だ。


「ライポート中将、私の指示通りに動け」

[イエッサー]


 私は無線機で、他の飛空艇に乗るカーコリアに連絡を取る。それにしても、メートル平原は広大な平原だな。しかも、長い草ばかりで見通しがいい。

 3隻の中型飛空艇が、メートル平原の地上に布陣したファンタジア軍に近づいて行く。ファンタジア軍の巨大陣営は、完全にシールドに包まれている。飛空艇のような大きなモノでは突破できない。だから、ガンシップで突破するか、シールド付近で飛空艇を着陸させて、そこから歩いて行くしかなかった。


[クラスタ将軍、これよりファンタジア陣営を攻撃します]

「よし」


 太陽が空の真上に昇ったとき、戦端は開かれた。ライポート率いる3隻の中型飛空艇がファンタジア軍の陣営に近づき、何十機ものガンシップを解き放つ。その途端、対空砲がファンタジア軍から放たれる。

 敵は何十門もの対空砲を用意しているらしく、おびただしい数の砲弾が地上から空へと飛ぶ。その一部はガンシップに直撃し、木端微塵に砕く。当たらなかった砲弾は、シールドを張った中型飛空艇に当たる。シールドを張っているとはいっても、完全に防げるワケじゃない。


[クラスタ将軍、敵は空からの攻撃を完全に予測していました! 凄い数の対空砲です!]

「…………」


 私たち臨時政府軍の中型飛空艇は全部で4隻。私を乗せた飛空艇だけが、後ろに下がっている。他の3隻はライポートが率い、ファンタジア軍の陣営を攻撃している。

 ガンシップを全機解き放ったライポートは、中型飛空艇3隻を着陸させ、歩兵部隊を上陸させる。空から陸から攻撃を開始する。

 しかし、兵力に違いがあり過ぎる。2万5000と75万だ。時間と共にライポート率いる軍勢は押され始める。ファンタジア陣営からも、次々と戦車や歩兵部隊が出撃する。平原で殺し合いとなる。


[クラスタ将軍、もうこれ以上は……]

「……全部隊を撤退させろ」

[イ、イエッサー!]


 ライポートからの報告を受けて、私は撤退を命じる。残っていたガンシップ部隊も平原の歩兵部隊も一斉に撤退を始める。しかし、当然のことながらファンタジア軍の追撃が始まる。

 兵とガンシップを収納した中型飛空艇はこちらへと飛んでくる。どの機体も損傷が激しい。煙や炎を噴いている。

 そんな飛空艇を片付けようと、ファンタジア軍の陣営から、私たちが使う飛空艇と同タイプの中型飛空艇7隻、ビリオン=レナトゥスから購入したと思われる軍艦15隻が飛んでくる。飛びながら砲撃してくる。


[うわぁっ!]

「もう少しだ、ライポート」


 やがて、傷ついた3隻の飛空艇は、私の乗る飛空艇の横を通り過ぎ、更に後ろまで下がって行く。私はそれと同時に、この飛空艇を進めるよう命じる。

 それと同時に、追撃してきていた7隻の中型飛空艇、黒の機体に緑のラインが入った15隻の軍艦の艦隊は慌てて方向を変え、陣営に逃げ出す。


「こ、これはどういうことですか!?」

「フフフ……」


 側にいたシューティ少将の質問を笑みで返す。ファンタジア艦隊が逃げ帰ったところで、私は撤退を命じる。


 私はその昔、プレリアシティを占領したことがある。そのとき、このクロント州やファンタジア州も完全に制圧した。更には大陸中部・西部にも進出し、大陸南半分を僅かな期間で制圧した。つまり、自分で言うのもなんだが、私はそこそこ名が知れ渡っている。

 あのファンタジア軍は、私が指揮官であることを知っている。また何かよからぬ作戦でも企んだのではないかと考え、逃げ出したのだろう。

 オマケに、あのファンタジア一般軍は大部分が徴兵された軍人。もはや忠誠心なんかは全くといっていいほどない。命惜しさにすぐ逃げ出す。


「さて、私たちもメートル平原東部の陣営に戻るぞ」

「イエッサー」


 私を乗せた中型飛空艇も向きを変え、ファンタジア軍の陣営から離れていく。向かう先は3隻の飛空艇が向かった場所だ。

 作戦は成功だ。だが、ファンタジア軍の被害はほとんどない。一方、こちらは大きな被害を被っている。死んだ兵士もいるだろう。

 今日ここで死んだ兵士たちの死を無駄にはしない。戦争の終結と平和の復興。私やパトラーに出来るのはそれだけだ。“正義”なんて、人殺しを撒き起こす私たちには、到底掲げることは出来ない。中型飛空艇の窓から、地上を覆う長い草の海を見ながら、私は思った。


「…………」


 作戦は成功だ。いや、こういった方がいいか。“作戦の第一段階”は成功だ。次でファンタジア軍に衝撃を与える――!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ