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とあるわが家の王女さま!  作者: 華凜
2章:魔王、現る!
7/31

第7部 魔王、やってくる!!

お気に入りや評価を付けてくださる皆様、ありがとうございます!

まだもう少し続きそうなので温かい目で見守って頂けたら幸いです。


執筆の励みになりますので、貴重な御感想や評価等、引き続きお待ちしています。


 ぴん、ぽーん。



カーテン越しに差し込む麗らかな日差しの中、宅配便であろうチャイムの音が響き渡る。


ちょうど皿の後片付けをしようと台所にいた僕は中々手が離せず、再度チャイムが鳴るまでインターホンに手をかけることができなかった。


「はいはい、どちらさまで」


今は忙しいんだ。できることなら後日にでもしてほしいくらい。


そんな切羽詰まった僕に電話口の相手が投げかけてきた言葉は、姫ちゃんと同じくらい衝撃的なものだった。


『魔王なる者だ。 ちとおぬしに用があって―――』

ガチャン。


よし、後片付けに専念するか。



ぴんぽーん、ぴんぽーん。


無視しよう。関わってはいけない。



ぴんぽーん、ぴんぴんぴんぴんぴんぽーん。


「だぁあもう! 人ん家のチャイムで遊ぶなぁ!!!」

『おぬしが無視するからだ』

「魔王さんが僕の家に何の用ですか!」

『単に挨拶に来ただけだ。 怪しい者ではない。 我を通してくれ』


怪しい人に限って怪しくないと主張するものである。


他人の家のチャイムで遊んだ罪は大きい、と知らしめるため説教する気満々で玄関を開ける。

電話口の声はかなり低かったのでそれなりに歳を喰った男を想像していた。

が、いざドアを開けてみると、僕の目線の高さに馬の顔が見えた。


唖然としたまま視線を上げる。


するとそこには白銀色の鎧と体の2倍はあろうかという黒マントを纏い、さらには黒馬に跨った若い男の姿があった。




……ただし超チビ。


「おぬしがこの屋敷の長か」


初めてこのボロ家が屋敷呼ばわりされたよ。なんか嬉しいなあ。


「そ、そうですけど何か用ですか?」

「いや、用という用は無い」

「さっき『ちと用が』何とか言ってたじゃん!?」

「うむ。 そんなことも言ったか?」

「なんで肯定と疑問を一緒にしてくるのさ!」

「うるさい男だ。 男にモテぬぞ」

「野郎は廃棄処分です」

「まあいい。 我は異世界の大王、アレクサンポポス。 勇者からは『魔王』や『大魔王』と呼ばれていた」



でた、魔王。



姫ちゃんの一件があるからもう驚くこともないが。


「私用で向かいの『まんしょん』とやらに引っ越して来たため、礼儀も兼ねて挨拶に馳せ参じた」

「異世界からはるばるご苦労様です」

「うむ。 ほれ、ホモなおぬしに異世界からの土産を持ってきてやったぞ」

「どっから僕がホモっていう設定が浮かんだの!? ねえ!? つか、なにこれ」


アレクサンポポス大王と名乗る変態から手渡されたのは細長い木箱。

見た目お菓子ではないし、タオルとかお歳暮っぽい形状ではないぞ。


「ダークソードだ」

「中二か!!!」

「まあそう嬉しがるな」

「僕のどこを見て喜んでいる風に見えたの!?」


何ならこの魔王とやらをダークソードでぶった切ってやろうか。

僕が色んな意味で怒っているとは知らず、魔王なるチビはケタケタ笑いながら馬の手綱に手を添えた。


「我はこの地に引っ越してきて間もないゆえ、なにぶんここらは分からぬことが多い。 引っ越し荷物の整理もあるため、話が分かりそうなおぬしに手伝ってもらいたいのだ」

「嫌です。 他の人に頼んでくださいよ」

「他の者にも頼んだのだが、『魔王』と名乗ると畏れ多いとばかりに扉を閉めてしまうのだ」

「不審者と思われてるからだよ。 それ」


そりゃあ馬に乗ったチビに「魔王だ」とか言われると、色んな意味でフェードアウトしたくなる気持ちは分からないでもない。

通報されなかっただけラッキーだね。


「うぬぬ。 ……おぬし、名はなんという?」

「柴崎康介ですけど」

「ならば康介よ。 金貨30枚の30万ルピスで雇われてくれぬか?」

金貨30枚の30万ルピスか。


絶対にこの国じゃ流通しないようなお金っぽいぞ。貰ったところで使いようもないけど、まあ相手は魔王だし、断ってしまったら怒りを買って「ダークバーストぉ!!」とか言って僕の家を破壊されても困るし。


「わかったよ。 荷物の整理くらいならしてあげるよ」

「まことか!?」

「うん。 ただし報酬は約束してよね」

「我は闇の帝王ぞ? 約束を違えるわけがなかろう」


馬が踵を返すと、彼は「向かいの302号室で待っておる」とだけ言い残し、信号無視も甚だしく4車線の道路を、「はいやっ!」と突っ切って帰って行った。



「魔王の家ねえ」

ダークソードとやらの入った木箱を手にしながら向かいのマンションを見遣る。

行き交う車の向こうでは赤信号無視による大迷惑でドライバーから罵声を浴びせられている魔王がある。


実にシュールな光景といえよう。


 兎にも角にも家内の凄惨な状況を処理しなければいけないと、僕は靴箱の上に剣を置いてリビングに戻った。


「ただいま」


返事はない。

姫ちゃんは泣き疲れたのか、目元を赤くしたまま寝てしまっていた。

むにゃむにゃ可愛らしく寝言を言っている様は実に気持ちよさそう。


片付けが終わったら新しい皿を買いに行くついでに魔王の家に寄って来る、と言おうとしたけど、今起こしてしまうのは酷だろうな。


そんな気がして僕は二階からタオルケットを持ってきてかけてやった。


ラブコメ………といいながらその原型を留めていない内容ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。

誤字脱字などがあれば、お知らせください。<(_ _)>

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