最終話 姫ちゃん、命令する!!
最終話です。
ご声援ありがとうございました<(_ _)>
「勝負、ありましたわね!」
「…………。」
「…………。」
スコア、デュース戦の結果25対27で惜敗。
姫ちゃんサイド2セット、魔王サイド2セット取得の最終決戦はデュースだけで1時間続いた。
しかし魔王がレシーブとリリースを取り違え、さらにフィアさんの強烈スパイクを入れられて敗北。
「ちょっと魔王! なんでボールが来たらリリースしちゃうのさ!!」
「仕方なかろう!! 嫁がオーバーヘッドシュートを決めてくるとは想像がつかんかったのだ!!」
ま、まあね。
バレーは足を使っても許される競技だが、まさかフィアさんがサッカー選手顔負けのオーバーヘッドで点を狙いに来るとは思わなかった。
(負けたことを悔やんでも仕方ない……か)
気付いた時にはすでに夕暮れ。
海水浴客らはぞろぞろと帰り始め、人の海だったビーチに残ってバレーを続けていたのは僕らぐらいだ。
「さあポポ君、覚悟しいや」
戦勝人のフィアさんが魔王の前に立ちはだかる。
なんとその手には人質のカメラが。
「待て! 落ち着け!! ストォップ!! 間違っても壊すでないぞ!!」
敗戦人の魔王は土下座しながら命乞い。
カメラ一台にそこまでするとは。
「フィア! きょ、今日も可愛いぞ! カメラを返してくれたらさらに美人ぞ!」
「ふーん?」
「何でもする! 何でもするからそのカメラだけは――」
ベキッ、ゴシャア!!
「きょえええ!!!!」
(すげえ。 握力だけでカメラぶっ潰した)
「あたし以外の女とイチャイチャしよって!! 今日という今日は許さへんで!!!」
ダッ (魔王、ダッシュ)
「あ、こら! 待たんかい!!」
フィアさんが再びバズーカを構えると、魔王は陸上選手も驚くクラウチングスタートで遁走し始めた。
そりゃあ兵器を持った嫁に追いかけられると、魔王だって逃げたくなるだろうよ。
浜で走り回る魔王と数本の火柱を眺めていると、夕日を見つめる姫ちゃんがポツリと言った。
「わたくし、こーすけを好きにしてよろしいのね?」
「うぐっ……」
姫ちゃんの目がキラキラ輝いている。
僕のどこかにある野生の勘が告げている。「逃げろ」と。
「おっと、そういや僕は用事――」
「逃がしませんわ!」
ガシッ
「ぎゃっ」
こっそり逃げようとするも、姫ちゃんに腕を掴まれた。
1日負けた側を自由にできるという約束の元、僕はビーチバレーに負けてしまったわけだ。
今日の姫ちゃんには僕を自由に扱うことができる。
(ああ、こんなことならバレーなんかしなきゃよかった……)
「わたくしが勝ったんだから、命令しますわね」
「……しぇい」
腹をくくれ、僕。
「じ、じゃあその……わ、わたくしとこっちに来なさい!!」
「うわっ!」
姫ちゃんは僕の腕を乱暴に引っ張ると、海岸線に沿って夕日に向かって駆け出した。
「ちょっ、どこ行く気!?」
「下僕なら黙ってついてらっしゃい!」
「下僕……」
まあ呼ばれ慣れているから今更拘泥することもないけど。
姫ちゃんは浜の端っこまで来ると、小さな灯台に続く石段を上がり始めた。
どうやら上に行こうとしているらしい。
100段ほどの階段を一気に上り切り、姫ちゃんはやっとそこで足を止めた。
「…すげえ……」
灯台の下から見えた景色は幻想的だった。
遥か水平線の向こう側に沈む太陽が空を茜色に染めている。
遠くには貨物船らしき船がゆっくり動く様子や、海上で旋回する無数の海鳥たちが一望できる。
「こーすけ!」
「うわ!!?」
姫ちゃんは周りに誰もいないことを確認すると、急に僕に抱き付いてきた。
夕焼けのせいか、彼女の顔はやや赤みを帯びているように見える。
「ちょ、いきなりどうし――」
「んっ」
その時、彼女はそっと僕の唇に口づけをした。
(……姫ちゃん!?)
最初は何かの間違いかと思った。
いつも口が汚れたら唇を差し出す動作をするから、それほど焦らなかったけど、今日はいつもと違う。
姫ちゃんの腕が僕の背中に回っている。
彼女はギュッと僕の体を抱き寄せ、静かに口づけを落としている。
――キスしているのだ。
「…………。」
「…………。」
姫ちゃんは僕の体から離れると、今までになく激しく顔を沸騰させた。
「……か、勘違い…なさらないでね!! べ、べべ、別にそういうのじゃなくてよ!」
「姫ちゃん――」
「わ、わたくしが勝ったら『好きにしていい』っておっしゃったこーすけが悪いのよ!」
ふんっ、と赤い顔をしてそっぽを向く姫ちゃん。
でもチラチラと僕の顔色をうかがっては、何かを言いたそうにしている。
「……ス」
「へ?」
「…ス……て!」
「素手?」
「キスしてって言ってるの!」
姫ちゃんは顔中の穴と云う穴から湯気を噴出させながら叫んだ。
恥ずかしかったのか、赤い顔の上に少し涙が浮かんでいる。
――そっか。
なんで姫ちゃんが僕をここに連れてきたのか、わかった気がする。
夕日が映えるこの絶景のスポットに。
「うん」
姫ちゃんらしい命令にうなずきを返す。
すると彼女はパッと明るい笑顔を見せ、何も言わずに自らその四肢を委ねてきた。
僕は勇気を振り絞って華奢な身体を抱き寄せる。
そして―――
海から上がってきた海風が僕らを包みこむ。
ザザァっと海岸に打ち寄せては返す波の音だけが僕らに聞こえる唯一の音。
遥か遠くに沈みゆく太陽に臨む僕らを、茜色の夕日が静かに照らしていた。
最後まで読んでいただいた方、チラッとでも覗いてくださった方、ありがとうございました!
今後、続編的なのを出そうか迷ってます(2014年1月14日現在)
いつでもご感想お待ちしております!




