第29部 姫ちゃん、魔王とビーチバレー!
魔王の修復術で壊れた海の家を修復したのち、彼はフィアさんにこっぴどくお説教を喰らわされた。
まあ悪いのは完全に魔王だから弁護のしようもない。
懲りもせず真っ黒焦げになった魔王が席に着くと、急にフィアさんが人差し指を立てた。
「そんなに水着のお姉さんが見たいんやったら、こっちにも考えがあるわ」
「「?」」
フィアさんはさっきコインロッカーに兵器を取りに行ったついでに、何やら小さめの布袋を一緒に持って帰って来た。
彼女はその袋を開け、僕らの方に折りたたまれた何かを見せる。
「なにこれ」
「ビーチボール。 これで2対2に分かれてビーチバレーして、勝った側が負けた側を1日好きにできるってのはどう?」
「ということは……」
僕と魔王の視線が合った。
「男女で別れて試合をするのもアリ?」
「もちろん。 康介君らが勝ったら、あたしらはあんたらがどんなことしようが文句言わんし、兵器も使わへん」
平常時に兵器の使用がある時点で犯罪臭がプンプンする。
「ま、負けたら?」
「負けたらどうなるって?」
フィアさんと姫ちゃんはお互いに顔を合わせ、ムフフと気味の悪い笑みを浮かべた。
「「ヒ・ミ・ツ」」
「やめて、特に姫ちゃん!!」
この王女さまに1日自由権を与えるとトンデモナイことになるのは目に見えている!
ただでもトンデモナイのに、このままでは姫ちゃんの超絶対王政が幕を開けてしまう!!
――いや待て。
僕達が勝てばいいだけの話じゃないか。
勝てば好きにできる、ということは、姫ちゃんを大人しくさせることもできるということ。
そうすれば僕も自由に泳げるし、魔王だって水着のお姉さんとフリーダムっ!
「その勝負、受けて立とうじゃないか! ね、魔王」
「うむ! 我が野望の為に負けるわけにはいかぬな」
「決まりやね」
「こーすけには絶対に勝ちますわ!」
かくして食後のビーチバレー戦争が幕を開けたのである。
――☆――☆――
「先に3セット先取した方が勝ちやで」
ネットを挟み、先攻のフィアさんがビーチボールを抱えながら言う。
姫ちゃんは異世界でもバドミントンやその他の貴族遊戯をご堪能していたらしく、大体の要領は得ているらしい。
まあそれはいいのだが、
「ところで魔王」
「うむ?」
「魔王ってさ、身長の方大丈夫?」
魔王は身長130センチほどのチビである。
バレーには酷く不利な体格だ。
「問題なかろう。 スパイクを決めるのはおぬしだ。 我は飛んで来た球をリリースする」
「レシーブしてね?」
「そうともいう」
「そうとしか言わないよ!! 逃がすのは魚だけにしてくれるかなッ!!」
飛んで来た球をコート外に放流されたのではたまったものではない。
「ほな、行くで~」
フィアさんからポーンと優しい球が飛んでくる。
ビーチバレーというのはやはり男女でキャッキャやるもんだし、世界バレーみたいにガチでやり合う必要なんてないよね!
「ホレ康介!」
「ほいよっ」
魔王がトスしたボールに対し、僕が敵陣にそのまま打ち流す。
もちろん本気ではない。
バスッ
っと、姫ちゃんがオロオロする間に敵陣に着弾。
「やったね魔王!」
「うむ!」
「うーっ!! こーすけのいじわる!! もっと優しく撃ちなさい!」
「そうそう。 女の子なんやから手加減して」
うーん、かなり手加減したつもりなんだが。
まあ決まってしまったものは仕方ない。
とりあえず次はこちらからのサーブだ。
「姫さん、もう本気でやってええで」
「ええ! こーすけにギャフンと言わせてやりますわ!」
嫌な予感しかしないのは何故だ。
「じ、じゃあ行くよ」
あえて手加減して、やわらかくポーンっと下打ち。
ボールは緩やかな弧を描いて姫ちゃんサイドに行った――
――が!!
「姫さん!」
「わかりましたわ!!」
素早くフィアさんがレシーブし、姫ちゃんは飛び上がるや否や、ダイレクトに超絶スパイク!!
「てやっ!」
ズドォンッ!!
――もはやビーチバレーの音声ではない。
目の前に砲弾が着弾したかのような爆音である。
「「やったぁ!」」
「『やったぁ』じゃねえよ!! 僕らを殺す気なの!?」
まるで隕石が降って来たかのようなクレーターが僕の真横に。
隕石の正体がビーチボールなんだから驚きだ。
楽しいビーチバレーが死地バレーになりかねない。
僕らが動揺していると、姫ちゃんは口に手を当てて微笑した。
「棄権するなら今の内ですわよ?」
「くっ!!」
姫ちゃんの破壊力を見せつけられて棄権したい気持ちは山々だが、あの王女さまに自由権を与えてしまうとトンデモナイ事が起こる!!
なんとしてもここで勝利し、王女さまの暴走を阻止しなければならない。
それに、魔王だって必死だ。
もし負けたら人質に取られているカメラがフィアさんによって破壊され、彼は水着のお姉さんを撮影できなくなってしまうからね!
「――康介よ」
「わかってる。 この試合、絶対に負けるわけにはいかない!!」




