第22話 姫ちゃん、戻ってくる!
第3話に挿絵を表示しました。
あくまでイメージです。
「うおおおお!!!」
魔王がその命を懸けてフェラーリと激突しようとした、その瞬間、
ベチーンッ!!!!!
へ?
突然、魔王とフェラーリの頭上から新聞紙が降ってきたのだ。
横を見ると、アリのバリケードは何者かの巨大スリッパによって破壊されており、魔王と台所の帝王は新聞紙の下敷きに。
ふと上を見上げると、真っ先に僕の視界に飛び込んできたのは、水玉模様のパンツだった。
「んもう! この家にも“黒い悪魔”が潜んでいらしただなんて。 後でこーすけを叱らなくてはいけませんわね!」
姫ちゃん!?
なんと魔王とフェラーリを叩きのめしたのは、行方不明になっていたはずの姫ちゃんだった!
彼女なら「きゃあ! 虫よ!!」などと言って叫びそうなのに、迷うことなく新聞叩きとは、手慣れたものである。
姫ちゃん、強し。
まあ彼女が見つかったことは大変喜ばしいことだが、姫ちゃんは新聞紙の裏を見ようとはせず、そのままゴミ袋にポイ。
魔王がフェラーリと仲良く焼却処分場行の特急列車に乗せられた。
王女さまがキュッキュッと袋を縛っていると、『赤とんぼ』の歌が流れて来て、
「あぁ、お待ちになってぇ! 愛しのゴミ収集車様ぁ~」
などと言って、姫ちゃんはゴミを出しに行ってしまったのだ。
って、ヤバい!
早く魔王を助けないと!!
ぽん、ヒュルルルル……
姫ちゃんの後を追おうとした時、丁度30分経って体が元に戻った。
急いで玄関に駆け出し、魔王を一刻でも早く救出しようとするも―――
ガチャッ
「あ」
「え?」
ドアを開けた時、僕と姫ちゃんの目が合った。
ふと彼女の手元に視線を落とすも、ゴミ袋は無い。
「こ、こーすけ! またまたわたくしを放置プレイしましたわね!!」
「してないよ!! むしろ探してたんだよ!!」
姫ちゃんを探してフェラーリに追いかけられる羽目になったのである。
人が折角心配してやったんだから、礼の一つくらい言ってほしいくらいだ。
「ずっとどこにいたの!?」
「どこって、わたくしはずっとリビングにいましたわよ?」
「嘘だ! いなかったじゃん!」
「いましたわ! ピンク色のラムネを一つ食べたら体が小っちゃくなってしまい、ずっとテーブルの上でこーすけの助けを待っていたのですわ!!」
「テーブル!?」
そうか!
ウチのテーブルは新聞やら雑誌やらが散乱してて、姫ちゃんが小さくなっていたことも相まって、気付けなかったんだ!
「じゃああのピンク色のカプセルの残りは?」
「いつも頑張るわたくしへのご褒美に、と、冷蔵庫にしまってありますの」
その後、僕は姫ちゃんの経験した一部始終を聞き、自らの経験と照らし合わせてみた。
まとめてみると以下のようになる。
1、姫ちゃんは瓶の中の薬をラムネと勘違いし、中身をゴッソリ抜き取って冷蔵庫にインした。
2、彼女はそのまま瓶を台所に忘れてしまい、朝食を食べようとテーブルに来た時、ラムネを一粒食べ、小さくなった。
3、姫ちゃんがテーブルにいるとも知らず、僕らは薬が置かれていた場所、つまりは台所で服用したと早合点し、台所のどこかに彼女がいると信じ切ってしまっていた。
ちょうど姫ちゃんと僕らが服用した時間が、どうも入れ違いになったらしい。
なんだ、そういうことだったのか。
よかったよかった。
……ん?
なんか大切なことを忘れてるような。
「あ、魔王!!」
「きゃっ」
突然叫んでしまい、姫ちゃんはビクッと肩を震わせる。
でもそんなことお構いなしに彼女の肩を両手でつかみ、
「姫ちゃん!! さっきのゴミ袋どうしたの!?」
「ご、ゴミ袋なら、作業服を纏ったダンディーな御方が運ばれていきましたわ」
「…………。」
ごめんよ、魔王。
君のことは一生忘れないからね。
――☆――☆――
後日、近所のホームセンターでゴ○ジェットスプレーが消えるという噂を耳にした。
なんでも、黒馬に跨った鎧のチビが『在庫のすべてをよこせ』と言って買い占めていくという話だ。
―――それからというもの、魔王はしばらく僕の家に遊びに来なかった。
評価等頂けると幸いです。




