第20部 魔王、VS台所の帝王!!
久しぶりに『だぁくそぉど』が登場します。
「どったの?」
樹海を抜けた先で立ち尽くす魔王に問いかける。
彼は前を向いたまましんと静まり、まま動く気配が無い。
顔からはサーッと血の気が引いており、さっきのウキウキしたテンションは嘘のように翳っている。
「何でここで止まっ―――」
「静かにッ!!」
魔王は僕の口を押さえた。
そして深呼吸をした後、台所の奥底を震えながら指差す。
(お、おぬしなら見えるであろう。 あのおぞましき闇の怪物が)
(闇の怪物?)
出た、台所の帝王。
野生の『台所の帝王』が現れた!
戦いますか?
⇒いいえ
いいえ
逃げますか?
⇒はい
はい
(お、落ち着け! 今の奴と戦えば間違いなく殺される。 奴の戦闘能力は凄まじい)
(戦闘能力!?)
(アレはドラゴンをも凌駕する猛獣だ)
(ドラゴンも!? てか昆虫でなく猛獣なの!?)
(我が察するに、攻撃力は3万ポイントを超えるッ)
まあその数字がどれほど凄いのかわからないが。
目前に控える“奴”の大きさから見て、その戦闘能力が半端じゃないことだけは判るけど。
例えて言うなら、僕らの目の前にクジラが横たわっている感覚とでも言っておこうか。
殺虫スプレーが手元にないのは、ラスボス戦で回復アイテムが無いのと同じだけ辛い。
「ど、どうすればいいの魔王!」
(声をあげるでない! 今起こしてしまえば怒り狂い、体内に秘める恐るべき魔力を解放してしまう恐れがある!!)
ファンタジー系の会話になりそうです。
(殺虫スプレーも無いのにどうやって立ち向かえばいいのさ!!)
(案ずるな。 よく言うではないか)
(?)
(三十六計逃げるに如かず、とな)
魔王の口から「たたかう」以外の言葉が出ました。
(結局逃げるんかい!!)
(あほう!! “引き際の美学”とも言うではないか!!)
(魔王が言うな!!)
ムクッ。
「「あっ」」
なんということでしょう。
奴が起きてしまったではありませんか。
(い、いいか、決して動くでないぞ!?)
(わ、わわ、わかってるよっ)
(奴はまだ寝起きで感覚が冴えていない。 隙を見て逃げるぞ)
などというアイコンタクトを取りながら僕と抱き合う魔王。
どうやら彼の言うとおり、台所の奥底で眠っていた漆黒の帝王は、ややフラフラした足取りだ。
これなら身長が100分の1になった今の僕らでもエスケイプできそうな予感!
――が、
ムクムクッ
((おひょっ!?))
シュダダダダダダッ
「「ぎゃぁぁあああああ!!!!!!」」
只今、絶賛エスケイプ中です!(再)
「魔王! 『ダークソード』でどうにかして!!」
「ムリに決まっておろう!! 奴の防御力は10万ポイント超だ!! 我が魔剣の攻撃力は10ポイントぞ!」
「ただの棒じゃんッ!!」
「通販で買った安物だからな」
「笑顔で“グッジョブ”のポーズしないでっ!!」
拳に親指を立てて「グッド!」のメタメッセージ。
真っ先にお前を犠牲者にしてやろうか、この野郎。
「ていうか、魔剣2本あるなら一本貸してよね!!!」
「ホレ」
「ありがと」
しかし肝心の中身が無い衝撃。
「なんで鞘だけ!? これで『やいやいゴ○○リ野郎め~』とか言って立ち向かえっていう気!? ねえ!?」
「すまぬ、ロシアンジョークだ」
「アメリカンでなく!?」
シュダダダダダダダダッ。
「「のぉおおおおおおお!!!!」」
ヤバい、奴との距離はおよそ3メートル。
今の僕らは丁度100分の1だから、実際の距離はなんと3センチという至近距離!
「や、奴め! 今まで手を抜いておったな!!」
「なにその『実は敵も強かったぞ』発言!?」
ついに眠りから覚醒した漆黒の帝王が僕らの方に疾走する。
表現上よろしくないので、以後奴のことを、平たくて超高速で走る特徴から、『フェラーリ』と呼ばせてもらうことになりました。
「魔王! ここは二手に分かれよう!!」
「うむ! さすればフェラーリも困惑するであろうからな!」
「どっちが追いかけられようと、恨みっこ無しだからね!」
「わかっておる!」
このまま二人一緒に走っていたのでは、いつか追いつかれるのは目に見えている。
そこで二手に分かれ、どちらかが確実に助かろうという算段だ。
ただし、どちらかが奴に追いかけられる運命。
「せーのっ!!」
の合図で二手に分かれる。
僕は左方向、魔王は右方向に分かれた――
――のだけど、




