第16部 魔王、ミニマムサイズになる!
ぴんぽーん、ぴんぴんぽーぴんぴんぽーん。
うーむ。
このメンドクサイ音は間違いなく奴だな。
「はーい」
わざとらしい「ひひーん」という鳴き声を聞き、すぐに相手が魔王と判明。
こんな朝早くから人の家を訪れるとは、彼も中々非常識なやつだ。
ガチャ。
「朝から何を騒いでおるのか」
玄関先に現れた魔王が、開口一番に発した言葉がそれだった。
相変わらず130センチほどしかない身長で僕の顔を不思議そうに見上げる。
「我が愛馬とゴミ捨てに参った帰り、おぬしの奇妙な叫び声を聞いてな」
「えっとね、姫ちゃんがまた事件を起こしちゃったんだよね……」
「事件?」
僕は魔王に事件の一部始終を話した。
朝起きたら姫ちゃんが僕のケータイを本棚の裏に投げ入れたことを、包み隠さず。
すると彼は僕の説明に何度か頷いた後、マントのポケットから小瓶を取り出し、
「ついにこれの出番が来たようだな」
「なにそれ」
小瓶の中に入っていたのは、ピンク色のカプセル。
一見、風邪薬とか鼻炎薬に見えないこともないが、小瓶の表面にドクロマークがある時点でお引き取り願いたい代物だ。
「ふははは。 聞いて驚くが良い。 これは我が闇の帝国が開発した薬、名付けて『小っちゃくなるゾウ君』だ!」
異世界の人間はネーミングセンスに欠けるらしい。
まあ、そんなつまらないことを指摘して魔王が怒っても困るので、あえてスルー。
「それ飲んだら小っちゃくなれるの?」
魔王は自信を以って頷く。
「うむ。 100分の1の大きさになることができる。 一粒で10分の効き目だが、飲み過ぎには注意だ」
「の、飲みすぎたらどうなるの!?」
「酔っぱらう」
「酒か!」
命に危険が及ぶのかと思いきや、単に酔っぱらうだけで済むらしい。
なんだよ、脅かしやがって。
「何はともあれ、おぬしにはこの薬が必要であろう」
「うん、まあ。 とにかく入って」
こうして、魔王が再上陸。
再び家の中でガッシャガッシャと鎧を引きずりながらリビングへ。
「姫ちゃん?」
リビングには彼女の姿はなかった。
まだ細くて長い物を探しているらしく、二階の方でガサゴソと音がしている。
「ところでさ、この薬ってもらっていいの?」
「うむ。 おぬしには一飯の恩がある。 今回ばかりは無料で授けよう」
やった!と喜ぶのも束の間。
「本当にこの薬で小さくなれる? 突然発作が起こったりしない?」
「効果と安全面では保証しよう。 なにせ我はこれを愛用しておるからな」
「愛用?」
「うむ。 自動販売機とやらの下に落ちている硬貨を集めたり、三丁目にある『超ゴクラク温泉』の女風呂を覗く際に使用しておる」
魔王のくせにやることがコスい。
普通の魔王なら、落ちている金を集めずとも領民から搾取し、女は奪い取ってハーレムを作っているイメージが……。
「ってことは、これがあれば僕も学校の女子更衣室を覗けるわけ?」
「うむ。 おぬしも一度使用してみるがよい」
「うおおお!! サンキュ、魔王!!」
「ふはは。 平和の為に作られた物を悪用するとは、おぬしも中々のワルよのう」
「いえいえ~、魔王さまほどでは」
「「ふははははははっ」」
――閑話休題――
悪徳代官ごっこをやっていてもスマホは取れないので、思い切って一粒飲んでみることに。
すると、
ヒュルルルル……
わずか数秒で体がみるみる縮み、ついには僕が魔王を見上げるほどになった。
ちなみに僕の身長は約170センチだから、今は1.7センチというミニマムサイズだ。
「どうだ、感度は良好か?」
上から降ってくる巨人の声がビリビリ響く。
一応返事はしたものの、何せ声も今までの100分の1。 魔王には聞こえないらしく、僕は両手で丸を作ってから、わずかな隙間に入った。
(うへえ、ホコリだらけだ)
魔王がライトで照らす先を突き進む。
フローリングの床には普段掃除しない場所とあってか、ホコリが山積。足元はゴミの海で、泥沼に入っている気分なんだよね。これが。
わずか1メートルほどの距離を2分かかって到着。
なんとかスマホの墜落現場に辿り着いたものの、到着してから気付いたことがある。
僕、非力マッスルだったんだっけ……。
よく考えていただきたい。
僕のスマホは何のアクセサリーも付いていないシンプルなものだが、筋肉量も100分の1なのをすっかり忘れていた。
そう、押しても引いてもビクともしないのである。
「我も助太刀致そうぞ」
と、見るに見かねた魔王がライトを床に置き、ミニマム化してやって来る。
「せーのっ」の掛け声で押し、やっとスマホが動き出す。
一旦通常の大きさに戻り、再度ミニマム化して押せば取り出せそうな勢いだ。
これで問題も解決か、と思いきや、
ドタドタドタっ、ダダダダ。
ん? 何の音だ?
「細くて長いモノをお持ちしましたわ―――って、こーすけ?」
いかん、姫ちゃんだ!!
事情を話すのをすっかり忘れてた!!
「こーすけ!?」
突っ張り棒を両手で抱えたまま、オロオロする姫ちゃん。
「僕はここだよ!!」
と、エールを送るも、王女さまがわずか5センチの隙間に気付くはずもなく、僕らの側からは彼女のスカートの中身が見えるだけ。
「時に康介よ」
魔王が、姫ちゃんのパンツを見ながら腕組みをして言う。
「はい、なんでしょう」
「おぬしは尻派か? あるいは胸派か? はたまたコアな腰のクビレ派か?」
「何でイキナリ会話を18禁にしようとしてるの!? 姫ちゃんに気付かれたマジで殺されるよ!?」
「我は尻だな」
「無視しないで!!」
鼻血をダラダラ垂らしながら魔王がご感想をお述べになる。
今はとにかく姫ちゃんに気付いてもらうことが最優先事項だが、あえて言っておこう。
胸派であると。
「姫ちゃん! ここだよ!! 気付いて!!」
「あら、何かしら」
ヤバい!!
姫ちゃんが本棚の横に置いた薬に気付いてしまった!!
「ラムネ……かしら?」
どうやったらカプセルがラムネに見えるんじゃい!!!
叫んでも聞こえそうにないので、アホ王女に我がテレパシーを送る。
「んもう! またわたくしを放置プレイにする気ですのね! 許せませんわ!」
これは没収ですわ、などと抜かして姫ちゃんは台所に消えてしまった。
そう、薬を持って。
ハーメルン様でも同様の小説を掲載しております。
微妙に仕様が異なるのですが、内容は一緒です。
小説家になろう様の方が最新話を先に更新する予定です。
↓ハーメルン様のページ
http://novel.syosetu.org/16024/




