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とあるわが家の王女さま!  作者: 華凜
1章:姫ちゃん、移住する!
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第1部 姫ちゃん、現る!

急に異世界から王女さまがお引っ越し♡してくる、恋愛系です。


全話で一部修正を行っております。10月1日。


 「わたくしと結婚してくださいな♪」



どうやら異世界の王女さまが、アポ無しで嫁いで来たようです。




 玄関先の金髪美女を見て、なぜ王女かわかったかというと、彼女が開口一番にそう宣言してくれたおかげだ。



コンコンとドアをノックする音が玄関で聞こえ、僕はリビングに置いてあったハンコを持って外に向かった。

あの時は『どうせ宅配便でも来たんだろう』と思っていたが、今考え直すとあまりにも浅はかだったと思う。


玄関のドアを開けた瞬間に「異世界の王女です。 この家に泊めてくださいな」と淡々と言われた時は度肝を抜かれた。


「あの……どちらさまで?」


ドア前に鎮座するピンクのトランクに視線を落とす。

咲き乱れる薔薇柄の真ん中に鷲のマークがある。国旗というか家紋に似ている。

そしてそのカバンの持ち主は、ぱっちりとした双眸とモデルのような小顔、背中に流れる長い金髪が特徴的な美女。

眼が緑色の時点で現世の方ではない。


「だから王女ですって。 再三申し上げているでしょ」


まだ一回しか言われてませんけど。


「どこの国の王女です? イギリスからお越しですか?」

「えげれす? そんな国や地域は存じ上げませんわね」

「じゃあどこ」

「エレシアヌス王国ですわ」

よし厨二病患者だ。可哀想に。


「僕は忙しいんで別の家を――」

「お待ちになって」


ガシッ。


家の中にフェードアウトしようとすると、中二病患者さんがドアに手を掛けた。


「話は終わっておりませんのよ?」

「終わってください」

「最後まで聞いていただけるまでこのままですわ」


ドアに手を掛ける美女が腕に力を入れて言う。

このまま無理矢理突き放すことも可能だが、華奢な彼女をそんな乱雑に扱うのは気が引ける。


 僕が「ちょっとだけだよ」と顔を渋らせると、王女さまは満面の笑顔になった。

なんだ、やっぱ可愛いじゃん。


「実はわたくし、ある者に追われておりますの」

「追われてる?」

「ええ。 そうですの」


美貌に悲しげな表情を浮かべる。

今にも泣き出しそうな顔を見ると、男の性ゆえか、どうしても放っておけない気分になってしまう。


「誰にですか? 警察とかじゃないでしょうね」

「いいえ、勇者です」

うーむ、これほど感情移入しながら現実離れも甚だしい台詞を言えるなんて。

ある程度予想していたが、いざ口にされると言い返せなくなった僕が黙っていると、美女はさらに続きを話した。


「わたくしは王国の第一王女でした。 しかしある日、父上が勇者に『魔王を倒した暁にはわしの娘をやる』と言ってしまったのです」

「いいじゃないッスか。 魔王倒して姫と幸せに暮らすのはRPGの醍醐味ですよ」

「ばかぁ!!」

眼に涙を浮かべて叫ぶ。


「あんな髭オヤヂで、赤い帽子を被ったチビで、ジャンプするときに『ハッハァー』とか言う男の子供など産みたくありませんっ!」

マ○オだ。

「そんなこと僕に言われても……」

「勇者に捕まる前に逃げ出してきたのです。 だからここに匿ってくださいな」

「ムリです」

「そこをなんとか!」

「うーん……」


美女が悩む僕の手を握る。

丁度両親が海外転勤で家にいないのは事実。とはいってもやはり名も知らぬ女の人を連れ込むわけにはいかない。


気難しい顔をしていると、王女さまは思い切った顔をして「わかりましたわ」と言った。


「結婚しましょう!!」

「はい!?」

「そして二人の子を作りましょう! 既成事実さえ作ってしまえば、勇者さまも結婚を諦めてくれるに違いありませんわ!」


待ってくれ。どうやったら家に匿うことから結婚に話が飛躍的発展できるんだ。

まずは友達の関係から―――って待て待て!それじゃあ付き合うことになるじゃないか!


「いや、さすがに見ず知らずの他人とそんな……」

「勇者から逃げられるなら手段を選びませんわ! さあ、わたくしを家に泊めるか泊めないか、早くお選びなさい!!」


一歩と言わず二歩前に踏み込んで訊く。

何で僕が怒られなければいけないんだろう。


「『どうぞ泊まって行ってください』と言うなら1番、『しゃーねえなあ、可愛いから泊めてやるよ』と言うなら2番、『泊めてやるに決まってるじゃないか』と言うなら3番をお選びなさい」

『いいえ』の選択肢が一つも見つからない。


「すいませんけど、やっぱ他人を勝手に泊まらせるのはちょっと無理です」

「そんなっ! 料理でも洗濯でも何でもしますから!」

「んー、でもなあ……」

「……うっ……ぐすっ……」


あ、泣き出した。


さっきから涙目になっていたのは知っていたけど、今は唇を真一文字に結んでべそをかいている。


「どうしても……ダメですか?」


目を赤くして上目遣いに言う。

そんな目で僕を見ないでくれ。


うーん、困ったなあ。

正直まんざらでも無かった僕の弱みに付け入るこの女。

まあ悪い人じゃ無さそうだし、本当に困っているならちょっとぐらいいいかな。

それに料理とか洗濯してくれるなら楽でいいし。


「わかったよ。 行くあてが見つかるまでいていいよ」

「やった! 男はこうすると大概落ちるのよね~」

人生イージーモード・ミャハ!的な顔をして我が物顔で家に入る女。さては嘘泣きか。


「ところで名前聞いてなかったけど、なんていうの?」

「わたくし?」

他に誰がいる。

「わたくしはリース・サンレア・エレシアヌス。 王国ではよく『姫ちゃん』と呼ばれておりましたのよ」

「姫ちゃん?」


信じられない呼称を反芻する。


リースはカバンを玄関に置くと、さっきまでの優しそうだった態度を豹変させた。


「ま、特別に『姫ちゃん』と呼ぶことを許して差しあげますわ。 嬉しく思いなさい、わたくしの下僕さん」



さあ、下僕生活の始まりだ!



ほわほわした小説ですが、生温かい目で見守って頂ければグッドです。

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