君と僕
みなさんにも不安があると思います。僕もたくさんあります。
そんな不安がすこしでもなくなり、穏やかな気持ちになれるような瞬間を求めて
書いた小説です。
自信?そんなものはないんだ。
希望もみつからないまま生きていた。息を吸って吐く。それだけを僕は毎日繰り返すだけの日々。
人はいつか死ぬ。それまでになにをするかを人は考える。いいことも悪いことも。
世間に批判をあびて死ぬものも、世間から悲しみられながら死ぬものも、死んでしまったら同じだ。
こんなことを考えている僕に生きる価値はあるんだろうか?価値を決めるのは誰かもわからないまま
毎日考える。答えは見つからないし、見つけた先にまた考えることがあるんだろうから・・・
僕はいま立っている。屋上で、空を観ながら。
考えることをやめるためにはどうしたらいいか?簡単だ。考えられないようにすればいい。
だから屋上に僕はたっている。自らが通う高校の屋上だ。
「ふぅ・・・・・行きますか」
深呼吸して飛んだ。
あっけないもんだ。穏やかに笑いながら飛べるんだ。
落ちていく時間。ほんの数秒間に僕は考えていた。
生きてきてよかったのかな?
答えは見つからないまま僕の意識はなくなった。
「ウッ・・・うう・・・」
ハッ・・・・目が覚めた。ここは?どこ?
目が見える。体が動く。そして息を吸えるし吐いている。僕は生きている。
「なんで・・・・」
独り言をつぶやいたつもりでも、その問いに答えは返ってきた。
「わたしがあなたを助けたから」
女の子だった。穏やかな印象をもつ髪の長い女の子だ。
「君が?どうやって?」
僕は飛び降りた。あの高さから下で受け止めて無事で済むはずがないんだ。
でも僕の体には傷ひとつさえなく、ポッカリと開いた心だけ残っていた。
「答えがほしいとお前の心が言っていた。だから助けた。わたしの力で。」
信じられない話。でも体験している自分に戸惑い、呆然とするだけだ。
「お前を助けた。今度はお前が私を助けろ。その中でお前も答えを見つければいい」
マイペースに話を進めていく彼女を見つめるだけの僕に彼女は言葉を止めようとはしなかった。
「たしかにお前は死んだ。屋上から飛び降りて、そして私が生き返させた。」
「わたしには聞こえたよ。お前の問いが。生きていてよかったのかな?って。私は死ぬまでひとりで悩み
死んでいく者たちを一度生き返らせ、考える時間を与える力をもっている。」
「なぜこの力があるか、わたしにも分からない。私だって普通の高校生に過ぎないから。」
「答えがみつからなかったら僕はどうすればいいの?」
なぜこうなったかも、彼女は誰なのかも、そんなことよりもとっさにでた僕の言葉はこれだった。
「そのときは私はまた問う。死ぬか死なないか。死ぬと決めたなら安らかに眠らせることも私にはできる
だからまずは探せばいい。死ぬ間際に考えた 生きてきてよかったのかな? その答えを探そう」
ポッカリ開いた心のなかに彼女の言葉はスッとはいってくる気がした。
いままでひとりで考えていた時間よりも、彼女のたった一言の言葉の重さが自分には響く。
「君は誰?君も僕の答えを探してくれるの?」
僕の問いに彼女は始めてみせる笑顔を見せながら、
「私は光井祈。君を助け、君の探し物にも付き合う。」
「君の名前は」
「僕は大津守。」
「君は僕に助けてほしいことがあるって言ったよね?それはに?」
こんなに人と話せたんだ。そう感じながら、そうさせている祈という彼女に言葉を投げかける。
「まずは君の答えを探してからでいいんだ。だからいこう。」
「どこへ?」
彼女はそういう僕の腕をひっぱりたちあがらせた。繋いだ手と手をギュッと握り締めて
「君が行きたい場所から。すこしずつ行こう」
これが彼女と僕の不思議な出会いではじまりの時だった。
亡くなった人達を助けていく旅に2人はでることになります。
この先も読んでいただけたら感謝です