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百物語事件 by炎舞  作者: 愁水
2/2

episode Ⅱ

相変わらずふざけています。

「早く早くー、ロウソクに火、つけちゃったんだからー」

「ちょっとー気が早いよソレは。百話話す前に消えるって」

(あうう……部屋に帰りたい……)

 急かしながら先頭を駆ける美世の後ろを、嵐がロウソクの箱を抱えながらマイペースに続く。更にその後ろからは、涙を流しながら既に放心状態の風間がフラフラと蛇行しながら歩いていた。

 ガスガスとガルーダが風間の頭に嘴でちょっかいを出しているのも、もはや彼は感じていない。

 大広間に到着した一同。

「…ん?なに、この甘い香り…?」

「じゃーん!! 見て見てー!!」

 嗅ぎ慣れない匂いに気づき鼻を鳴らす嵐の横で、美世が勢いよく大広間の襖を開けた。

「すっごい雰囲気出てるでしょー!?」

 自慢げに笑い、中を指差す美世。

 そこには―――。

 常世の旅路の道標を思わせる百本のロウソクの揺らめきと、壁にかけられた凄まじい形相の鬼女の掛け軸。そしてその中に圧倒的存在感で佇む、全身黒鎧の武者―――。

 ……今にも斬りかかってきそうなほど、リアルで立派だ。

「わー、オバケ屋敷みた……」


「いやあああーーーーーッ!!!」


「うわァ!!」

「グエッ」

 大広間を突き抜けるようなその悲鳴に、嵐の声はかき消され、ノミの心臓となった風間は過度なビビリようで、ガルーダの首にしがみついた。

「やけに慣れ親しんだ香りだと思ったら…!!! ロウソクにまぎれてあたしのアロマテラピー用のプ〇さんが…ミ〇キーがぁぁ!!!」

 嘆き叫びながら緑子が大広間に駆けこんで来る。彼女の目線を辿ると、確かにそこには普通のロウソクとは似ても似つかない、というかこの場には異色といっていいほどの可愛らしい存在感と香りが漂っていた。

「美世ォーーーッ!!! あんたよくもあたしのコレクションをーーー!!!」

 半泣きの緑子が、レイアウト担当の美世の胸倉をつかむ。

「えー、だって部屋に野ざらしにしてあったし~」

「カワイイから飾っておいたんだよ!!!」

(……意外と可愛いもの好きなのだな……)

 プ〇さんのアロマテラピー(シトラスの香り)を手に取り、姉御肌の緑子の意外な一面に、静が微笑する。

「いくら百本必要とはいえ、その香りとファンシーな形じゃあ冷汗かくどころかリラックスしちゃうよ。やっぱ私が持ってきたやつと交換するよ」

 箱からロウソクを何本か取り出し、席を立とうとする嵐に、

「え。いや…こういうのが少し混ざってる方が面白いと思いますよ~。…ね? 風間さん」

「お、おう!!」

 聖と風間が同盟を組んで、アロマテラピー達に囲まれるように座っていた。

 

 彼らは名付けた。〝ファンシーゾーン〟と……。


「……。そういえば火蓮がいないな。彼女は?」

「ああ、なんか準備があるって言ってたけど…そのうち来ると思うから始めて―――」

 嵐が静に答えた時。


 ヒュウウ…。


 嵐の背後の障子に、人影が映った。



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