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『CROWN plus』  作者: 是音
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TURN8 城と騎士

謎の異世界の真ん中で大声が響いた。


「じゃ、じゃあアウスって人とメーヴェって人は実在した人物なんですか!」

「当たり前だ。」


レイモンド達に異世界大戦の全容を聞いたファムが最初に反応したのは兄の会社名の由来ともなった二人の事だった。ファムはザックのオフィスに飾ってある《漆黒の衣を纏った仮面の男性》と《深紅の衣を纏った金髪の女性》の肖像画を見たことがあった。だが格好が格好なだけに空想上の人物だと思っていた。

(あれがアウスさんとメーヴェさん・・・兄さんの戦友。)


「これでお前には異世界大戦の全容を話したわけだが、他に質問は?」


話し疲れたレイモンドがファムに話し掛けたが、ファムは頭を整理するので精一杯だった。アウスとメーヴェの事もだが、突然能力者が数多くいた事や人工で魔鬼を造ったこと、さらにそれと戦闘して撃破したこと、キメラという遺伝子操作人間が造られていたこと、そして宇宙消滅という大規模な野望。たくさんのスケールの大きな事実を知らされてファムは混乱していた。


「信じられない。」

「だろうな。だが、これが新都市『CROWN』ができるまでの真実だ。」


その時ジンが何かに反応して立ち上がり、硬質化した腕を地面に突き刺した。


「どうしたんですかジンさん?」

「シッ!」

レイモンドがファムを黙らせる。ジンは目を閉じて集中している。硬質化した腕で遠くから地面を伝わる音を聞いているのだ。


「この連続した爆音は・・・ユノとライアか!」


ジンは目を開けて爆音の聞こえた方向へ走りだした。サイとレイモンドも後に続いて走りだす。


「え?何ですか突然?」

突然の三人の行動に戸惑ったファムも後に続いた。




謎の異世界〈トガス地形〉では凄まじい爆音が連続していた。

氷地帯はテラの地形を境に広がっており、まるで大きな湖のようだった。その中心で氷の下から次々と飛び出してくる無数の毛むくじゃらの猿型魔鬼に二人の女性が囲まれている。ユノとライアだ。二人共大きな戈を目にもとまらぬ速さで振り回して襲い来る魔鬼を爆殺していた。だが倒しても倒しても氷の下から飛び出してくる。

「次から次へと!氷が穴だらけじゃない!」

「ユノ!ここの地形は私達にとって不利よ!」

そうは言っても多数の魔鬼に囲まれた二人は移動できずにいた。


「どうやらもう大丈夫みたいよ姉さん。」

「どういうこと?」


ユノは魔鬼を爆殺しながら遠くを見た。


「《エアロ・アルマダ{空艇艦隊}》!」


レイモンドが精製した機械の小型飛空艇五機が空中から爆雷を落とした。周囲が爆発し、魔鬼が焼き焦げている。


「レイモンド!」

「ユノ、今のうちに退くわよ!」


ユノとライアは走ってテラの地面へ向かった。後ろからは小型飛空艇が爆撃してはいるものの、多数の猿型魔鬼が追い掛けてくる。なんとか氷の地形を出たユノとライアは氷に戈を突き刺した。

「水の中へ帰りなさい!」

「《グラウンド・エンド》!」


氷の地面は大爆発を起こし、魔鬼は吹き飛んだ。その規模は大きく、テラの地面にも地割れができていた。ユノとライアは氷が割れた水面を見つめていた。後ろからレイモンド達が現れた。

「どうだ?エアロ・アルマダは役に立ったか?」

レイモンドは小型飛空艇を自分の周りに飛び回らせながら言った。


「ええ、助かったわレイモンド。久しぶりね。」

「サイもジンも久しぶり!・・・あれ?ファム!?何でここにいるの!?」

ユノは驚いた表情でファムを見た。ファムも軽く会釈する。ジンは不思議そうな顔だ。

「なんだファム、ユノを知っているのか。」

「はい、兄の側近であるユノさんとライアさんはよく知っています。しかし・・・」

ファムは真剣な眼でユノとライアを見据えた。

「あなた達お二人は兄の護衛としてCROWNへ向かったはずです!何故兄がここにいないのですか!」


ファムの言葉にユノとライアは暗い表情になった。レイモンドは話の内容を理解した。

「なるほど、ザックはお前達姉妹を引き連れてここへ来たのか。ならファムの言う通りここにザックがいないのはおかしいよな。・・・何があった?」


黙っているユノの代わりにライアが口を開いた。


「ザックが・・・負けたの。」


「!?」

一同は驚愕した。


「何だと!!」

「馬鹿な!」

「アイツが負けただと!?相手は誰だ!」

レイモンドとサイ、ジンはザックの圧倒的な強さを知っているが故にその衝撃は大きかった。そしてファムは呆然と立っている。

(兄さんが・・・)


「兄さんは死んだの!?」

「大丈夫、彼は生きてるわ。」


それを聞いたファムはひとまず安心した。

「で、兄は今何処に?」

「わからないわ。突然消えたの。」


「話が長くなりそうだな。」

レイモンドは近くの水晶の岩場に場所を移した。全員が円になって話をまとめる。最初はファムからだ。

「兄が皆さんが消息を絶ったと聞いてユノさんとライアさんを連れてCROWNへ行ったのが二ヵ月前です。そして私はシドさん達の協力を得てCROWNへワープしました。そこで初めて魔鬼と交戦し、」

「オレと出会った。」


話をジンが引き継ぐ。

「オレ達はお前等を追うためにダラムのワープゲートへ向かったんだがよ、すっげえ魔鬼の数だったぜ。ランス達に助けてもらわなかったらずっと足止めくらったままだった。そんでファムと第六異世界だっけか?ここにやって来たんだが、いきなり見たこともないエネルギー体に襲われた。あとはレイモンドとサイに任せるぜ。」


「おう。オレとサイもここに来てからアンカーとスティングを探すためにあてもなく彷徨っていたんだが、いきなり未知のワープゲートから赤いエネルギー体が出てきて襲い掛かってきやがった。そいつは炎のエネルギーを使っていたし、ジン達を襲った青いエネルギー体は氷のエネルギーを使っていた。」


ファムがその話に反応した。

「それなら私達も戦闘したわ。黒いエネルギー体で酸を操っていたわ。ザックがいる私達には相手にもならなかったけど。」

「なら、そいつらの弱点が胸のコアだということも知っているな?」


レイモンドの言葉に全員が頷いた。


「じゃあ、ここからが本題ね。」

ライアが自分達に起こった事を話しはじめた。


「私達三人もCROWNのダラム基地でワープゲートに飲み込まれてここへ来たの。でもCROWNにはまだ魔鬼なんていなかったわ。

で、私達もここへ来てヴァルガ地形でエネルギー体と戦闘した。でも、それ以上に異質なものを見たの。」


「異質なものとは?」


「《城》よ。」






話は少しさかのぼる。


ザック、ユノ、ライアは謎の異世界で謎の巨城を前に立っていた。城の周囲は深く底の見えない谷に囲まれていてヴァルガ地形と一本の橋でつながっている。城は円柱の形をしており、深い谷底から高く高く伸びていた。それは特殊な鉱物で明らかに人為的に作られたものだった。


「な、なんだよこりゃあ・・・。」


ザックは城を見上げて声を洩らした。

「どうするの?ザック」

「無論調べてみるさ。」


仮面をつけたザックは漆黒の衣を翻して城へ続く長い長い橋を渡ろうとしたが、突然高速で後ろへ飛び退いた。

そして次の瞬間、何かが城の上から飛来し、ザックのいた位置に激突した。


「・・・何者だ。」


土煙が晴れるとその先には赤、青、白、黒、そして金色の甲冑に身を包んだ五体の騎士が立っていた。ユノとライアは前に出ようとするがザックに止められた。ザックの仮面の下では真剣な眼が鋭く光っている。


「今一度問う。お前達は何者だ。」


ザックの質問には答えず、五体の騎士は一斉にザックに襲いかかる。


「くっ!ユノ、ライア、こいつらを撃破するぞ!」

ザックはナイフを影刀に変えた。さらにもう一方の手にも刀を作りだした。


「オッケー、あたしの《JOKER》見せてやるわ!」

「あまり調子に乗っちゃダメよユノ。」

二人は大戈を出して構え、突撃した。




だが




「ザックしっかりして!大丈夫!?」

「ごめん、私のせいで・・・」

「ぐっ・・・こいつら・・・一体何をした?」


ザックが呼吸を荒くして膝をついている。


最初ザックは剣で斬り掛かってくる騎士三体を相手に押しつつあり、ユノとライアもそれぞれ一体ずつ相手に優位に戦況を展開していた。だがそれは一瞬の出来事だった。突然騎士達が消えたのだ。そして次の瞬間ユノの背後に騎士の剣が振り下ろされた。すぐに反応したザックはユノを抱えてそれ避けたが、ザックは背後から別の騎士の蹴りをくらったのだった。

そして追い打ちをかけられるかと思われたが、騎士達は何故か突然異変を感知した様子を見せて撤退していった。

「ザック!どうするの!?」

「・・・オレは奴らを密かに追う。お前達はみんなを探しに行け!」

「でもザック一人じゃ・・・」

「隠密行動はオレの得意分野だ。それに爆弾女二人も連れてたら一発で見つかっちまうしな。」

「・・・わかったわ。」


その時ザックを謎のワープゲートが包み込んだ。


「ザック!?」

「逃げて!」


「大丈夫だ、きっと奴らの・・・」

ザックは消えた。




「これで私達に起こった全てを話したことになるわね。」

ライアが話し終わると一同はそれぞれ考えを巡らせていた。ただサイだけは邪混沌を整備している。そのサイが手を止めた。


「別に深く考えなくていいじゃん?謎の騎士は敵!ザックは城に潜入中!奴らが何者なのかはブッ倒してから確かめりゃいい!どうせ奴らが何もかも知ってるんだろうからさ!さぁ問題です、オレたちがサッサとやらなければいけないことは〜?」


ひょうきんなサイの言葉で皆に笑顔が戻った。


「フッ、スティングとアンカーを見つけだして」

「城へ兄さんを助けに行く!」


ジンとファムは立ち上がった。それに続いて他の面々も立ち上がる。ユノはふと何かに気付いた。


「騎士達が異変を感知して撤退したのってまさか・・・」


それを聞いたレイモンドとジンも気付いた。

「・・・あの二人が城なんてモンを目にして放っておくワケがねぇな。」


ファム以外の全員が苦笑いした。

「あいつらも城にいる。」


一同は城へ向かうことにした。

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