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『CROWN plus』  作者: 是音
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TURN3 鋼の男

ファムがワープしてきた場所は都市部だった。空には暗雲が広がっている。


「ここがCROWN?兄さんは明るくて良い世界だと言っていたけど。これは・・・」


破壊されたビル、亀裂の走った地面、ファムの周りにはまるで大災害の跡のような光景が広がっていた。

ファムはシドから貰った情報を頼りに《ダラム基地》を目指した。距離はかなりあるのだという。


巨大なビルの前に差し掛かった時、突然ファムの目の前の地面から何かが飛び出してきた。赤い目を持った大きな黒い悪魔だ。


「な、何この化け物は!?」


さらに同じ化け物が次々と地面から這い出てくる。短時間でファムは化け物に囲まれてしまった。

化け物達は一斉にファムへ襲い掛かる。

「くっ!」

ファムは影槍を出して三体の頭部を切断した。だがその隙を突いて背中に化け物の爪を受けてしまった。

「あぐっ・・・」

(数が多い!折角兄さんを助けに来たというのにもうやられてしまうの!?)


その時だった。


「《剛扇・弐式{ごうせん・にしき}!!》」


周囲の化け物が一気に吹き飛んだ。全て身体がへし曲がってしまっている。


「こんな所に一人で何してる!!」

化け物を吹き飛ばした男が叫んだ。

「え・・・私は・・・」

「まぁいい、話は後だ!」


その瞬間化け物がファムの不意を突いて頭に噛み付こうとした。

「うわぁぁぁ!」

ファムは目を閉じた。

だが化け物は動かない。ファムが目を開けると化け物の口には男の腕が挟まっていた。化け物の牙が砕ける。

(身体を硬くする特殊能力?)


「ボサッとするな!隠れてろ!」


「私も戦います!」

ファムは影槍で化け物三体を突き刺した。

「君も能力者なのか!?しかも影って、アイツと同じかよ!!」




ファムと男は化け物を全滅させた。

「大丈夫か?」

「ハァ、ハァ、今の化け物は?」

「アレは《魔鬼》という生命体だ。奴らは滅びたはずなんだが・・・」

「魔鬼・・・?」


「しかし何故一般人がここに?」

「私は兄とその仲間を助けにきたんです。」

「兄?」

「はい、ザックという男です。」


男は驚いた。

「ザックがここへ来ているのか!?」


ファムも驚きの顔を見せる。

「兄を知っているんですか!?」

「知ってるも何も、オレはアイツと死線を乗り越えてきた仲さ。しかしアイツに妹がいたとはなぁ、だから同じ能力なのか。君名前は?」

「私ファムっていいます。兄はあなた達を探すために二ヵ月前CROWNへ行ったきり行方不明になったんです。」

「オレはジン。二ヵ月前か、ちょうどオレがアイツに連絡したのと同時期だな。」

ジンは瓦礫の上に腰を下ろした。ファムも腰を下ろす。


「ジンさん、一体二ヵ月前何があったんですか!?」

「ふむ。オレ達CROWN特別担当員はダラム基地を拠点として活動していたんだ。ところがある日突然基地の上にワープゲートが現れ、大量の魔鬼が出てきた。オレはその時風邪をこじらせていて基地内にいたから助かったんだが、様子を見に行った他の仲間は別のワープゲートでどこかへ飛ばされてしまったんだ。そしてオレはCROWNの人々を兵士と共に《Z・E隊基地》と《要塞戦艦ARIS》にかくまった後ザックに助けを求めた。そして今まで一人で情報を探し、逃げ遅れた市民がいないか探していたんだ。」


「では兄とは会っていないんですね。」

「そうだな。ただ、みんなを連れていったゲートが一定のタイミングで開くことがわかったから、ザック達もそれで・・・」


ファムは勢い良く立ち上がった。

「なら私達もそれを使って追いましょう!」


その姿を見たジンは昔のザックを思い出した。

「アッハハハハ!その行動力も兄譲りか。市民捜索はこれで打ち切って追うつもりだったからな、運が良かったよ君は。」


そう言うとジンも立ち上がった。

「じゃあダラム基地へ向かうぞ、少し歩くことになる。それに敵数も多くなるぞ。」

「はい!」


「・・・無事でいろよアンカー。」

ジンはボソリと呟いた。






M・A社CROWN監視センター


シドはパソコンのキーボードを叩いていた。オズマとアザブルは後ろに立ってそれを見守る。

突然シドの手が止まった。額には冷や汗が浮かんでいる。

「どうしたシド、何かわかったのか?」


シドは頭を抱えた。

「な、なんで・・・この反応が・・・!?」

「おい、わかるように言えよチビ!!」


シドはゆっくりと二人の方へ振り返り、口を開いた。


「・・・新資源だよ。」


「!?」

オズマとアザブルはその言葉に耳を疑った。

「馬鹿言ってんじゃねぇ!新資源はミシェルと共に消滅したはずだ!それが何でCROWNにあんだよ!!」

「わかんないよ!でもこの反応は確かに新資源なんだ。」

「ではミシェルが生きているとでも?」

「それならまだ良い方だよ、それよりもっと邪悪なものが生きていたとしたら・・・。」


三人の脳裏には二つ浮かぶものがあった。


「《END OF WORLD》か、はたまた《魔神メサイア》か。」

「もしかしたらの話だけど、もしそうだとしたらどっちにしたって最悪だよ・・・。」


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