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『CROWN plus』  作者: 是音
21/27

TURN21 覚悟〜希望求めて〜

スティングとファムが破壊神と戦闘をしている頃、ザック達はやはり何もなくただ暗いだけの部屋で、ついにオラクル本体を前にしていた。


「こいつがオラクル?」

「ただの石像だぜ?」


見上げる先には巨大な手足を壁に埋めてはりついた石像。だがその赤い目は確かにザック達を見据えていた。

ザックは石像を見上げて叫んだ。


「お前が創世神か!」


その言葉に反応して石像の目が赤く光り、それを見たジンとアンカーは身体を硬質化させ、先頭に立つザックを守るように前に出た。そして広い空間内に声が響き渡る。


『秩序を乱す者・・・』


石像の頭部にひびが入った。


『摂理を犯す者・・・』


さらにひびが広がり、石像は崩れ落ち、中から全身銀色の人型をした物体が現れた。シンプルというか、顔も滑らかで目も鼻も口も無い。水銀でできたような不気味な身体である。


『この宇宙には・・・』


ユノとライアは大戈を握り、レイモンドも部屋中に機械の触手を精製した。サイも三体の大塊儡と共に身構え、ザックも全身に影の鎧を纏い、両手に影刀を出した。


『不要』


オラクルは能力者に襲い掛かった。

ザックは散開しながら全員に檄を入れる。


「さぁみんな、こいつがラスボスだ!破壊神の方はスティングとファムが二人で頑張ってくれている!・・・みんなでまたM・A社に戻ろう!!前異世界大戦でも言ったが、死ぬなよ!!!」


全員はザックを見て大きく頷いた。

が、頷いたサイの背後で陽斬が吹き飛ばされた。


遠くで吹き飛ばされた陽斬に気付いたレイモンドだが、精製した触手も破壊されていることに驚愕した。

オラクルの速さはまさに異常で、広い空間を自由自在に動き回っていた。


「バース・ボム!」

「エンド・ボム!」


ユノとライアは戈の先に爆破エネルギーを凝縮させ、高威力の爆破攻撃を繰り出す。


『・・・!』


攻撃が直撃したオラクルは爆散し、液体のように飛び散った。


能力者達はオラクルの速さについていっていたのだ。その戦闘力は絶大なものになっていた。


「オラクルがこんなもんで終わるわけがねぇ!」


レイモンドの言う通り、飛び散った銀色の水滴は再び融合し、今度は二体のオラクルになった。


「・・・マジかよ」



ザック、レイモンド、サイは一体を粉砕しないようにしながら対策を考える。


―――


もう一体を相手しているユノ、ファム、ジン、アンカーも同じく回避と防御中心になっていた。オラクルは自ら腕を振って銀色の水滴を飛ばす。それらは空中で三日月型の刄となり、ユノ達へ襲い掛かった。


「下がれユノ、ライア!」


ジンがアンカーと共に二人の前に出て刄を弾いた。


「オレ達に打撃・銃撃・斬撃は通用しないぜ?」



―――


ザックは影縛りで敵の動きを封じ込めた。が、やはりオラクルは強大で、すぐに破られた。

このオラクルも腕を振って銀色の刄で攻撃している。陽斬はエネルギーフィールドを張って三人を守っていた。エネルギーフィールドには刄が溶けて張りつき、銀色の液体が再びオラクルの身体へ飛んでいった。

フィールドの中でザックはあることに気が付いた。


「・・・何でエネルギー攻撃を撃ってこない?」


―――


ユノ達の相手するオラクルはさらに水滴を飛ばし続け、両腕が無くなるまで攻撃した。全てジンとアンカーが弾き飛ばしたのだが、二人は後ろで呻き声を聞いて振り返った。

ユノとライアが宙に浮く銀色の腕に首を捕まれていた。

オラクルはジンとアンカーを攻撃すると見せ掛けて自分の腕を背後へ送り込んだのだ。


「二人を放せコノヤロー!」


「《剛刀》!」


アンカーは超硬度の手刀で腕を切り払い、二人を助けた。喉を押さえながらユノが苦しそうな顔をしている。


「ケホッ、助かったわアンカー。それにしても・・・」


ユノは目を細めてオラクルを見据えた。


「何故エネルギー攻撃を撃ってこないのかしら?」


「あら?ユノも気付いた?」


「物理攻撃じゃあオレらを倒せない事くらい神様ならわかるはずなんだがなぁ・・・」


もはや全員が不思議に感じていた。


―――


その時、オラクル二体が何かを感じ取り、一点に集まって融合した。

ザック達もそれを追う。


元の一体に戻ったオラクルは宙に飛び上がると、おもむろにつぶやいた。


『戦闘体・・・消滅・・・総合能力半減。蘇生体維持不能。身体液化不能・・・。』


ザックはその言葉を聞いてはっとした。


「ファムとスティング、やったのか!」


「イエーイ!」

サイとジンがハイタッチして喜ぶ。


『・・・戦闘体へ供給し続けていたエネルギーをこちらへ』


オラクルの身体が丸みを帯びた形から鎧のような形へと変化していく。黒色がマーブル状に現れ、胸からは巨大な紫の目が出てきた。青色の電気を全身に帯びている。顔部分には二つの赤い目。

そして、今までは機械的だったオラクルの声色が、女性の声に変わった。


『ふむ。我が出る程に追い詰められたか』


その声に全員が驚いた。


「なっ、お前は!?」


『我はオラクル。貴様等の仲間が我が分身である戦闘体を消してしまったが為に、予備人格が我を呼び出した。』


「お前が本物ってことか!」


アンカーが叫び、その後ろでザックはレイモンドと話し合っていた。


「さっきの予備人格とやらが言っていたこと聞いたか?」

「ああ。液化不能とか言ってたな。つまり・・・」


「これで奴を倒せる」


オラクルは空中で能力者達を見下ろしている。


『生物が我々と渡り合う程の力を有する等、前代未聞だ。《外なる神々》が地球を危険視するのも頷ける。こんな忌まわしい者共が宇宙を・・・!』


怒りを表わにするオラクルの言葉にザック達は反応した。


「何を言っているんだ?《外なる神々》とは何だ?お前は何者・・・うわ!」


レイモンドはかろうじて放たれたレーザーを避けた。


『いちいちうるさい屑だ。・・・ふん、まぁいい。我らは時間には縛られない。よって無駄な時間を過ごすことも厭わない。そんなに知りたいなら教えてやろう。貴様等が滅する前に一瞬だけその醜悪な脳のなかに真実を留めるがいい』


そう言うとオラクルは語りだした。


『地球を含み、この宇宙に存在する星にはそれぞれ神が宿っているのだ。我は地球に宿りし神。そしてその神々を総じて《内なる神》と呼ぶ』


「内なる神・・・」


『そう。それらは邪なる神ではあるが、その星の監視者でもある。だが我々は最初から星に宿っているわけではない。星が生まれる度、この宇宙の外から邪神は舞い降りるのだ。そして外宇宙とを繋ぐのが《窮極の門》と呼ばれるもの。それは空間、時間、時空、全てに縛られることはない。貴様等には到底理解のできない話なのだろうがな。その外宇宙で蠢く邪神を総じて《外なる神》と呼ぶのだ。我などあの方々に比べれば脆弱極まりない存在にすぎん』




ザックは自分達が敵に回している相手の規模に気が遠くなった。


「じ、じゃあお前を眠らせてもまた別の邪神が敵として現れるということか!?」


『・・・全ては彼等のきまぐれ。極度の怒りに触れれば動きだすだろうし、何も関与しないかもしれない。そもそも宇宙自体が主神のきまぐれによって創られたものだ。ただ、彼等の中の誰かが貴様等を危険視し、窮極の門から我に使者を送ったのは事実だ。我々内なる神はそれに従うまで』


そう言うとオラクルは高く飛び上がった。同時に地下世界に地震が響き渡る。さらに部屋の地面に亀裂が入った。部屋全体が崩壊しようとしている。


「な、なんだ!?」


レイモンドがたじろぎ、他のメンバーも地割れを跳んで避けていた。


『話はここまでだ。この惑星スパム自体が我である。故にこの地下世界を崩すも我の自由。貴様等はここで死ぬが良い。我は地上に残った機械共を葬ってくれよう。そして地球を・・・滅す。』


オラクルは光に包まれ、消えてしまった。

残されたザック達は崩壊していく部屋の中を地割れに飲み込まれないように粘り続けた。するとジンが何かを感じ取った。


「みんな何か来るぞ!天井からだ!」


崩れだした天井を突き破って青色の光の柱が三本降り注いだ。開いた穴から黒色の機体と、続いて赤色の機体が二体降りてきた。


ランス、ハル、アルマである。


《みんな無事かい!?助けにきたよ!》


《いきなり魔鬼達やパキュリアが消えちゃったんだよねっ》


《そうそう!》


「ランス!ハル、アルマ!感謝する!」


レイモンドを筆頭に全員は三機の元へ移動する。

崩れ落ちてくる岩盤はランスの機体の内部機関《滅神・災羅》の圧力コントロールによって防がれていた。


「お前はいっつもナイスタイミングで現れるなぁ」


宙に浮く黒い機体を見上げながらジンがため息を吐いた。

しかしザックは落ち着きがない。


「ランス、ファムとスティングがまだ別の部屋にいるんだ!」


《安心しろ、熱源が別にあることは察知していた。彼等の元へはシド君とアザブル君が向かった》


「そうか。・・・オズマはどうした!無事なのか!?」


それを聞いたハルとアルマは焦り口調になった。


《そうだ隊長!早く戻らないと!》

《変なやつにオズマさんがやられちゃうよ!》


三機は急いでメンバーを抱えあげると、レーザーで開けた穴を上昇した。ランスの機体に抱えられたザックは問い掛ける。


「で、オズマはどうなったんだ?」


《うむ。地震を感知して君達を助けに行こうとした時、突然オラクルと名乗る鎧が現れたんだ。しかし事態は一刻を争う為、オラクルの相手をオズマ君一人が駆って出たんだよ》


「じゃあオズマは今・・・」


《ああ。孤軍奮闘している》



――――


ランス達が地下へ向かった直後の地上


《クハハハハ!神殺しって一回やってみたかったんだよなぁ!》


オズマは突然現れた創世神を見て興奮していた。彼が興奮する時というのは純粋に戦闘を楽しめそうな瞬間だけであり、異常ではあるが、彼が最も能力を発揮する瞬間でもある。




宙に浮いたオラクルは自分の目の前にたったの一機で立ちはだかるオズマを興味深げに見下ろしていた。


『人間よ。それが貴様等が持つ最先端の科学か?』


話し掛けられたオズマは大して驚く様子もなく答える。


《違ぇよ。この神歌はウチの天才坊主だけが作り出せる代物だ。あんまり舐めてると痛い目見るぜ?》


オズマの機体は光り輝き、雷を身に纏った。内部機関《光神・覇轟》である。


『ほう、貴様も雷撃を使うのか。だが、本物の神には到底及ばぬことを思い知れ!』


オラクルはオズマへ巨大な雷を落とした。その威力は絶大で、地面に巨大な穴を開けた。

だがその中で何事もなくスラスターで浮かぶ機体があった。覇轟の能力はエネルギーを吸収することもできるのである。これはシドが莫大なエネルギーを持った敵への対抗策として考案したものである。

しかしながら、それぞれの機体にそれぞれの性格、スタイルに合わせた能力を搭載させたシドの感性は相当鋭いものだと言えよう。


《エネルギーもらいっと。じゃあ今度はこっちから行くぜクハハハハハ!》


オズマの機体は両腕を前に出し、手のひらを外に向けた。膨大なエネルギーが凝縮される。


《クハハハハ!くらえ

【閃光砲{ライトニング・キャノン】]!!》


金色の柱がオラクルへ放たれる。


『これは・・・!』


閃光砲の強力さを察知したオラクルは機敏な動きで回避した。

雲を切り裂いて光線は遥か彼方へ消えた。


『エネルギーを吸収か。ならば吸収できない程の高エネルギーで攻撃すれば良いだけのこと!』


オラクルはエネルギーを手のひらに集めだし、球体を作った。それは凄まじいエネルギーの塊であるにも関わらず、極めて小さく、ついには目視できない程に圧縮されてしまったのだ。

それを握り締めた拳で着地したオズマへ上空から攻撃してくる。


《クハハハ!なんだぁ?エネルギー集めは失敗か!こりゃいい!クッハハハハ!》


余裕でパンチを弾こうとしたが、直前でオズマの直感が冴え渡った。この打撃を受けてはまずいと、身体が反応したのだ。


《ちぃ!》


オズマはスラスター全開で横に飛んだ。

ターゲットに避けられ、拳は地面に当たった。そして次の瞬間


《クハッ、マジかよ・・・》


地面が無くなった。


というより、星が欠けてしまうほど巨大なクレーターができたのだ。


オズマは冷や汗をかいた。今まで強い相手だけを求めて戦い、快楽を楽しんできたオズマが生まれて初めてかなわないと悟った。

しばらく目が虚ろだったが、オズマは突然ヘルメットを横へ投げ捨てた。


《クハッ・・・クハハハハハハハハ!!ハーッハハハハハハハ!!!》


突然笑いだしたオズマをオラクルは怪訝そうに見る。


《よく考えたらこれは願ってもない状況じゃねぇか!・・・強い。強い!強い!強い!強い!強い!強い!強い!!楽しくて仕方ねぇや!クハハハハハ!!》


オズマはコクピットのボタンをガラスごと叩き割り、押した。


神歌のジェネレーターが轟音をあげながらフル稼働し出す。


《クハハハハハ、あばよザック、皆、それにアザブル!》


コクピットの中が赤いライトに染まる。さらにモニターには〈オーバードライブ〉の文字が点滅した。


オラクルは目の前の機体の異変に気付き、エネルギーを溜めだす。


『何をする気だ?』


神歌のスラスターから今まで聞いたことのない爆音が飛び出した。


《テメーのエネルギー全部吸い取ってやるぜ!いくぞオラァァァァ!!!》


オズマは超光速でオラクルへと突撃した。


《あばよ・・・クソチビ》


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