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『CROWN plus』  作者: 是音
20/27

TURN20 伝説の記憶

仮面の男は地面に腕を沈める。

すると地面から土の槍が飛び出し、破壊神を取り囲んだ。

さらに金髪の女が上から凄まじい圧力をかける。


『フン、《エレクトリック・フィールド》!!』


破壊神は強烈な電磁場で圧力に耐えた。


「アウス、メーヴェ・・・」


破壊神と互角の戦いを見せる二人を見たファムとスティングは同時に名前を口にした。


名を呼ばれた二人は振り向く。

その二人は

自然融合・完全支配能力の《アウス》

重力・圧力完全支配能力の《メーヴェ》

だった。

しかしこの二人は前異世界大戦でブラックホールに呑まれて死んだはず。

スティングも、二人を写真で見ただけのファムも動揺を隠しきれない。

何故魂も肉体も滅んだはずの二人がここにいるのか。その答えを明かしたのは破壊神であった。


『創世神である本体は新資源や魔鬼などの他に余計なものまで復活させたようだな。』


そう。創世神は崩れ去った惑星の欠片からその記憶を読取り、蘇生・復活を行うのだ。つまり、アウスとメーヴェの場合も同じく、惑星の欠片に彼等の記憶が残っていた為にこのような復活を遂げたのだった。


「アウス、メーヴェ、嘘じゃ・・・嘘じゃないよな!?」


両腕を失い、かすかな銀光を身に纏いながら地面に横たわるスティングの目には涙が溢れていた。ファムは少しばかり彼には人間の面影が残っているのだと感じた。


「今は再会の感動に浸っている場合ではないわ。」


メーヴェは集中する。アウスはファムの方を向いた。


「おい娘。貴様ザックの妹だな?」


ファムは驚いた。アウスと会うのは初めてなのに、自分のことを知っているからだ。


「え、私のこと知っているんですか?」


アウスはファムに近づくと、影で構成された兜をコツンと叩いた。


「いや・・・わかる。奴と同じ能力、同じ眼光。そしてなにより、貴様を見ていると私の血が騒ぐ」


アウスは仮面の下で口元を弛ませ、ファムに背を向けた。


「貴様名前は?」


「ファムです」


「そうか。ファム、貴様のその能力、兄より上だという所を私に見せよ!」


「はい!」


「行くぞ!!」


アウスはファムの右腕に触れると、影槍と融合した。影槍自体がアウスとなったのだ。


〈ファム、攻撃は私が守ってやる。貴様は自由にやれば良い。〉


「・・・やってみます」


ファムは大きく飛び上がり、槍を突き出した。

槍は一気に伸びて破壊神を貫こうとする。

破壊神はあっさり見切ってそれを避けた。


『無駄な。』


だが破壊神は背後で槍から上半身を出したアウスに気付かなかった。

アウスが放った影の針が五本破壊神を貫通した。


『ぐっ!なんだ貴様!?』


破壊神の貫通した箇所から黄色の液体が流れ出てくる。

ファムは破壊神を殺すことが可能だということを確信した。


「メーヴェさん、援護お願いします!」


「任せて」


メーヴェは笑みを浮かべた。今まで自分に援護を頼んだ者などいなかったからである。


「潰れなさい。《Extreme・Pressure{極限圧力}》!!」


上からの強烈な圧力が破壊神を襲う。


『ギ・・・!《エレクトリック・フィールド》!!』


破壊神は全力で電磁場を発生させ、耐えた。相当な圧力なのか、浮いていた体はどんどん降下していき、ついに足をついて耐える形になった。

耐えてはいるが、ファムにとってその姿は無防備な体勢そのものであった。しかし破壊神は電磁場に包まれている。

すると、槍と融合していたアウスがファムに語り掛けた。

〈大丈夫だファム、私が電磁場と融合してお前を守ってやる。気にせず突っ込め!〉

「お願いしますアウスさん!」


ファムは重圧に苦戦する破壊神へ突撃した。電磁場のなかに飛び込むと、不思議と体に異常はない。アウスのおかげである。


「あなたなんかに私たちの故郷を壊させたりなんてしない!!」


ファムは炎のごとき闘争心を表す上段に槍を構えた。破壊神は両腕を上にあげて圧力に耐えながらも顔だけをファムに向けた。


『に、人間め・・・我を消してもまだ本体がいる。本体を倒してもまだ・・・ククク、貴様等に逃げ場は・・・無い!!』


ファムの槍に大きく影が渦巻く。

深呼吸して心を落ち着けたファムは腕を力強く振り下ろした。


「《白影轟斬》!!!」


頭から真っ二つになった破壊神の周囲から電磁場が消えた。ファムと、実体化したアウスは素早く離れる。とどめにメーヴェの極限圧力が破壊神の亡骸を地下へ地下へ押し込み、地面に巨大な穴が開いた。


スティングが両腕から火花を散らしながらメーヴェに支えられて二人のもとへ歩く。


「やったなファム。お前神様殺しちまったぞ!ハハハハハ」


ファムはスティングに駆け寄り、抱きついた。

両腕を失ったスティングはよろめく。


「おっと」

「スティングさん!スティングさんがボロボロになってでも命懸けで私を守ってくれたからですよ!!」


アウスとメーヴェは二人を見て笑っていた。


「スティング、貴様ザックに殺されるぞ?」

「その前に大泣きするでしょうね、彼。」


ファムは強力な助っ人となった二人の最強能力者にも駆け寄り、握手した。


「お二人のおかげです!さすが兄と一緒に宇宙を救った方々です!」


が、その握手は二人の手から擦り抜けた。


「え・・・?」


ファムは呆気にとられた。アウスとメーヴェの身体が透明になっていくのだ。


「やはり行くのか。」


スティングは悲しそうに二人の前に立った。アウスとメーヴェは笑顔で手をつなぐ。


「すまんなスティング。時間切れだ。」

「まだあなたは死なないわ。皆と地球へ帰るの。」


ファムは焦りながら消えゆく二人を見つめている。

「どうして消えちゃうんですか!?」


スティングは残った肘部分でファムの背中をポンポンと叩いた。


「二人は死んだ人間なんだよ。破壊神というオラクルの片割れが消えたのだから、本体がこの世界を維持するためには小さな存在が消えるしかないんだ。きっと地上では魔鬼も消滅しただろう。」


ファムは涙をこらえ、触れることはできないが、二人と再び握手をした。


「ファム。貴様はもう兄と同等の力を持っている。その力、世界の為に役立てろ。」

「短い間だったけど、あなたと共に戦えて良かった。私が援護をしたのは初めてよ。」


最後にアウスはスティングの耳元で何かを囁いた。


「・・・わかった。任せろアウス。」


何かを約束したスティングは、次にメーヴェの前に立つ。


「申し訳ありません。アウスと二人であなたを守ることはもうありません。」


ファムは驚いてスティングを見上げた。メーヴェは笑顔で聞いている。

スティングも笑顔でファムを抱き寄せた。


「・・・本当に守りたいものができた。」


「え・・・えぇ!?」


ファムは驚いて顔を赤くする。そんな二人を満面の笑みで見守りながらアウスとメーヴェは消えた。


二人を見送ったファムとスティングはその場に座り込んだ。


「ふぅ、なんとか倒したな。」


「はい・・・。って、あの!スティングさん!さっきのって・・・本気?」


スティングは明らかに動揺を隠しきれないファムを見て笑った。


ファムはその笑いが冗談だったという事だと思い込み、同じく笑った。


「そ、そんなわけないですよね〜アハハハハ!」


「本気。」


ファムは固まった。

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