TURN17 参の扉・2〜戦闘体〜
メインストリートに飛び出た五人は早速生命体の奇襲を受けた。
鞭のように触手が壁を叩きつける中を切り払いながら潜り抜けていく。
トガスは触手を切り払い、ユノを見た。
『さてユノ、飛び出したのは良いがどうする?』
「とにかくアイツの目玉を破壊すれば良いんでしょ!」
『それはそうだが・・・。』
「ならアイツの触手を全部爆砕してでも辿り着いてやるわよ!」
突撃しながらユノの言葉を聞いたライアとレイモンドは、軽く笑いながら顔を合わせた。
「お前の妹、ガラ悪いぞ・・・。」
「姉である私の教育不行き届きね。」
襲い来る触手を爆破、蒸発させながら二人はもう一度ユノを見た。問題の娘は乱暴に触手をなぎ払っている。
後方では下がったトガスとメアスが空間転移で回避しながら会話している。
『トガスよぉ、テラ達にはちゃんと確認しておいたか?』
『あ、あぁ。だがオレは少し気が乗らない。奴らはそんなに悪い連中ではないような気がする。』
『今更馬鹿言ってんじゃねぇぞ、これは新資源全員が了承したことだ。変えられはしねぇよ。』
『・・・そう、だな。』
『迷うなトガス。危険因子が出てしまうのは当然のこと。処理は我々惑星の意思が務めるのだ。』
そう言うとメアスはレイモンド達に合流した。
トガスはメアスの後に続く。
「やってみるもんだな!明らかに触手が減ったぞ!」
「たまには何も考えずに突っ込むのも有りってことね。」
レイモンドとライアは前方のユノ、そしてさらに先に構えている生命体を見た。背中から生えている触手はほとんど切断され、残り少ない触手を振り回していた。
前かがみになっているその生命体は突然口を開けた。桃色の光が口の中から溢れ出る。
「エネルギー攻撃か!」
『でかいのが来るぞ!皆避けろ!』
メアスの言葉で全員が路地裏へ飛び込む。その瞬間、生命体は光の柱を吐き出した。メインストリートは光に包まれ、裏路地へ桃色の光が差し込んでくる。
「くっ、なんてエネルギーなの!?」
ユノが光に目を細めながら叫んだ。同じく隣で倒れこんだライアも建物の影から、長く照射され続ける光線を見た。
「このまま進化し続ければエンドオブワールドも、メサイアさえも凌ぐかもしれないわね。」
「ったく、末恐ろしい奴だよ!」
別の道から飛び込んだレイモンドが現れた。
「ここまでの戦闘力だとは思わなかったぞ畜生!」
「ところでトガスとメアスは?」
ユノが周りを見渡す。すると崩れ落ちた瓦礫の下から二人が出てきた。
『くそ!オレの赤い鎧がボロボロじゃねぇか!』
『やれやれ、まさかレーザーまで撃って来るとはね。』
座り込んだユノはパッと明るい顔になった。
「そうだよ!アイツがレーザーを撃ったってことは、私達を迎撃するにはもう触手じゃ不十分だと判断したんだよ!」
『ふむ、なるほど。』
『つまり、君たちが少なくなった触手の相手をしている間に我々が空間転移で奴の目玉を破壊すれば良いんだな?』
ユノは頷く。そして早速といわんばかりにレイモンドとライアが武器を構えた。
『では我々は気付かれないように近付き、隙をみて攻撃する。引き付けておいてくれ。』
そう言うとトガス達は消えた。
「よしユノ、ライア、奴がレーザーの収束を始めたらすぐに隠れろ。」
「了解〜。」
「レイモンドこそあっさり死ぬんじゃないわよ!」
三人は隠れながら生命体を見た。敵はまるで獲物を探すようにキョロキョロと辺りを見回している。
「いくぞ!!」
三人は再びメインストリートへ飛び出した。
三人を捕捉した生命体は予測通り触手を繰り出してきた。しかし少ない触手をすべて破壊すれば攻撃はレーザー中心になってしまう。レイモンド達は破壊しないように注意して触手を防いでいた。
すると生命体の頭上のビルに青と赤の鎧が現れた。
「チャンスだトガス、メアス!目玉を壊せ!!」
レイモンドが二人へ叫ぶが、騎士達は動こうとしない。ユノとライアも様子が変だと気付いた。
「トガス!どうしたの!?早くそいつを・・・ぐぅっ!」
「ユノ!」
不意を突かれたユノは触手に吹き飛ばされた。ビルの壁に叩きつけられ、目眩を感じながらも必死でトガスを見る。
「トガス・・・何で?」
トガスもメアスも無言で消えてしまった。
「くっ、このタイミングで裏切るとは・・・!」
レイモンドが悔しそうな顔をしたが、再び生命体が収束を始めたのを見て慌てる。
「まずい、またあのエネルギー攻撃だ!ライア、ユノに手を貸して隠れろ!急げ!!」
「わかったわ!さぁユノ、早く立って!」
ライアは半ば放心状態のユノに肩を貸して建物の間に隠れた。
桃色の光が止むと、ライアは反対側に隠れたレイモンドに無事だという合図を送った。
「ユノ、しっかりしなさい!」
「うん、大丈夫。でもトガス達が・・・。」
「シド君やランスさん達の言った通りね、彼らも人間は滅ぼすつもりだったのよ。おそらく今頃はザックや他のメンバーも・・・」
「でも・・・だったら何で今まで一緒に行動していたの!?トガスは私を助けてくれたこともあったのよ!?」
ユノが哀しげな顔で姉を見る。
「多分、進攻するためには戦力が多く必要だったのよ。きっと彼等はこの地下世界の事を知っていたのね。だから三つの扉で私達を分断し、本体までの距離が近づいたから私達を裏切った。」
「じゃあオラクルも、新資源達も倒すべき敵って事?」
ライアは静かに頷いた。
すると反対側からレイモンドが叫ぶ。
「おーい!アイツがレーザーを撃つ前に俺たちで仕留めるしかない!!覚悟は良いか!?」
それに答えたのはユノだった。
「もちろん!さっさとコイツを片付けるわよ!!」
そう言うとユノは生命体へ駆け出した。二人も後に続く。襲い来る触手は全て破壊し、生命体は無数にあった触手を全て失った。
攻撃手段の無くなった生命体はエネルギーを収束する。が、それはレイモンドの高収束レーザーが顔面を直撃したことによって止められた。
そしてついに、三人は木の幹のような胴体を駆け登り、レーザーも届かない背中に乗った。そこから大きく飛び上がり、顔にくっついている大きな目玉に一斉攻撃した。
あっけなく目玉は壊れ、生命体は地面へと潜り始めた。
三人は飛び降り、離れてその様子を見ていたのだが、異変に気付いた。突然生命体が喋ったのだ。
『ククク・・・貴様等は人間だな?』
予想外の出来事に三人は驚いた。ユノが慌てて質問を返す。
「ええ、そうよ!あなたは何者なの!?何故私達を襲うの!?」
『我は《オラクル戦闘体》。本体を守護する者。』
「戦闘体!?あなたが創世神オラクル!?」
『クク・・・創世するは本体の役割。我は破壊を司るオラクルの分裂体。別名《破壊神》。』
三人は目の前で地面に沈んでいくのが破壊神だということに驚愕した。
「待ってオラクル!何で地球も、人間も滅ぼそうとするの!?悪いことをしたのはたった一人なのに!」
ユノの叫びを聞いた破壊神は笑い声をあげた。
『ククク、愚かな・・・。貴様等も、我等に歯向かう惑星共も、全て滅してくれよう・・・。』
そう言うと破壊神は地中へと消えてしまった。
三人以外誰もいなくなったメインストリートは先程の轟音が嘘のように静かになった。ただ、穴が開いて崩れたビル、深々と掘られた地面は戦闘の凄まじさを物語っていた。
「まさかあの生命体もオラクルだったとはな。」
レイモンドは瓦礫のうえに腰掛けた。ユノとライアもその場に座り込んだ。
『うひゃ〜っ!すっげぇなオイ!』
『どんな戦闘があったんだよ?』
『おーい!レイモンド〜!大丈夫か〜!?』
突然呼ばれたレイモンドが遠くのビルの上を見上げると、別ルートで進んでいたジン、アンカー、サイが立っていた。
さらに後ろからは
『助けにきたつもりだったが、遅かったようだな。』
『ボロボロじゃないかレイモンド。』
『兄さんもでしょ!』
ザックに肩を貸しながらスティングとファムが現われた。
能力者達が集結した。
「お前達、何でここに?」
「あんまり遅いから迎えにきたんだよ!」
レイモンドの問いにジンが言う。本当は進んでいくうちに再び都市部へ辿り着いてしまい、戸惑っていたところをレイモンド達を見つけただけだった。
「どうやら参の扉が一番近いルートだったようだな。」
腰を下ろしたザックが言う。後ろからザックを見たユノは驚いた。
「ザック!その傷は・・・」
「あぁ。バッサリいかれちまったな。油断した。」
ファムが支えるザックの背中には大きな太刀傷があった。やはりザック達もテラに裏切られたのだった。
話を聞くと、ジン達も突然殴り飛ばされ、気が付くとヴァルガとヒラリスの姿はなかったのだという。
新資源達の裏切りには戸惑ったが、ともかくレイモンドは今し方起こった事を全員に話した。
皆が生命体が破壊神だということに驚く中、ザックは腕を組んで状況を把握した。背中の傷は浅く、急所も逸れていたのか、すぐに止血したようだった。
「創世神のオラクル本体と、破壊神のオラクル戦闘体。そして新たに新資源・・・。敵が増えたな。」
スティングも色々考えを巡らしていた。
「新資源が裏切ったのは、このすぐ先にオラクル本体がいるからだろ?破壊神と創世神、両方倒さなければいけないということか。」
「新資源達もね。」
ライアが付け加える。
ともかく、再び仲間達が欠ける事無く再び集合した。戦いはこれからが正念場である。皆は一時休息した後、新資源達を追うことにした。