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『CROWN plus』  作者: 是音
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TURN15 弐の扉〜触手〜

弐の扉へ入ったヴァルガ、ヒラリス、ジン、アンカー、サイも都市部を進んでいた。


ジンとアンカーは前を歩く白と黒の騎士に興味深々だ。


「なぁなぁ、お前らその甲冑の中ってどうなってるわけ?」

ジンとアンカーはヴァルガの黒い鎧を叩いた。


『触るな人間!』


怒ったヴァルガは逃げる二人を追い掛けて行った。

残されたサイとヒラリスは顔を見合わせる。


『フフ、我々の甲冑の中はからっぽですよ。』

「やっぱそうか。それにしてもアイツらどこまで行ったんだ?」


その時ヒラリスが前に大きく倒れた。


「おいおい、新資源ともあろう騎士が派手にコケてんじゃねえよ。」

『ち、違います。』


サイはヒラリスの足元を見た。ヒラリスの足は地面から突き出た腕に掴まれていた。


「魔鬼か!」


サイは三体の大塊儡を呼び出した。

ヒラリスも剣で足を掴んでいる魔鬼の腕を切断して立ち上がり、身構えた。

そして二人を囲むように都市部の地面からデモン型魔鬼が這い出てきた。


「マジでどこ行ったんだよあの三人は!」

『敵は少数。我々で駆除しましょう!』


そう言うとヒラリスは一瞬で魔鬼の真上に移動し、剣で一刀両断した。


「うお!すげえな!」

『《空間転移》。我々騎士が使える能力です。』


三体の大塊儡とヒラリスは短時間で魔鬼を全滅させた。

その後ヴァルガとジン、アンカーが戻ってきた。別の場所で戦闘をしていたらしく、ヴァルガは剣を抜き、ジンとアンカーは身体を硬質化させていた。


『この人間共、なかなか使えるぜ。』

「ハッ、今頃気付いたのかよ!」

『とりあえず早くここを抜けましょう。オラクルが本格的に進攻を始める前に。』


アンカーはヒラリスをじっと見た。


『な、何です?』


「お前、男だよな?」


『当たり前です!我々の中で女はテラだけです!』



その後一同は何事もなく都市部を進むと、今度は遠くに森林が見えてきた。地下に森林があることに疑問が残るものの、これも創世神が為せる業だと理解し、中へと進んでいった。


人工的な都市部と打って変わり、誰の手も加えられていない道無き森林の中を進む。光が枝を擦り抜けて地面に降り注いでいる。ただ一つ普通の森林との違いは、生き物の姿が見られないという点であった。

その途中、ヴァルガがふと立ち止まったが他の面々は気付かずに進んでいた。


「おいコラジン!てめぇ今オレの足を踏んだだろ!」

「うるせぇ踏んでねぇよ!お前こそオレの足を踏んだだろ!」


ジンとアンカーが喧嘩を始めたが、陽斬の肩に乗ったサイが笑いながら後ろを振り返った。

「悪ぃ悪ぃ、それウチの邪混沌。」


それを聞いたジンとアンカーは、前を歩く三体の大塊儡の中でも狂暴な深緑の巨体を睨んだのだが、


〈グルルルル〉


視線を察知した邪混沌が後ろを振り替えった為に急いで目線をそらした。そして再び無意味に口喧嘩を始めた。


『君達やめないか。』


さらに後ろで三人と一体のやりとりを見ていたヒラリスがあきれ顔で二人を止める。


少し経つと後ろからヴァルガが追い付いてきた。


『おやヴァルガ、どうしたんです?』


『今テラから連絡が入った。お前等も聞いておけ。』


ヴァルガの言葉にジンとアンカーは立ち止まり、サイも三体の大塊儡を止める。


『テラ達が都市部で謎の蜘蛛型の生命体と交戦したらしい。戦闘能力は極めて高く撃破はできなかったものの、なんとか撃退はしたらしい。弱点は紫の目だそうだ。しかし足が六本ということは完全に蜘蛛型というわけではなさそうだな。何かの派生体か?』


「テラってあの金色の騎士だろ?ザックやスティングがいたのに撃破できなかったのか?」


『それだけ強大だということです。我々の前にも、もしかしたら・・・』


その時、光を浴びて立っていた一同が大きな影に覆われた。


「うん、来たみたいだな。」


サイが真上を見上げて言った。既に邪混沌と牙陰は両側に散らばって戦闘態勢に入っている。

それを見た他の面々もサイと同じように真上を見上げた。


そこには球形の身体から無数の触手が伸び、一本一本が枝を掴んで身体を支えている奇妙な生命体がいた。身体の色は白、青、黄色が折り交ざっており、青色の触手の間から見える身体にはヒビの入った紫色のガラス玉がくっついていた。


「紫色の目だ!」


「じゃあアイツが・・・」


『テラの言っていた蜘蛛型生命体というヤツか!だが蜘蛛には見えないな。』


『とにかく撃破しましょう。サイさんは既に動きだしましたよ。』


ヒラリスの言うとおりサイは既に三体の大塊儡を動かして攻撃を仕掛けていた。


まずは陽斬がシールドカッターで生命体が掴んでいる枝を切り落とし、邪混沌が下へ引きずり降ろす為に生命体へワイヤーを射出する。牙陰は射撃準備を既に完了していた。通常の魔鬼ならこのコンビネーションの前に一瞬で消え去っているだろう。


しかし相手はそう簡単には捕まらなかった。その生命体は枝を切られると、掴んでいたその枝を放し、すぐに触手を伸ばしてまた別の枝を掴んだのだ。その触手を動かす動作が速すぎる為にシールドカッターは生命体をすりぬけていくように見えた。

胴体へ向けて放たれた邪混沌の鋼鉄のワイヤーも、生命体が触手の反動で上下左右にバウンドするため、簡単に避けられてしまった。


「気味の悪い姿のくせに、意外と俊敏なんだな。牙陰!撃て!」


牙陰は胸からレーザー、両肩からミサイルを発射した。ミサイルは触手に捕まって外したが、レーザーは胴体に直撃した。

だが傷はついていない。


「レーザーでダメージを受けないなんて、一体どんな外殻してんだよ!」


サイの攻撃を見ていたヴァルガとヒラリスは顔を見合わせた。


『ヒラリス、やはり直接目を狙うしかなさそうだな。』

『そうですね。《空間転移》!』


騎士達は瞬間移動で生命体の上に移動し、触手を掴んで立った。そして剣を抜いた二人は紫色の目へ突き刺そうとするが、触手に足を縛りあげられ、逆さまに吊されてしまった。


『ぐぅっ、しまった・・・!』


その時、一本の触手がヴァルガへ勢い良く伸びてきた。

『ヴァルガ!』


間一髪、ヒラリスが振り子のように反動をつけてヴァルガを蹴り飛ばした為、触手はヴァルガの頭部をかすめて肩の鎧を削った。


「木には悪いが・・・」

「これも生きるためなんでね!」


ジンとアンカーは生命体が掴まっている枝の生えた木の幹を剛拳で粉砕した。

二本の木の間にいた生命体は片方の支えを失ってバランスを崩し、ヒラリスとヴァルガを放した。そして別の木へ飛び移る為に触手を伸ばす。


「させるか!邪混沌!」


邪混沌はワイヤーで生命体の伸ばした触手を束ねた。そして下へ引きずり降ろそうと引っ張る。

生命体は片側の木に掴まったまま物凄い力で邪混沌を引き上げた。

生命体と邪混沌は上と下で互いに引き合う形になった。


「怪力が自慢のお前が力で負けるのか邪混沌!?まだそんなもんじゃないだろう!」


邪混沌は腰部から四本のワイヤーを射出して周囲の木の幹に巻き付けて身体を固定した。さらに邪混沌の掴んでいるワイヤーを牙陰と陽斬、ジン、アンカーも掴んで勢い良く引っ張った。


〈グルァァァァ!!〉


「踏張れぇぇぇ!!」

「オラァァァ!落ちろこのヘンテコ一つ目野郎!」



そしてついに枝が全て折れ、落下した謎の生命体は地面に叩きつけられた。


『今だ!』

『今度は仕留めます!』


すかさずヴァルガとヒラリスが瞬間移動で生命体へ接近し、紫色の目を粉砕した。


「やったぞ!」


「待て、まだだ!」


生命体が突然触手を振り回して暴れ始めたので一同は一旦距離を置いた。

しばらく経つと生命体は暴走を止めて再び触手を伸ばし木の枝を掴むと、猿のように木から木へと飛び移って遠くへ消えてしまったのだった。



『・・・テラの言うとおり強大な敵だったな。』


『しかし気になるのは奴の目には既にヒビがあったということです。』


「ん?それはつまり、誰か先にアイツと戦った奴がいるってことか?」


「・・・っ!まさかアイツは!」


『はい。おそらく今の触手を使う生命体はザックさん達が撃退した蜘蛛型が進化した結果だと考えられます。』


『馬鹿な!俺がテラからの連絡を受けてそんなに時間が経たないうちに奴は現われたんだぞ!?そんな短期間の進化があってたまるか!』


「だが今の奴は明らかにオレ達にとって戦いにくい相手だった。ワイヤーを使う邪混沌がいなかったら攻略できなかったかもしれない。」


全員は息を呑んだが、とりあえずヴァルガは他のメンバーに報告することにした。



『ヴァルガだ聞こえるか?我々も謎の生命体と遭遇、交戦した。しかしそいつは蜘蛛型ではなく、丸い身体で触手を使う奴だった。目玉の傷跡から判断するに、テラ達が戦闘した蜘蛛型が進化した姿だと思われる。なんとか撃退はしたが、また更に強大に進化する恐れがある。全員注意してくれ。』



《こちらテラよ。それが本当なら早く撃破しないと手が付けられなくなるわね。了解したわ。それにしても奴の目的はなんなのかしら?》


《トガスだ!テラ達やヴァルガ達を襲ったのなら次は間違いなく我々だな。弱点は目だったな、了解した!・・・それからヴァルガ、テラ、わかっているよな?》


『ああ、わかっているさ。』


《心配しないで。地球の為よ。》


《そうか、ではまた後程。》




ヴァルガは念波での連絡を終えた。


「みんな何だって?」


『ん?了解したとさ。』



それからヴァルガ達は再び生い茂る森林の中を進んで行った。

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