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『CROWN plus』  作者: 是音
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TURN13 真相

全員が巨城を囲む谷の周囲に集結した時には既にエネルギー体達は魔鬼を駆逐し、役目を終えたエネルギー体達はそれぞれがワープゲートを開いて消えていった。


ザック、アンカー、スティングの案内で一同は消えてしまった騎士達を追って巨城の中へ進むべく長い橋を渡った。神歌にとっては道幅が狭く、六機はスラスターで浮きながら進む。


「たたた、たっけえ!」


サイは底の見えない谷底を見て言った。


「お前は落ちても邪混沌が助けてくれるからいいだろう?」

「気性が荒い邪混沌もさすがに術者を失うのは勘弁願いたいだろうからな。」


スティングとレイモンドは笑いながらサイの前を歩いていた。


一同は円柱型の巨城の入り口へ入った。入り口は広く、神歌達も続々と入っていった。灰色の鉱物でできたその城の中は広いホールになっており、地面一帯に巨大な魔法陣のような模様が描かれている。全員は真ん中に立った。


「で、ザックよぉ、こんな広い城の中に一体何があるんだ?」

「さぁ?」


レイモンドの質問にザックはぶっきらぼうに答えた。


「さぁ?ってお前!じゃあ今までどうやって活動してたんだお前等!?」

「いやぁ、いつもここに立っていればあいつらが適当に連れてってくれるんだよ。」

「あいつらって・・・うお!」


突如として魔法陣が光り輝いた。一同を包み込んだ光が弾けるとそこには何もなかった。




「ん・・・ここは?」


ファムが目を開けると灰色の殺風景な場所とは打って変わり、そこは壁にコードやモニターが無数に敷き詰められた巨大な空間だった。モニターは全てノイズがかかっている。

ザックたちを含め一同は状況が理解できずにいた。


「ザック、ここは一体どこだ?」

「こんな場所はオレも知らない。」


『いつ敵が現れるかわからないからな。油断はするな。』

ランスの言葉で六機の神歌はスラスターを吹かした。レイモンドは先程の戦闘についてわからないことが多すぎたため、ついに怒声混じりにザック達へ叫んだ。


「ザック、スティング、アンカー!いいかげん話してもらうぞ!!」

「あ、ああ。わかってるよ。」


すると全員の目の前に先程の騎士達が現れた。そして金色の騎士が前に出る。


『ザック、この方達には私から説明します。』


突然金色の騎士が喋ったのだ。全員は身構えた。神歌達もエネルギーをチャージする。


『あなた方をここへ召喚したのは私達です。ですがあなた方の敵ではありません。』


「信用できるか!!」

ジンは身体を硬質化させた。

「奴の言っていることは本当だジン!みんなも能力を収めてくれ!」


ザックの言葉に全員は能力を収め、神歌達もスラスターを止めた。


「お前がそう言うなら・・・」

「信じても良いんだな?」


ザックは頷いた。

「ああ。続けてくれ《テラ》。」


「!?」

「兄さん今なんて言ったの!?」


『彼の言う通り私は《テラ》です。ただし新資源が具現化した姿ですが・・・。この騎士達も新資源が具現化した者です。』


金色の騎士の後ろに立っていた四人の騎士達も前に出た。


「・・・お前達新資源は滅びたはずだ。」

「それに僕達の味方なら何故エンドオブワールドに新資源の反応があったんだよ!」

神歌から降りたランスとシドは疑問をぶつけた。


『何から説明しましょうか・・・。』

テラが少し考えていると黒い騎士が喋った。

『まずは我々が何故、どのように復活したのかだな。』


テラは頷いた。


『そうですね《ヴァルガ》。・・・6年前、ある男によってメサイアとなった我々はあなた方に葬られ、ブラックホールへ飲み込まれ、時空を彷徨い続けていました。しかし、ある時突然我々を蘇生させた者が現れたのです。』


「お前達を蘇生させた者・・・?」


『その名は《創世神オラクル》。我々が集合した魔神メサイアのような偽の神などではなく、正真正銘、本物の《神》です。』


一同は驚愕した。


「創世神オラクル・・・本物の神!?」

「で、でも何故そんな神なんてモンが現れたんだよ!!」


ジンの言葉を聞いた瞬間、赤い騎士が一瞬でジンの目の前に移動し、襟首を掴んで持ち上げた。


『貴様等人間が我々の力を悪用して宇宙を消滅させよう等と馬鹿げた事をしたから神の怒りに触れたんだ!!』

「て、てめぇ・・・やんのかよ!」


『やめなさい《メアス》!彼等はそれを阻止した方々よ!悪いのはたった一人の男なのよ!』

『・・・ちっ。』


メアスはジンを降ろすと元の位置に戻った。


『でもメアスの言う通り神の怒りに触れたのは事実よ。オラクルは宇宙を消滅させようとしたあなた達《人間》という種族を地球ごと葬り去るつもりなの。』


レイモンドは腕を組んだ。シドはだんだんと頭の中で仮説を立てはじめた。


「じゃあ魔鬼やエンドオブワールドはその創世神とかいう奴が蘇生させたんだね?」

『ええ、ただ創世神は何もない物から新たなものを作り出すことはできないの。だから私達のエネルギーを使って魔鬼やエンドオブワールドを蘇生させた。そして創世神はまず膨大な力を持つあなた方と、CROWNという仮想世界を狙った。』


「ナルホド。で、お前達は何故CROWNを守ったり」

「オレ達をこの謎の異世界へ転送したんだ?」


ランスとレイモンドが続けて質問する。

アザブルやハル、アルマは神歌の中で話を聞いていたが、オズマは暇そうにあくびをしていた。


『CROWNが消えれば次のターゲットは地球です。我々はこんな姿をしてはいますが本来は惑星なのです。いくら神の怒りに触れたとしてもおなじ星としてこれを見逃すわけにはいきません!だから我々の力を少し集めてCROWNにメサイアを送り込みました。

そしてあなた方をこの世界に転送したのは最初、神が狙っているあなた方を我々の手で始末するつもりだったからです。

しかしあなた方の戦闘力を見た我々はオラクルを止めることができるのではないかと考えたのです。』


その言葉に全員が反応した。

「オラクルは殺せるのか!?」


『いえ、神は死にません。ただ倒すことで怒りを沈めることができるのです。』

「そのオラクルはどこにいるんだ!?」


白い騎士ヒラリスが前に出た。


『この巨城の地下だ。創世神はそこに眠っている。』


「じゃあここはもう目と鼻の先じゃねえか!」

「ここは騎士達が作った城じゃなかったのか。」


ファムはザックの服を掴んだ。

「兄さん、相手は神よ?本当に戦うの?」

「当たり前だ。ミシェルは死んだんだからその神は無駄に怒っているにすぎん!そんなんで地球を壊されてたまるか!」


『・・・はたして彼等の言うことは正しいのかしらね。』

『人間はともかく、地球の破壊は防がねばな。』

テラと青い騎士トガスは呟いた。



「よっしゃ!じゃあその創世神とやらにはぶっ倒れてもらうか!」

「もう何が相手でも驚かないぜ。」


全員がやる気をあらわにした。



『やる気のようね。ただしここからが問題よ。』


テラの一言に全員の意識が集中した。


『ヒラリスが先程《創世神は城の地下に眠っている》と言ったけど正確に言えば城の地下にあるのは《地下世界》への入り口よ。』


「地下世界!?」


サイは眉を吊り上げて声を出した。


『そう。創世神オラクルは我々を使って作り出したこの世界スパンの地下に自らの本体を隠したの。本体がどこにあるかは我々も知らないわ。』


「じゃあこの広い世界の地下をモグラのように掘り進みながら彷徨い歩くってのか?」


『我々の調べでは地下には通路があるはずよ。そこを進んでいけば・・・』


「オラクルの本体に行き着く。」


ザックがテラの言葉を代弁し、テラも頷いた。


「悪いなレイモンド、オレもテラ達もわかっているのはこれだけなんだ。」


ザックが仮面を外して苦笑いした。


「ふむ。これで全てが繋がったわけだな。だがザック、お前やスティング、アンカーは一体何をしていたんだ?」


レイモンドが怪訝そうにザックとスティング、アンカーを見回した。


「あははは、オレはユノ、ライアと別れた後ワープゲートで城のホールに飛ばされたんだが、そこで暴れ回るスティングとアンカーに出会ったんだよ。そんで騎士達が現れて、レイモンド達より一足先に真相を聞かされたのさ。」


明るく言うザックを隣のファムが睨み付けた。

「兄さんの猪突猛進グセはみんなに迷惑をかけるんだから!これからは私が見張っていますからね!」


「すいません・・・。」


ユノとライアは二人のやりとりを見て笑っている。


しかし突然三機の神歌が騎士達を取り囲んだ。ランス、アザブル、シドの機体だ。

それを見たザックは騎士達の前に立った。


「おい!どういうつもりだよ!?」


ランス、アザブル、シドはエネルギーをチャージしながら言う。

『ザック、こいつらは先程我々を始末するつもりだったと言った。』

『ならばもしオラクルとやらを倒したとしても、その後でこの者達が人類へ対して第二のオラクルに成りかねんのだ。』

『こいつらは地球さえ助かれば良いと思ってるんだよ!僕達も後々狙われるに決まってる!』


騎士達は黙っている。ザックもそれをわかっていたらしく、何も言えなかった。

だが突然シドの機体が吹き飛ばされた。オズマが蹴り飛ばしたのだ。


『ぐっ・・・なにするんだよオズマ!!』


『クソチビ、それにランスとアザブルもよぉ。今は第二のオラクルとか言ってる場合じゃねぇよ。大体オラクルとかいう奴も倒してねぇのに先のこと考えてどうすんだっつーの。』


オズマが言うと、ハルとアルマの機体もランスとアザブルの前に立った。


『隊長、やめて下さい。』

『アザブルさんも。』


しばらくランス達三人は黙っていたが、ゆっくりと機体を後ろへ下げた。それを見てホッとしたザックは騎士達の方へ向き直った。


「色々と複雑な感じだが、とりあえずは共同戦線だ。」


五体の騎士達も頷いた。


『ええ、それでは行きましょう。地下世界の入り口へ。』


テラがそう言ったとき、後ろで黒い騎士ヴァルガが何かに反応した。


『・・・テラ、奴らだ。』

ヴァルガが部屋中に埋め込まれたモニターに巨城周辺の映像を映し出した。

そこには再び無数のワープゲートから魔鬼が出てきていた。テラは騎士達に指示を出す。


『《パキュリア》を出して応戦しましょう。』


パキュリアとはおそらくエネルギー体のことであろう。巨城付近からもワープゲートが開き、エネルギー体が現われて魔鬼と戦闘を始めた。


『この城は我々新資源のエネルギーが凝縮された場所なの。ここを破壊されるわけにはいかない!』


モニターを見ていたシド達神歌隊は前に進み出た。


『・・・テラ、僕達を外へ転送して。』


シドの言葉にザック達は驚いた。

「シド・・・お前達も・・・本気なのか?」


六機は魔法陣の中心に立った。


『ま、僕達にはしんがりが似合ってるからね。』

『我々が命を賭けて奴らを食い止めよう。』

『クハハハハ、ザック!てめえ地下で死んだら殺すからな!』


シド、アザブル、オズマの機体は手を振った。


『オラクルとやらは君達に任せたよ。』

『もう、私達ってサポートばっかり!』

『ハルだけ残っても良いのよ〜?』


ランスも皆に手を振り、ハルとアルマは口喧嘩しながらも手を振った。


「すまないな。」

「地上のこと頼んだぜ!」

レイモンド達やサイも手を振った。

そして六機は光に包まれ、消えた。



『さあ、我々は地下へ行きましょう。』


残った面々は騎士達の作り出したワープゲートに飲み込まれた。






五体の騎士と共に転送されたザック達は巨城の地下にある見上げるほど巨大な三つの扉の前に立っていた。扉はそれぞれに《壱、弐、参》と書かれている。


「どうするんだよテラ。扉が三つあるぞ?」


ザックが問うと五色の騎士は歩き出し、壱の扉の前には《テラ》が、弐の扉の前に《トガス、メアス》、参の扉の前に《ヒラリス、ヴァルガ》が立った。


『ここからは三つに別れます。』


そう言われた能力者一同は適当に騎士達の後ろに立った。その結果


壱の扉の前には《テラ、ザック、ファム、スティング》

弐の扉の前には《トガス、メアス、ユノ、ライア、レイモンド》

参の扉の前には《ヒラリス、ヴァルガ、ジン、アンカー、サイ》


というメンバーになった。


テラが皆を見回す。

『これから地下世界へ侵入します。我々は三つに別れて別行動となりますが、新資源同士は意志疎通ができますので、それを連絡手段とします。』


そして仮面を付けたザックも皆に叫んだ。

「オレはみんなの強さを信じている!どの扉がオラクルの本体に通じているかはわからない。当然魔鬼や強大な敵とも出会うだろう!でも、辿り着いた者がそれを全力で撃破し、必ず・・・必ずみんなで元の世界に帰ろう!」


ザックの言葉に全員が頷いた。ザックの隣に立つファムは兄の器量の高さに圧倒され、目を見開いていた。

テラ達はそれぞれの扉に両手を当てた。すると巨大な扉が轟音をあげながらゆっくりと、開いていった。


「さあ、行こう。」


一同はそれぞれの扉に入っていった。創世神オラクル討伐の為に。

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