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『CROWN plus』  作者: 是音
12/27

TURN12 集結

深い谷に囲まれた円柱型の巨城周辺では未だ大規模な戦闘が行われていた。

だが少し前に突然魔鬼達が出てきていたワープゲートが閉じたことでエネルギー体達が優位に戦況を展開していた。その中でも魔鬼達を圧倒する集団のおかげで魔鬼の数は着実に減っていた。能力者達だ。全員が巨城周辺に広がり、攻撃している。



「《インヴィジブル・アルマダ{無敵艦隊}》!」


レイモンドの周囲から無数に飛び出した巨大な鋼鉄の触手は伸縮自在なその身体を自由に動かして魔鬼を縛り上げ、先に取り付けられた重火器で粉砕していた。これがレイモンドの《JOKER》であり、重火器精製能力の最終形態である。



別の場所ではユノとライアが三つ又の大戈で魔鬼を切り裂いている。


「《チャージ・ボム》!」

切られた魔鬼は爆破エネルギーを内部に送り込まれ、爆発した。ユノとライアの《JOKER》爆破エネルギー完全制御能力の前にはどんなに堅い装甲を以てしても意味が無いのだ。



一番多数の敵に囲まれているサイは両手にはめた指輪を複雑に動かして三体の大塊儡《黒の牙陰》、《赤の陽斬》、《深緑の邪混沌》を操作している。三体の大塊儡はデモン型魔鬼も見上げる程巨大になっていた。

「邪混沌、奴らの動きを止めろ!」

命令を受けた邪混沌は指先すべてから先の尖った鋼鉄のワイヤーを射出し、周囲の魔鬼を一気に串刺しにした。さらにワイヤーは鮫肌のように粗くなっており、魔鬼達は逃れられない。邪混沌がワイヤーを引っ張って魔鬼達を一ヶ所に集中させた。

「牙陰、砲撃準備だ!」

牙陰は胸部を開いた。さらに肘間接と膝を折り曲げると中からレンズが現れた。その他にも横腹、背中、肩からはミサイルポッドや火炎放射器、バスーカ等の重火器が飛び出し、まさに全身凶器と化した。最後に口を開くと高圧縮砲という危険な武器まで現れた。

「焼き払え!」

サイの指示で牙陰は一斉射撃した。爆音や轟音が響き渡り、魔鬼は原型すらとどめない程粉砕されたが、最後に高圧縮砲でその残骸すら残さず消え去った。

一斉射撃で温度が上がった身体を冷却する牙陰へ向けて遠くからケルベロス型魔鬼が火球を連射したが、牙陰へとどく前に弾かれてしまった。陽斬が自分達の周囲にエネルギーフィールドを展開したのだ。攻撃・防御・罠という死角の無い連携もサイの塊儡師としての天才的な技術があってこそ為せるものである。



再会したジンとアンカーも見事なコンビネーションで魔鬼の身体を砕いている。魔鬼が腕に噛み付いても尾で攻撃しても二人は特に気にとめることもなく落ち着いて撃破した。身体硬質化能力の二人に防御は必要無く、戦闘は完全に攻撃スタイルなのだ。


「《影走り》!」

ファムは右腕のカギヅメが変化した大きな影槍を振り回し、影の刄を無数に飛ばした。ファムはだんだんと戦闘に慣れてきたのか、攻撃を避ける動きにも無駄が無くなっている。実際ファムはこれまで他人に助けられてばかりいた。元の世界では剣道で上位成績を誇っていた自分が役立たずだったことにプライドが傷ついた。周りの能力者達に負けまいと必死なのだ。



エネルギー体達は様々な色をした種類がおり、青色は氷、赤色は炎、黒色は酸、白色は風、金色は大地を操って攻撃している。ファム達が味方だと理解したのか、攻撃は魔鬼だけに向けられていた。



その時、近くで戦っていたレイモンドとユノ、ライア、ファムの目の前に突然五色の騎士が姿を現した。それを見たユノとライアは驚きの表情で五体を見た。そして一瞬でその表情は強張り、二人は五体の騎士へ突撃した。


「あいつら!」

「よくもザックを!!」


それを見たレイモンドとファムは顔を見合わせた。


「あいつらがザックを倒したっていう騎士か?」

「・・・なら奴らに兄の居場所を聞き出すまでです!行きましょうレイモンドさん!」


ファムとレイモンドも突撃した。

後に続いた二人は遠くからユノとライアを援護した。影と銃撃の援護に加えてユノは戈を振り回して騎士へ攻撃し、同じく先頭に立っていた金色の騎士も剣を振り下ろした。


金属音が辺りに響き渡る。


しかしユノと騎士は互いの武器を振り下ろしたまま固まった。

ぶつかり合ったと思われた両者の武器は間に入った男によって止められたのだ。ユノは自分の戈を止めたのが影でできた刀だということに気付き、持ち主の顔を見た。

そこにはアウスと同じ仮面を付けた顔があった。身体を見てみると漆黒の衣を着ている。

騎士は男がもう片方の手に持った影の刀から剣を離した。


「ザック!!」


ユノは間に入った男を見て叫んだ。ライアとレイモンドもその光景に疑問を抱きながらも驚いていた。ファムは最初その男がわからなかった。仮面と漆黒の衣を見てアウスと重ねたのだ。しかしユノの声を聞いてファムは誰よりも驚いた。



「・・・双方武器を納めろ。」


ザックの気迫に押されてユノと騎士は武器を納めた。他の騎士も後ろで立っている。ザックは仮面を外し、笑顔を見せた。


「ようレイモンド!久しぶりだな!」


レイモンドは呆気にとられた顔をしていたが、名前を呼ばれたことで正気を取り戻した。


「お、おう。」


頭が混乱してうまく返事ができないレイモンドにザックは再び笑った。


「兄さん!!」


突然聞こえてきた聞き覚えのある声を聞いてザックはレイモンドの隣で怒りの表情で自分を見つめる女性を見た。

「ファ、ファム!?ななな、なんでおまえがこんなところにいるんだよ!」


ファムはザックを睨み付けたままズンズンと近づいた。

「兄さんが行方不明になったって聞いて助けにきてあげたのよ!いっつもいっつも他人に迷惑をかけて!いい加減にしてほしいわよ兄さん!!」


「い、いや・・・だからってここは異世界だぞ!?危険が伴うんだぞ!?」


ザックも妹にはかなわないのか、オロオロし続けている。

あらかた魔鬼を撃破したサイとジン、アンカーも近づいてきた。


「おぅおぅ、兄妹の再会か?」

「ザックよりファムの方がしっかりしてるぜ。」


サイとジンが冷やかす。


「それよりザック、これがどういうことか説明してもらうぞ。」

レイモンドは黙って立つ騎士達と未だ少数の魔鬼と戦うエネルギー体を見ながら言った。だがザックはまだファムに叱られ続けている。

見かねたアンカーが前に進み出た。


「そのことについてはオレと・・・」

『オレが説明するよ。』


アンカーの隣にスティングが現れた。


「スティング!!どこにいたんだ!?」

「ハハハ、光速移動で戦っていたからね。オレはレイモンド達に気付いてたよ。」

スティングはケラケラと笑う。

「じゃあとりあえず城の中へ行こうか。」


スティングがそう言うと騎士達は消えてしまった。ザックはまだファムの怒声を浴びている。レイモンドは苦笑いした。


「やれやれ、まぁこれで全員が・・・」

『これで全員集合だね!!』

突然声が響いたかと思うと上空に開いたワープゲートから六機の機体が降りてきた。


「機動歩兵シリーズ最終作神歌か。シドの奴もう完成させていたのか。」


ザックが六機を見上げながら言った。

これで前異世界大戦のメンバーが全て揃ったことになる。全員は巨城のなかへ入った。今回の真相を知る為に。

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