〜prologue〜
新都市『CROWN』設立から三年
《M・A{メーヴェ・アウス}社》社長室
今や全世界に交通手段として必要不可欠となったワープ航行システム。開発元のナンバーワン企業MA社の社長であるザックは忙しい毎日を送っていた。
社長室の額には三枚のトランプが飾ってある。一枚はザックの物、残りの二枚はテラで受け取ったアウスとメーヴェの物だ。
大量の書類に目を通すザックに秘書から電話が掛かった。
「何だ?」
『社長、CROWN特別担当員ジン様より緊急通信が入ったとのことです。』
「ジンが?繋いでくれ。」
『はい。』
ザックの机の上のモニターが起動した。ノイズがかかってジンの姿はほとんど見えない。かなり慌てているようだ。
(これはただ事ではなさそうだな。)
「どうしたジン?CROWNで何かあったのか?」
《ザザー・・・た・い・・んだザック!・・・みんな・・・ちまった!》
「ノイズでよく聞こえない!みんなって!?アンカーは?レイモンドやサイ、スティングはどうした!!何があったんだ!!」
通信は途絶えてしまった。居場所をレーダーで調べさせたが何故か機能しないらしい。
CROWN特別担当員とは異世界大戦で戦ったメンバーで構成されたCROWNの治安維持部隊である。CROWNは新都市として設立されたものの、それ自体はイリュージョン社がワープ航行技術の応用で作り出した仮想世界なのだ。世界とのアクセス方法はワープ航行だけ。その為治安を維持するには独自の保安組織が必要だった。
あのジン達に何かあったのだとすればCROWN全体に関わる問題でもありかねない。ザックは急いでCROWNへ向かうことにした。
「ユノとライアを呼んでくれ。それから技術班に連絡は取れるか?」
『はい、繋いでみます。・・・繋がりました。どうぞ。』
《こちらシド、どうしたのザック?》
「シド、CROWNでジン達が消息を絶った。これからオレとユノとライアの三人でCROWNへ行く。ワープゲートを開く準備をしておいてくれ。」
《わかった。大丈夫なの?僕達も行こうか?》
「いや、お前達は残ってオレの代わりに会社を頼む。オレに何かあったときの為にも残っていてくれ。」
《・・・わかった。じゃあまた後で。》
通信が終了するのと同時にユノとライアの姉妹が社長室に飛び込んできた。
「ちょっとザック!みんなが消息を絶ったって聞いたわよ!?」
「ライア姉さん落ち着きなよ!」
そう言うユノもかなり慌てている。
「今から捜索に行く。その為に呼び出したんだよ。」
ザックは漆黒の衣を纏い、仮面をつけた。
「ザック、その格好は・・・。」
「伝説の戦闘服だ。」
ザックは仮面の下で笑った。
ザック達は本社の格納庫にいた。シド、オズマ、アザブルと開いたワープゲートの前に立っている。
「気を付けてねザック。」
「おう。三日経っても戻ってこなかったら心配してくれ。」
「ハハハ、わかったよ。」
シド、オズマ、アザブルに見送られながらザック、ユノ、ライアはワープゲートの中に消えていった。