15話
軽い……。あまりにあっさりと吹き飛んでしまった相手の頭部を見て、東はそうつぶやき素早く能力の制御をつかさどる脳に命令を叩き込む。
周囲環境探索...
魔力と思われる痕跡感知...
東南東上方12メートル。生体反応感知...
能力が叩き出したその情報に従い、東は容赦なく生体反応が出た場所へと銃弾を撃ち込んだ。
「ちっ……」
東が迷わず発砲するのを見ていたのか、裏庭に植えられた桜の木に登り姿を隠していた黒江は舌打ちを漏らしながら隠れていた木陰から飛び出し地面へと降り立つ。
黒江が飛び出す瞬間に東が打ち出した弾丸は桜の木の幹を貫き、着弾地点から数メートルの範囲を衝撃波で消し飛ばす。
しかし、東はそれを確認しない。自分の能力によって拡大された視界の端で、最初に消し飛んだ黒江がただの丸太になっていることを確認しながら、彼は黒江が降り立つと予測された地点に向かって、弾倉に残っていたすべての弾丸を発射した!!
一撃で人間の上半身を消し飛ばす28の弾丸。そのすべてがゆるりと……いっそ優雅さすら感じさせる緩慢な動作で降り立った黒江へと襲い掛かり、
「手裏剣術・霰」
降り立つと同時にクルリと回転した黒江の服から飛び出す無数の手裏剣によって、あっさりと撃ち落された。
特別力強く投げつけられたようには見えなかったその十字手裏剣は、どういうわけか空中で異常な加速を見せ軽々と音速を突破して飛来する。その数は28を軽々と上回り、東の弾丸を迎撃するという役からあぶれた手裏剣たちは、術の名前通り天から降り注ぐ霰のように東に向かって襲い掛かった。
しかし、東はこの程度では慌てない。もとより魔術師……特にこの黒江とかいう《忍者》が一筋縄ではいかない存在だということは、今まで彼女を何度も襲撃してきた彼は十分に理解している。
東は拳銃の弾倉を収めている留め具をなでるように触っただけでは外し、空になった弾倉を排出。それと同時に、まるで蹴り上げるような動作で足を突き上げた。
瞬間、彼の穿いていたズボンの裾あたりに仕込まれた隠しポケットから、まるで打ち上げられたロケットのように弾倉が飛び出し、彼が構えていた拳銃へとすっぽりと入り込み装弾を終える。
曲芸と言っていい器用な弾倉の入れ替え。しかし、彼の曲芸技はそれだけでは終わらない。
飛来弾丸数57...
致命弾丸数32...
相互弾丸干渉・皆無...
お互いの射線はばまないように、器用に投擲された手裏剣たち。その芸術的と言っていい弾幕に苦笑を浮かべながら、東は最初に一発……弾丸を放つ。
弾丸は飛来する手裏剣にかすっただけ。撃ち落とすことも弾き返すこともできない。しかし、弾丸がかすった衝撃でその手裏剣の軌道は確かに変わる。
相互弾丸干渉・発生...
着弾予測・修正...
脳内の能力が告げる情報に不敵な笑みを浮かべながら、東は一発、二発と弾丸の発射を重ねていく。
順序良く・手際よく・能力が提示してくるデータをもとにミリ単位で修正されたタイミングで、機械的に弾丸を射出し終えた東の頬を、0,1数秒単位の誤差をもって手裏剣がかすめた。
ゴォオオオオオオオオオオオオ! という風を切り裂く音と共に、57の十字の弾丸が東のすぐ横をかすめていく。しかし、そのすべてが東の体に傷一つつけることなく、本来の役目を果たさないまま彼の体とすれ違い、
ガガガガガガガガガガッ!! という、連続した金属音を響かせながら、東の後方の地面に突き立った! 地面に落ちた東の影を、まるで切り取ろうとせんばかりに鮮やかによけて。
「相変わらずでたらめな……」
「だてにクラス5の称号を得ているわけではないので」
特に表情を映すことない黒江の顔。しかし、自分の能力が黒江の頬を冷や汗が伝っていることをデータとして提示してくるのを見た東は、口元をほんの少しだけ喜色にゆがめつつ再び弾丸を放つ!!
…†…†…………†…†…
でたらめ……という言葉が、あまりに生易しすぎる。
シシンは自分を追ってやってきた教師をそう評価した。
「くっ!!」
もうおいついてきたんかい! 自分の目と鼻の先に落ちてきた、狙い澄ましたとしか思えない巨岩による砲撃に氷結したシシンは思わず舌打ちをもらしながら、肩に担いだ教師を雑に投げ捨て刀を鞘から引き抜いた。
だが、
「教師はもっと大切に扱いなさい。減点一です」
間に合わない。
不可視のコブシ型の衝撃波がシシンの体を正確にとらえ、彼の体を凄まじい力を持って先ほど落下してきた岩へと叩きつける!!
「がっ!!」
ヤード単位でぶっ飛ばされたときのように、体重を入れ替え力に逆らわず吹き飛ぶというダメージ軽減方は使えない。もとより、それを使わせないためにこの教師は岩の砲撃と、念力場により叩きつけを行ったのだろう。
完全に計算されつくされた戦闘技法。異常な演算力を持つ……本物の超能力者の戦いにシシンは思わず顔をひきつらせた。
やっぱり科学の権化はちゃうな……。うちの魔術師どもみたいなどんぶり勘定はしてへんわ。
故郷の最強格と言われた各魔術宗派の長たちが「喧嘩に勝つ方法? とりあえず地形変える一撃入れときゃたいていの戦いは勝てるだろう?」と言っていたのを思い出しつつ、シシンはダメージのあまりいうことを聞いてくれない体を無理やり動かし立ち上がる。
「ほう……。まだ立つか。できれば沈んでいてほしいのだがな」
「はっ……冗談ポイッやで。せっかく勝ちの目が見えとんのに、逃げる必要がどこにあんねん」
シシンが不敵に笑いながら、視線を走らせると同時に、
「高々留学生を沈めることを優先し、私を無視したこと……後悔しなさい。第六の教師!!」
前庭を無数の星が煌々と照らし出した。
「この私はクラス5ですのよ?」
たった一人で数千人近い軍勢の殲滅が可能とされる……学園国家最強戦力。もはや己の能力を阻むものは何もない状態で顕現した彼女を止めるものは、誰もいない。
シシンはそう思い不敵に笑う。
だが、
「格好いいセリフを言っているところで申し訳ないが……レインベル。ついさっき、第一学園都市から通達があった」
教師はその光景を見ても、恐れ一つ見せることなく光を纏った令嬢へと視線を向けた。
「貴様は今日限りでクラス4に降格……」
「っ!!」
「は?」
山邑女史から告げられた信じられない一言に、レインベルは顔に明らかな絶望を、シシンは間抜けな声を上げ思わず刀を取り落しかける。
「もう……帰らなくともいいそうだ」
「あ……」
そして、痛ましそうな色を含んだ視線を向けた山邑女史の最後の一言を聞き、
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
レインベルは目から涙をこぼし、先ほどまでチャージしていた無数の閃光を解き放った!!
「なっ!? ど、どういうことや!!」
閃光弾でも炸裂したのかと思われる圧倒的な光の嵐。それに目を焼かれないように、シシンは必死に両腕で目をかばいながら声を上げる。
そして彼は見た。
「どういうこともそういうことも……言葉通りだ」
山邑女史は、いつのまにか伸ばしていた右手をまるで何かを掬い上げ、ぶちまけるかのような動作で手をふるい、
「こんなあっさりとした攻略法がある人材など……クラス5と認めるわけにはいかない。だそうだ」
それの動きに連動して動いた念力場が、前庭に設置されていた池の水を底にたまっていた泥ごと掬い上げ、空中にぶちまける!!
それにぶつかった数百近いレーザーは、その熱量によって空中に飛散した泥交じりの水を蒸発させながら、水による干渉を受け無害な光線へと変換された。
「まぁ、そう落ち込むな、元クラス5。ここは落伍者たちの楽園だ。案外……住めば都だぞ?」
再び防がれた己が能力に、呆然としたレインベル。そんな彼女に向かって特に何の感慨も見せない様子で山邑はコブシをふるう。
飛来する念力場。切り裂かれる風の音。それが迫ってくるのを見てレインベルは……。
「………………………」
よけようとも、しなかった。
…†…†…………†…†…
轟音が響き渡り校門が粉砕された。
そこから堂々とこの学校西の備考もうとしていたある男は、目の前に降り注いできた巨岩に少し目を見開いた後、
「相変わらず山邑女史はおっかないな……。生徒に向かって使う攻撃じゃないぞ、これ?」
男がそうつぶやいた瞬間、巨岩の向こう側からとんでもない轟音を伴った衝撃波が伝わってくる。どうやら、何かが力任せに叩きつけられたらしい。
「大方女史の能力で制裁食らっているんだろうが……無事か? くらった生徒……」
衝撃と同時に巨岩に一筋走った大きな亀裂を見つつ、男は顔をひきつらせ「ミンチになっていたりしないだろうな?」とつぶやきながら、片手を伸ばす。
「まっ……。なんにせよ、女史が忙しいならそれはそれでありがたい」
男はそう言い捨てた後、虚空で何かを握り締めるような動作をした後……グニャリ、と景色をゆがめその歪みの中へと消える。
それはまるで……空間そのものをゆがめたような、異常な光景だった。
…†…†…………†…†…
「いい加減勘弁していただけないでしょうか? 暗部の腐れストーカー様。私は天草と縁を切った。何度も何度もそう言っているはずです」
自分に向かって飛来する弾丸に、明確な狙いをつけさせないため辷り足で高速移動を行い続ける黒江。
そんな彼女の速度に少し驚きながら、東はしつこく引き金を引き続ける。
「何度も何度も返答はしたはずですが? たとえそれが事実だったとしても、我々暗部連としては、元スパイのあなたを信用するわけにはいかない」
天草最暗部。存在しないこととなっている、六つ目の宗派《忍道》をつかさどる一族《冥菊》。それが黒江の正体だった。
彼女は日ノ本の動向を調べるために、数年前に天草から侵入してきた7人の忍びのうちの一人だった。しかし、侵入すると同時にそれを感知していた東の手によって配置された、急襲部隊によって襲撃を受け、あっさり仲間とはぐれてしまった。
しかも、彼女たちがあっさりと迎撃されたことを悟った天草は『そんなものは知らない。うちの宗派でないのなら、どこか違う組織の物の可能性がある』と平然と彼女たちを切り捨て、その援助を打ち切った。
敵地にて孤軍奮闘となってしまった黒江は侵入した忍びの中でも最年少だったため、侵入先の第一学園都市から逃げることもできず、日々東が送ってくる追撃部隊と戦い続けるしかなかった。
当然そんな生活が長く続くわけもなく、精も根も尽き果てた彼女は小さなミスをおかし、追撃部隊にボロボロにされ、何とか逃げおおせたはいいものの裏路地で気を失ってしまったのだ。
そこをたまたま通りかかったレインベルに拾ってもらい、天草から彼女へと忠誠を移し現在に至るわけだが……。
答えを返した東は、発射した弾の数を数えていたのか、弾切れを合図する引き金の空引きをする前に、即座にカートリッジを射出。凄まじい速さで体を回転させる!!
「なぜそれで再装填が可能なのですか……っ!!」
その回転と同時に、回転を行ったことにより発生した遠心力によってコートの隠しポケットから一本のカートリッジが吐き出される。それを視認した黒江は、思わず舌打ちを漏らしながら辷り足を用いて、東を肉薄。先ほどのような曲芸じみた再装填が行われる前に、東の懐へ飛び込もうとするが、
「っ!!」
背筋を走った凄まじい悪寒が彼女の足を止めた。
懐から高速でとりだしたクナイを前に構える黒江。それと同時に、凄まじい衝撃が構えたクナイを襲い、粉砕。クナイを砕いたなにかは、彼女の肩をかすめそこからわずかな血を飛び散らせた。
「もう一丁!?」
黒江があわてて後退しながら回転の途中にある東を見つめると、そこにはたしかに手のひらサイズの小ささでありながら、硝煙を上げ弾丸を発射したと主張する小さな拳銃が握られていて、
「はい。装填!!」
それと同時に空中をわずかな時間漂っていたカートリッジが、東が回転する動きに合わせて横なぎに振るっていた銃の装填口へと見事に吸い込まれ、カチャッとロックがかかった音を立てる。
「っ!!」
「ほら。踊りなさい」
再び襲いくる銃弾の乱舞。
先ほど放った霰で彼女が保有する手裏剣はもうない。先ほど使ったクナイも日ノ本ではそれほど用意できない特殊な武装だ。いつまで続くかわからないこの戦いで使い切ってしまうのはもったいない。
だったら、
「土遁・重荷壁!!」
魔術を使う。
この戦いが始まる前に、黒江が事前に結んでいた印は38。そのうち12の印を組み合わせることによって、現状最高の防御力を誇る術を彼女は発動させた。
地面の中から次々に突き出てくる巨大な土壁。その数なんと13枚。
硬度は土そのものだが、厚さ30センチの土壁が突然それほどの数でてくれば、さすがに弾丸は貫通できない、
「貫通できないと? それはクラス5をなめすぎですね」
わけがない。言われるまでもわかっている。黒江は壁の向こうから聞こえてくる東の失笑と発砲音にそう返し、即座にその身を反転! 裏庭のある場所へと逃げていく。
それと同時に、壁を突き破り27の弾丸が、黒江が今までたっていた場所を貫いた。
その弾丸が突きでてきた痕跡を見て、黒江は思わず舌打ちを漏らす。
(やっぱり……術式上どうしてもできてしまう、もろいところばかりが貫かれている!!)
重荷壁は土を材料にしている以上、含有されている鉱石や、ごみ、砂の種類によってどうしても一部もろいところができてしまうのだ。
幸いなことに、そのもろい部分は見た目、他の強固な部分と全く変わらないためめったに看破されるような弱点ではないのだが、このクラス5は平然と見切りそこだけをピンポイントで狙い撃ってきた。
「流石……感知系能力の最高峰《全知認識》!! 全知全能の呼び声はだてではないということですか!!」
「全能は余計ですよ。僕はあくまで《千里眼》の能力者。できることはすべてを知るところまでです」
千里眼……《透視》《遠視》の二つの能力をまとめた能力名であり、知覚系能力の最高峰だが、この男の能力はそんな生易しいものではない。
五感強化。これこそが東に与えられた千里眼の正体だった。彼の肌は数キロ先の空気の動きを感じ取り、鼻は一千キロ近いにおいすらかぎ分け、聴覚は嗅覚と同距離ほど先の音すら広い、視力は軽く3千キロを先の物すら映し出す。
ゆえに彼に与えられた名前は千里眼などという生易しいものではなく《全知認識》……すべてを知り、確認する能力と呼ばれた。
当然のごとくやってくる情報量はすさまじいのだが、ある例外を除き彼に与えられた能力を使うための演算速度は、通常の超能力者の1000倍というでたらめな数値。これほどの演算能力があれば、能力が提示してくる情報など平然とさばききることができる。
だからこそ彼は、日ノ本を代表するクラス5としてその名をとどろかせているのだ。
「戯言を……。すべてを知ればすべてのことができるでしょう!!」
「いや~。それがそうとも限らないんですよ。私の能力は完全に科学方面に特化しているせいか、化学的現象やら超能力が発動する予兆とかは感知することができるんですが、あなた方が使う魔力の流れや魔法発動の予兆とかは認識できないんですよね……」
だからこそ、学園国家最強の感知系能力者はこれほどまで執拗に黒江を狙う。自分に知られず、誰にも知れず学園国家のトップを暗殺する準備をできる魔術師の暗部を、徹底的に。
「疑わしくは罰するなという言葉がありますが……現実はそんなに甘くないですしね」
疑わしきは罰します。自分が作り出した土壁を放置し、自分に向かって背を向けてとんでもない速度で逃げていく黒江。彼女が裏庭に設置された小さな体育倉庫に逃げ込むのを見て、東は口元を吊り上げ、一歩一歩歩みを刻み体育倉庫に近づいていく。
それを土壁の向こうで息をひそめ、忍術で姿すら隠した黒江はジッと伺い見つめ続けた。
ド派手な土壁作成の忍術によって東の視界を一瞬だけさえぎり、分身の術によって生み出した自分の分身を囮に使い東をかく乱。自身はありとあらゆる感知系魔術をだましきる、《透明化》の術によって姿を隠す。
《幻影》と冥菊では言われた黒江の十八番忍術だった。壁を貫く弾丸に関しても、壁のもろいところだけをついてくるのだからその軌道を予想することはずいぶんとたやすい。だからこそ彼女は、この作戦を成功させることができた。
彼女はもとより戦闘用の忍者ではなく、逃走系忍術に長けた情報収集用忍者だ。普通の戦闘よりも、こうして自分の存在を隠し逃げ切った方がまだ生存率は高い。
幸い、昼休みが終われば教室に帰らない私を不振がってあの化物教師たちが捜索を始めるはずです。そうなれば彼は撤退せざるえないはず……。いくらクラス5とはいえ、暗部仕事中に一般人に見つかることは避けるはずですからね……。と、黒江は気づかれない程度に小さく息を乱しながら、打算じみたこの勝負のおとしどころを考えていた。
決着をつけるといったくせに、本当の目的は再びの逃走。だが、彼女にとってこの行いは卑怯なものではない。忍びとは元来《生き残った者が正義》というシビアな信念を持つ魔術宗派なのだから。忍びとしてのこの判断はとても正しいものだった。
だが、彼女は侮っていた。
日ノ本最強と言われる、クラス5の実力を。
「とりあえず……ここならあたるかな?」
『? どうしたのでしょう……』
東は黒江が逃げ込んだ体育倉庫からだいぶ離れた場所で足を止め、
「さて、不意打ちタイムだ、御嬢さん」
目にもとまらぬ速さで体を旋回させ、黒江の本体がいる方を振り向き銃の引き金を引いた!!
「っ!!」
「魔術の予兆や魔力がどんなふうに消費されるのかは感じ取れないけども、魔術が世界に与える変化ぐらいは感じ取れるんだよ。君が立っているそこ……光が不自然に曲がっているぜ?」
東の口元に浮かぶ凶悪な笑みを、黒江は見る余裕がなかった。
恥も外聞もなく透明化の術式を解き、無様に地面に転がり弾丸を回避しようとする黒江。しかし、その行為すらすでに予想済みだった東は、黒江が倒れる方向にすら先読みして事前に放っていた弾丸を配置している!!
「チェックメイトだ。なかなか長く逃げ切った方だと僕は思うよ?」
黒江の視界いっぱいに、無数の弾丸が襲い掛かってくる。
終わった……。黒江の思考にそんな言葉がかすめ、自分の現在の主の顔が思い浮かんだ。
「申し訳ありませんお嬢様……。あなたが再び笑うところを、私は見られそうに……」
黒江が泣き笑いのような表情を浮かべ、欠陥魔法使いと戦っているはずのレインベルに謝罪の言葉を告げかけたときだった、
「人の学校の裏で何やってんですか、コラ?」
粗雑で乱暴な言葉と共に、
「なっ!!」
「ちっ……ぎりぎりアウトでしたか」
真紅の髪を持ちグラサンをかけた、救世主が黒江の前に現れた。
「お前ずいぶんと命知らずだな……。この学校にはGTAっていう化物がいるんだぜ?」
その救世主は、まるで弾丸が見えないかのようにその身を黒江の前にさらけ出し、その弾丸をその身に受けて、
「うそ……」
肌に弾丸が触れた瞬間、火花を散らしながらその弾丸をはじき返した!!
「……能力、ではありませんね。超能力発動の際の特殊な力場が感知できませんでした」
「あぁ? そんなもんあんの? 授業じゃ聞いたことないな……」
その光景に、救世主は特に驚きも示さずさも当たり前だといわんばかりに、飄々とした態度を取りながら、
「で……そんな学校では絶対教えてくれなさそうな知識を持っている、あんたはいったい何者なんだよ?」
青いサングラスの下にある瞳を鋭く細めながら、救世主――丁嵐健吾は、学園国家最強を睨みつけた。




