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インモータルッ!!  作者: 小元 数乃
第一部 おふざけはここからや!!
10/21

9話

 いったいなんなんですのあの態度は?


 レインベルはそう思いながら、駆け出した自分とシシンを敬礼して送り出す三人の審判を思い出しながら首をかしげた。


 いくらなんでもあの悲痛な雰囲気はおかしいでしょう?


 内心を疑問で埋め尽くしながらも、レインベルは足を止めることはなかった。


 能力的にあまり動く必要がないレインベルではあったが、さすがにエリート校出身ということもあってそれなりのトレーニングはしていたようだ。


 きれいなフォームで走る彼女の速度は早く、空砲がなった瞬間まだ何か審判に行っていたため出遅れたシシンに、開始早々大きく差をつけている。


先ほどシシンの目を襲撃した砂だらけのグラウンドを早々に抜け出し、校門へと続く花が完全に散ってしまった桜並木が並んだ前庭を通過。早くも表の校門前へとたどり着いていた。


 しかし、


「おや……ここしばらくはいなかったのですが、外出ですか?」


 そこでレインベルを呼び止める声が一つ。


「ええそうです。門を開けてくださらないかしら?」


 さすがにいいところの教育を受けていたレインベルは声の主を無視することはなく、ぴったりと閉じた鉄の校門の前に立ち止まり、その傍らに設置されていたパイプ椅子に座った声の主に丁寧に依頼する。


 だが……。


「申し訳ありませんが、校則で昼休み……というか、授業カリキュラム時間中の学外への外出は一切禁止されています。あの混雑する食堂で昼食をとれっていうのは至難の技だとは分かっていますが、外出の許可はできないので、お引き取り願えませんか?」


 声の主……眼鏡と七三分けが特徴的な真面目そうな雰囲気を放つ、スーツ姿の教師の発言にレインベルは思わず眉をしかめる。




…†…†…………†…†…




 シシンは前庭の桜の木の上に上り、その木陰に隠れながらレインベルと、苦笑を浮かべながらレインベルの要望を封殺する真面目そうな教師のやり取りを見ていた。


「あ、あれが噂に名高い関門……《GTA》かいな」


 シシンの脳裏には昨夜作戦を練る時に、信玄が冷や汗交じりに語ってくれた《GTA》の説明が思い浮かぶ。


『《GTA》。つまり《グレート・ティーチャー・アサルト》。某有名漫画からとられたこの呼称を持つ教師たちは全員クラス3以上の能力者で生活指導員をしている人たちなんだな。ちなみに僕とシシンのクラスの担任もこれなんだな』


『彼らは校則を順守させるためなら多少の体罰はやむなしという信念のもと能力をふるい、生徒たちを戒める。その戦闘能力はもはや某野菜人級なんだな!! 長年能力を使っている分能力制御の制度が半端ない上に、その長であるうちの担任はクラス5を打倒したなんて都市伝説がまことしやかに流れる怪物なんだな!!』


『彼らは『成績悪いんだからせめてサボリはやめてよね?』という校長の発言を順守させるために、授業時間中の生徒たちの学外の出入りを固く禁じているんだな。食堂があんなに混雑しているのに生徒たちが外に食べに行こうとしないのもそれが原因だったりするんだな……』


『いいんだな? もし明日の勝負で学外から出るのをGTAの誰かに止められたら、まずは笑ってごまかして違うところから出られないか探るんだな!! 校門から出ようなんて考えるんじゃないんだな!! 校庭を囲っているネットから出るくらいの勢いで行くんだな!!』


 ちなみに校庭を囲んでいるネットは40メートルほどの高さがある金網だったためシシンはこれを上るのは最後の手段にしていたりする。


 だがそれは、そんなやたら時間を食いそうなことをした方がまだGTAと戦うよりも、学外脱出の成功率が高いということを指し示しているに他ならない。


「GTA……いったい何者なんや!?」


 そして生徒にそこまで言わしめるとかどんな外道……あ、そういうたら昨日紅葉が人間テルテル坊主にされとったような……。


 昨日初めて教室にはったのと同時に見た、紅葉の哀愁漂う背中を思い出し、シシンは大いに顔を引きつらせる。


 そして、


「わたくしが通せと言っているのが聞けませんの!?」


「聞けませんね。たとえあなたがクラス5であったとしても、あなたは生徒で僕は教師だ。僕はあなたに守らなければならないものがあるということを教える義務がある。べつにあなた自身がいかなくてもよいでしょう? なんなら僕がひとっ走りして買ってきますよ?」


 だんだんイライラが現れてきたレインベルの声と、あくまでニコニコ笑いながらもジリジリと迫力を増してきている男性教師の声が、隠れているシシンの鼓膜をたたく。


「冗談ではありませんわ!! 私は今勝負中です! そのような他人頼りなマネはできませんの!! いいですわ。あくまでどかないというのなら……押し通らせていただきますわ!!」


 先に戦端を切り開いたのはレインベルだった。彼女がいら立ち交じりに懐から扇子を取出し広げるのと同時に、彼女の周囲に突然ピンポン玉ほどの光球が現れる!


 その数は瞬く間に増えていき、10……100……1000と凄まじい光球が瞬く間に彼女を中心に展開されていった!!


「あれが《弾幕皇女(ガトリング)》の能力……!!」


 シシンはその光景を見てあんぐりと口をあける。弾幕どころの話ではない。それはまるで、綺羅星の光を放つ軍勢。光がないところがないといっていいほどの圧倒的な星の大軍!!


 その一つ一つが必殺の威力を持つレーザーへと変換されるその光景は、見る者を圧倒し、対峙するものを絶望させるには十分な威圧感があった。


 だが、


「申し訳ありませんが……あなたが転入してくるという話を聞いたときに、その能力の攻略法はできていますので……」


 唖然その光景を見ていた、シシンの耳に教師の口から吐かれたとんでもない言葉が入ってきた!!


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