普通の人間
人間に化けるヤツらが悪なのか、はたまた笑顔を作って普通を演じる人間が悪なのか、そんな哲学的思考が衛星みたいにぐるぐる廻る日常に僕らはいつも、一足遅れていたのかもしれない。
「女のくせに僕とかきっしょ~ww」
「てかあいつ暴力振るうんだって~こわ~いw」
僕は学校で浮いている。鈍感な僕でもわかる。でも周りの人間に合わせるために自分を押し殺して過労死してりょうしんみたいにはなりたくないし、他人に合わせるとか正直ばからしいなと思う。
、、、、、、だから浮いちゃうんだけどね。僕を突き刺す冷たい視線を無視して息の詰まる教室から駆け出した。外に出るとうっすら紺色のベールがかかった偽物の夕焼けが輝いていた。そう。僕らは本物の海と空、雨と雪を知らない。ここは地球の地下深く。なんでも祖先たちが調子に乗って事故優先で行動した結果、地上にいられなくなったのだそう。、、、そう思うと多少周りに合わせたほうがいいのかもしれない。
足を前に前に出して今日もくだらないことを考えていたら家についていた。教会だ。周りに合わせすぎて死んだ両親の代わりに僕には優しいマザーがいる。どっちかっていうと聖母かもしれない。今日も家に足をふい見れればその聖母のようなほほえみで僕を見てくれるはずだった。、、、、、、違和感があった。
鼻をつんと刺すような異臭。嗅いだことのない独特で、異国のスパイスを全部めちゃくちゃに混ぜ合わせてゥさらせたみたいなにおい。マザーはインド料理なんて作らないし、帰った時の優しい「おかえり」がなかった。気づいてないのかとキッチンに向かって驚かせようと思った。キッチンに近づくほどにおいは強く、僕の感覚を狂わせた、、、マザーもろとも。そこにあったのは優しい瞳がなくなってしまったマザーだった何かで、目がそこから離せなくなった。安物のゼリーみたいな固形になり切れないぷるぷるした体をした生命体。少し透明がかっていて二本の触手が僕の大好きなマザーをつかんでいた。
、、、、、、まるでマザーが僕にくれるはずだった優しさを横取りされたみたいで、気づいたらそいつに向かって脚が動いていた。そいつの三日月みたいなムカつく口と、マザーが一緒になっちゃう前に。
僕はかんしゃくを起こした子供みたいに制御不能になってただ感情のままに手を突っ込んだ。生暖かい固体が手にあたって、それを握りしめた。そこが弱点だったのか何なのか知らないがムカつくあいつはマザーと一緒に消えてしまった。僕はしばらく少しぬくもりの残ったあいつの結晶を握りしめて呆然としていた。、、、、、、こういう時、どういうところに通報するべきなのだろうか?猟友会?警察?
、、、、、、無難に警察に電話することにした。
「こちら110番です。事件ですか?事故ですか?」
「えーーっと、たぶん事件だと思います。変な生き物が私の生き物を殺しました。」
「、、、、、、、、、ハイ?すみません。もう少し詳しく情報を教えてくれますか?落ち着いて話してください。」
あの後、なんやかんやでパトカーがきていろいろと調べていった。その日は初めてホテルに泊まった。
「、、、、、、なんなんだろ、これ」
僕は疲れ切ってベットに仰向けであいつの残した結晶をただひたすらに眺めていた。どこか不透明ではっきりしない色を見ているとおちつくというか不思議なきもちになった。その日は記憶にないけどねを利してしまったらしい。翌朝は学校が終わる時間に起きてしまった。スマホの振動音が部屋に響いていた。
その振動音とかぶさって誰かが扉をたたく音が聞こえた。昨日の取り調べである程度は話したんだけどな、、、、、、。水分不足でけだるい体を引きずって扉を開けると、バリキャリ感あふれるお姉さまが立っていた。きっちりと閉めたネクタイとブラウス。はっきりとした黒と白で完全に目が覚めた。
「こんにちは。私、警察ではないのですが、昨日の件についてお伺いしたいことがありましたので。」
政府の機関だか何だか言っていたのでとりあえず部屋にいれることにした。
「、、、、、、のに事情聴取からなんでその政府の機関とやらにさそわれてるんですか!」
「あら、いやでした?でもあの生命体を知ってしまった以上、そういう規則でして。」にっこりとほほ笑むお姉さまに恐怖をかんじた、、、
「それに、一般人がアイツを単独討伐なんてうってつけの人材ですから」
「、、、えーと、さっきから討伐だとかなんとか言ってますけど、結局昨日のアイツはなんなんですか?」
「それを聞くならあなたは組織に入るしかありませんよ?、、、まあもともと選択肢なんてありませんけど」
「じゃあはいります。なんか楽しそうだし。」
「よろしい。では、荷物をまとめてついてきてください。あなたは今から表には帰れない。政府の手ごまとしてあいつらと戦っていただきます。」
そういってお姉さまはハイヒールをカツカツ響かせながら姿勢よく歩いて行った。その背中を追いながら状況整理するので精いっぱいで、気づけば変なところについていた。扉にはアイツの口みたいな三日月が描かれていて、扉を開くと十数名のだいたい同い年くらいの少女たちがいた。
「それでは、危険生物討伐部隊、ミカルシスにようこそ。私たちはあなたを歓迎します」
、、、なんで来る道をちゃんと見ておかなかったんだろう。




