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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

キャラクター設定をランダムにしたら隠密特化になったので、暗殺者として世界最強を目指します

作者: みかんの実

それは、雪が降っていた夜のことだった。


私が住んでいる地域では雪が降っていることがめったになく、一年に一回あるかも怪しいほどだった。


夜中だったと思う。

無性にお腹がすいて、コンビニにカップラーメンを買いに行っていた。


信号はちゃんと見てた。青信号だったことを確認してから渡ったし、走っていたわけでもない。


本当に運が悪かったのだと思う。

道路に氷が張っていて、対策もしていない車では止まりきることができなかった。

その車の先に、私がいた。


吹き飛ばされる体。

別に鍛えてもない、弱弱しい体が耐えられるわけがなかった。


地面に打ち付けられた体からは自分の血がとどめなくあふれ出ていて、生ぬるいそれに自分が使っている現状だった。


音も聞こえない。痛みも聞こえない。

視界はどんどん暗くなっていく。


最後に感じたことは......いや、私は、最後、何も感じていなかった。

昔から、感情が動かない子といわれて育った。

人の痛みを分かる子になりなさい。と言われてたけど。


この状況でも動かない自分の感情に少し驚いただけだった。


♢♢♢


「あなたは不幸なことに、亡くなってしまいました。まだお若いのに。」


真っ白い空間に出た。

声は聞こえるものの、私以外がこの部屋にいる気配はない。


感情がこもってない平坦な声でナニカは続けた。


「私は神です。あなたを不幸に思ったので、私の管理している異世界で転生させてあげることにしました。」


「あなたが転生する依り代......キャラクターの設定をお願いします。」


私の前に生み出されるウィンドウ。


空中に浮かんでいるタブレットといったところか。

一ミリもないような薄さだけれど。

画面の中には私が過ごすなるであろうキャラクター設定が細かくかかれていた。


キャラクター設定か。


キャラクターのビジュアルはもちろん、職業やパラメーターまで気が遠くなりそうなくらい多くの種類があった。


死んでしまったことに何も感情を持てていない自分が不思議だった。

死んでしまったからか、疲労を感じてはいるものの、悲しいだとか、不安だとか、そういった気持ちは持ち合わせていなかった。


正直、疲れてしまっていたからめんどくさいことは何もやりたくない。

たとえ、この先私が生きるために重要だったとしても。

一度死んでいる身だからか、あまり興味を持てなかった。


全部お任せにすることはできないのだろうか。


私は、よくわからない。これから行く世界のことを何も。

なら、いっそのこと全部お任せするのがいいだろう。


そう思った私は声を張り上げた。


「設定をすべてそちらにお任せしたい。できますか。」


声が届いているのかどうかは賭けだったが、数秒間、間が空いたものの返答が問題なく帰ってくる。


「できますよ。ただし、その場合ですと見た目は色彩程度しか変化しません。ステータスは完全ランダムに。スキルや職業はそのステータスに最も適したものを選ばさせてもらいます。」


できますよ。までしか聞いてなかったので、何やら注意している雰囲気だったが、何を言っていたのかはよくわからなかった。

まあ、勝手に決めてくれるならいいか。


「大丈夫だ。」


その一言を発した瞬間、画面の中の進行率が急激に上がっていき、瞬く間に100%になった。

全身が光に包まれる。


本当にゲームみたい。

夢だったりして。


「第二の人生をお楽しみください。私の世界は、ラノベによく出てくる"あれ"です。楽しんでくださいね。」


少しだけ含みを持った声が聞こえたかと思えば、死んでしまう直前に酷く似た、意識が飲み込まれるような。そんな感覚に陥ったのだった。


♢♢♢


起きた先はうっそうと茂った森の中だった。

服は狩人のような動きやすそうな服の上にマントを羽織っていた。


手には短剣を握らされていた。

切れ味はよさそうだ。


ピロリン。

通知音がなり、画面が表示される。


【チュートリアル】

ステータスを確認しよう。


≪詳細≫

「ステータスオープン」と唱える。


ご丁寧なことに、ステータスを開く方法も記載されていた。


「ステータスオープン」


名前 〔  〕


職業 暗殺者


攻撃力 0〔+15〕


防御力 0〔+10〕


隠密力 300


魔力  10


スキル


気配察知 筋力増加 アイテムボックス


称号


隠密の神


――――――――――


神に全部任せたから名前がないのか。

画面をポチポチと押してみるが反応はない。


スキルの効果と、称号についてなら解説はしてくれた。

どちらの効果も読んで字のごとく。


私の名前は......名乗ってなかったか。

名前がない。無記名......

そうだ。メイにしよう。

この世界ではメイと名乗ろう。


隠密が∞なことには、違和感を抱かなかった。

どういう効果かはいまいち分からなかった。


日本と全く仕組みが異なる、この世界にも。


神様が精神干渉をしたのだろうか?


【アイテムボックスを始めとしたスキルやシステムを使おう】


≪詳細≫


スキル名を唱える。


「アイテムボックス」


どこまで大きさがあるのかは分からないが、PCのファイルというイメージが頭に浮かんでくる。

アイテムボックス内には食料と水が置いてあるだけだった。


何かあるだけ、ましだろう。


「気配察知」


筋力上昇はクールタウンがあるらしいので今は使わずにとっておこう。


そう思い、気配察知のスキルを発動した。

前方に気配を感じる。


少しだけ覗いてみようと思い、気配の元をたどる。


そこにいたのは二メートルはある熊だった。

目が合った気がする。というか、確実にあった。


第二の人生も終了か。

潔くやられようと、熊の目の前に出て、目をつぶる。


いつまでたっても攻撃は来なかった。


恐る恐る目を開ける。


もしかして、友好的な熊なのか?


今がチャンスとばかりに手に持っていた短剣を振りかざす。

お腹を貫かれているようだが、熊は反応していなかった。


ただうめき声を漏らすだけ。

何度も、何度も、攻撃する。

その命を奪うまで。


流石におかしいと思い始める。


どんなに優しい人でも、「死ね」と言われて「わかりました」と素直に受け止めるようなやつはいない。

生存本能が強い動物ならなおのこと。


私の姿が見えてないのか?

隠密、暗殺者なことに関係があるのか?


なんにせよ、神にすべてを任せていて正解だったのかもしれない。


自分が強くなったのを感じる。


ラノベ風にいうならレベルアップというやつだ。


この世界はきっと、弱肉強食。


相手が硬かったら私の攻撃は通らない。

こちらの攻撃が通らなければ意味がない。


熊は前世にもいたくらいだ。

こんなおかしなシステムがある世界では弱いのではないだろうか?


強くなろう。


私の隠密だって、どこまで通るのかわからない。


来るべき時がきても、この身を守れるように。


執着していなかった死。


この手で命を奪うことで幸か不幸か、手放しがたくなってきた。


人間にも、会いたい。

私は、この世界でどれだけ強くなれることができるのだろうか。

世界最強に届けば......あの神にも会えるかもしれないしな。

そのためにもまずは熊狩りか。


私は「気配察知」を発動させ、感じた気配の方に走っていった。

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