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戯れ

作者: 一ノ瀬灯

自由気ままな姉は俺をからかって遊ぶのが昔から好きなようで、不本意ながらよくからかわれて遊ばれることが多い。その延長なのかどうか俺には分からないが、姉は突拍子もない行動に出ることが多々ある。

「遙、ちょっといいかしら」

「なに、姉さ……」

姉さんと最後まで紡げなかったのは、唇を塞がれたから。姉の唐突な行動に付き合わされるのはいつものことなので、弟の遙は受け入れた。

見目麗しく折り目正しい姉はどこにいても注目を浴びる。そんな模範的ともいえる姉が実の弟とキスをしているなんていったい誰が思うだろうか。あまねは遙の唇を啄み軽いキスを繰り返す。遙も応えるようにあまねの唇を食む。艶やかな唇がこんなにも柔らかいことを知っているのはきっと俺だけ。俺達の歪な愛は普通の人間には理解できないことだとしても、知ったことではない。俺は姉さんがそこにいればそれでいいのだから。

あまねはそっと唇を離し、遙のクセのある柔らかな髪を撫でた。さらりと梳かれるのは嫌ではないので好きにさせておく。

先ほどまでは女と男だったのに、今はすっかりその辺にいる姉弟のようなことをする。気まぐれな姉の温もりはいつだって温かく、優しく微笑む姉が好きだった。そう、昔から姉が好きだった。

「……姉さんっていつも急だよね」

遙は思ったことを口にした。やられっぱなしなのは少し悔しかったから。

「あら、遙はいやだった?」

姉は悲しげな顔をするが、そんなのは演技だと分かっているのにそうされると弱いということを知ってやっているのだからタチが悪い。

「……嫌なわけないじゃん」

「そう、それならよかった」

あまねは愛する弟に微笑みかける。美しい姉の天女のような微笑みにころっとやられる男が多いのも昔から見てきた。その実天女どころか実の弟と関係を持つ狂った一面があることなど男どもは知らないのだ。つくづく罪作りな人である。

「はあ、全くずるい姉さんだよ」

「お姉ちゃんだからいいのよ」

「意味分かんない」

それでも姉が楽しそうに笑うから、まあいっかと遙は諦めた。弟の俺にも姉の思考回路は理解できないところがある。でもそれがなんだってんだ。理解できなくても姉が笑っているのならばそれだけで十分だ。

姉さんはそんじょそこらの男や女に興味がないのは知っている。また、生きている人間誰か一人を選べと言われたら、真っ先に俺を選んでくれることも知っている。

姉弟、恋人、家族、そんなのなんだっていい。姉さんのそばに居られるなら俺はそれだけで幸せだ。たとえこの世界から追われたとしてももはやどうでもいい。

どうせ生きている人なんて、俺達姉弟は欠片も興味がないのだから。



誤字報告ありがとうございます……!

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