決してラバーペンシルイリュージョンをしてはいけない部屋
見たことあるタイトルですね。その通りです。
テンションが意味不明です。期待するだけ無駄です。
「決してラバーペンシルイリュージョンだけはしてはダメよ」
出かける直前、親友はそう言いのこした。
◇ ◇ ◇
私は、親友の家に遊びにきていた。
2人でゲームをしたり料理をしたりして楽しく遊んでいた。
明日に期限が迫っている仕事も、家のシンクに積まれている油に塗れた皿たちも、今日は忘れよう。
そう思いながら。
プルルル……プルルル……
突如、親友のスマホが鳴り出した。
彼女は着信画面を見ると顔を真っ青にし、震え出した。
「どうした?」
私がそう言うと、ハッと身支度をし、「ラバーペンシルイリュージョンはするな」とだけ言い残して飛び出していった。
「――らばぁぺんしるいりゅーじょん?」
私はそれが何か、知らなかった。
◇ ◇ ◇
暇になった。
テレビも特段面白いものはなかったし、たくさんあるマンガだってこれまで借りたことがあるものばかりだ。
仕方がない、仕事をしよう。
そう思い、私はそれまでカバンの中にしまってあった原稿用紙とペンを取り出した。
――そう、私の仕事は小説家。
それも、今の時代でもペンで執筆するという、アナログすぎる小説家だ。
ちなみに、書いたものを担当さんがデジタルに起こしてくれる。
さて、次の展開はどうしようかな――
結構考えたが、良いものが思いつかない。
ペンを回して、耳に挟んで、指で摘んでブラブラさせて――
「あれ?」
何か、ペンの先から煙が……
そう思う暇もなく、ペン先から見覚えのある顔がのぞいた。親友だ。
「執筆してください」
――どうやら親友は、担当さんになってしまったらしい。