第6話 子どもが起きていたい夜
「店を閉める」
店長は唐突にこう言った
大家のババアが転んで足が痛いから車で病院に行くらしい。
新年早々なにしてんだババア
「急いでる、着替えたら合鍵を使って戸締りしろ」「鍵はポストだ」
(過保護なこって…饒舌っすね…俺には必要最低限も話さないくせに)
俺がボヤいていると、店長はもう店にいなかった
店長が居ない店なんて初めてだ…自販機みたいな奴が居ないと広く感じる
(帰るっすか…いや帰りたくねぇっす)
母さん起きてるっすかね…0時過ぎるまでどっかで時間つぶすっすかね
ガタン!店の外で大きな音がなった
(嘘だろ…えっこんな時に物盗りとかじゃないっすよね!!!)
俺は恐る恐るだけど勢いよく扉を開けた
誰もいなかった、倒れた看板だけがあった……
いや腰より低いところに頭があった
「子ども………?」
子どもと関わりがない俺には年が分からねぇっすが小学生くらいのちっこいのが居た
「ごめんなさい……」
ガキはそう言った
「おばけビルだと思って、たんけんしてたら、看板たおしちゃった」
(…おばけビル……?雑居ビルだっつの)
「つか、ガキがこんな時間に何してるっすか!もう19時っすよ」
「おうちにとっとと帰るっすよ!!」
俺は優しくメっ!とガキに注意してやった
すると、さっきまで謝ってたガキはなぜか不機嫌になった
「まだ帰らない!!!」
そう言って店に入り、ソファのあるテーブル席に座った
「おいっ!今まずいっす!」
……ガキをBarに入れたなんて店長に殺されるかもしれないっす!!
「お前の母ちゃん心配してるっすよ?父ちゃんも帰ってくるっすよ」
「帰らないと心配させるっすよ」
俺は今度は優しく声をかけた
「心配しないよ…二人ともけんかするのに忙しいもん。りこんするって」
「おれのことなんかどうでもいいんだよ」
(………………)
俺の両親は別れてくれなかった
酒を飲んでは殴ってきた父も酔って転んで頭を打って夏にしんだ
…とっととしんでくれたのが不幸中の幸いっす
「離婚する方がよっぽど愛があるっすよ」
俺はガキに向けて吐き捨てた
「兄ちゃん、俺より子どもだね」
(……はっ?ガキが何言ってるんだ、はった押すぞ)
「おれ!りこんしたら母さんと引っ越すんだ…だから俺の街、さいごに探検できて楽しかったよ」
そうガキは言った
「………そんじゃまっ!探検お疲れ様っす!」
俺はそのガキの顔を見てたら、何も言えなくて
「冒険おわりに飲むっすか?」
俺は冷蔵庫から勝手にりんごジュースを取り出した
「……うん!」
甘くて、罪の味がした