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第4話 バイトがバイトに来た夜

暑い…めっちゃ暑い


世間は夏休みまっさかり、俺もニートまっさかり

うだるような熱帯夜だった


まるで熱い海の中にいるクラゲみたいだ

水の中にいるのに、カラカラに乾いていくみたいな

…心はとっくに乾ききってるのに


「高いところにいきたい」

唐突にそう思った

何があるわけではない、目的はない、けども、

太陽に一番近い痛いところに行きたかった


目の前に見えた雑居ビルに飛び込むように入った

ガン、ガン、ガン…階段を登っていく

俺の目の前にはなんか看板みたいなものが見えた

「Bar…すか?」

後半のなんちゃらはよく読めなかった

いいかもな…こういう時こそ1杯…


店の扉を開けると…ヤクザがいた

「…………」「…………いらっしゃい」

自販機みたいな体格のヤクザ…みたいな男がカウンター奥にいた


ヤクザだろうと、俺は客っす!!!!

いつもの軽口をくるくる回しながら俺は言った

「暑いっす!モヒートとかあるっすか?」

居酒屋で何度か飲んだことのある酒の名前を俺は口にした

「……あります」

自販機みたいな大きな体から、小さな声を出して、

そいつはモヒートを作り始めた


やっべぇっ、いま俺ヤクザに酒を作らせてる

そう思ったらなんか楽しくなってきた……


Barの椅子はドラマでよく見る座高の高い丸椅子だった

(…俺こういう椅子嫌いっす。尻がむずむずするんすよね)

俺は椅子に座らずにカウンターに背中を預けながら話し始めた

「この店客いないっすね」

「しかも地味っすね」

「儲かってるんすか」

ヤクザみたいな男は…俺の言葉には反応せず目を伏せながら酒作りを続けていた

「俺?俺はねぇ…金ねぇ!学歴ねぇ!仕事もねぇ!っすよ」

ついでに家族も……いや

勝手に回る口、いつもそうだ口だけは勝手に回るんだ


(…口だけ回して中身がねぇから、いつも勝手に自滅するんだ)

今の俺ってセミみたい。鳴いて、鳴いて、鳴いて…そして


「うちで働くか」

目の前から何か聞こえた

目の前の…ヤクザから声が聞こえた

俺は動けなかった

ヤクザの眉もピクリと動いている。目がすこし開いた気がした

まるで…ヤクザも驚いたみたいに


「えっと…ちなみに給料っていくらっすか?」


なんか渇きが和らいだ気がした


俺はいつの間にか出されていたモヒートのグラスを手に持ち、一気に飲んだ


モヒートのカクテル言葉:心の乾きを癒して

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