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オロチ討伐戦

(本当にムカつく。私の魔法が生半可な攻撃? そもそもこのヘビのせいで私が舐められてるんじゃない。一撃で首を吹っ飛ばしてあげる)


「万物を消し去る四元素による闇 闇の深淵(ダークネスアビス)


 オーレリアが詠唱が完了して魔法を発動させる。火、水、風、土の四元素をそれぞれ4つの魔法に発現させて超圧縮。超圧縮され続けた結果、超高密度の漆黒の球体が出来上がった。

 世界を構成する四元素とは異なる元素である光と闇。それらを扱える魔法使いは大賢者であるマクスウェル、ニュクス、オーロラの3名しか現在までで確認されていない。歴史に名を残すほどの魔法使い達でしか使えなかった魔法をオーレリアは使うことが出来るのだ。

 だが、そんな魔法も普段使用している杖では耐え切れずに壊れてしまう。オーレリアの魔法と魔力に耐えられるだけの杖は、神器である神杖 終焉の杖(エンドオブザワールド)だけである。魔法発動と同時に輝いていた杖が少しずつ魔力の輝きを失い落ち着いていく。


「この魔法はかなり魔力を使うから嫌なんだけど、私を本気にさせたから特別に使ってあげるね~。まぁ、もう聞こえないか。首から先が無くなってるし」


 漆黒の球体がオロチに触れた瞬間、そこから黒い塵となってオロチの体が徐々に朽ち果てて行った。痛みと苦しみでもがきながらオーレリアに最後の一撃を喰らわせようと攻撃を繰り出すが、時既に遅し。オーレリアの眼前にまで首が伸びた瞬間に全てが朽ち果てた。


「なるほどね~。さっきの超再生はそれぞれの頭にある魔石によって行われてたんだ。それごと消し去るほどの攻撃だったら再生はせずに頭が無くなるってことね。みんな分かった~?」

「分かってるよ。俺のところもちょうど終わった」


 アレスが剣に付いた血を拭きながらオーレリアの元へとやってくる。アレスが対峙していたオロチの頭も吹き飛んでおり、再生せずに無くなっている。それを見てオーレリアはアレスに拍手する。


「さすがはアレス~。ねぇねぇ、どんな攻撃をしたの?」

「もうマナがカツカツだから見せられない。今度見せてやるよ」

「ケチだな~。それにしても、今日の剣はそれで戦ったんだ。変な形~」

「いろいろと試してみたが、オロチ相手にはこの剣が一番しっくりくる」


 神器である神剣 無限の千剣(エンドレストランス)は、魔力を込めることで使用者のイメージ通りに剣を変化させることが出来る神器となっている。現在アレスが持っている剣は、剣と言っていいのか分からない形状をしており、大鎌のようになっている。

 それによってオロチの頭を首から斬り落としたのである。


「さて、他のやつはどうなってるんだ?」

「私たちは大規模攻撃が出来るから速かったね~。あ、ペインのところが終わりそう」

「相変わらず嫌らしいカウンターをやってるな」

「ははは、オロチも挑発で攻撃するように仕向けられてるから可哀想だね。攻撃したくないのに攻撃をしてしまってカウンターで体がドンドンと傷付けられてく。最終的には蓄積されたエネルギーを放出して終わり。Sランク魔物相手に要塞みたいに動かずに構えてるだけって頭おかしいよね~」

「確かに言えてるな」


 オーレリアの説明の通り、ペインは動かずに要塞みたいに構えているだけである。そのペインをオロチは混乱したかのように無作為に攻撃し続けている。攻撃を繰り出したと同時にオロチの体は傷付いているのに攻撃を止めることは無い。攻撃をひたすら受け続けたペインの鎧が段々と青い光を放ち始め、輝きが一番強くなったところでペインは片手をオロチに向けて前に出す。


「これで終わりだよ。逆襲の反転(カウンターリバース)


 鎧に蓄積されたダメージが魔力波となってオロチへと解き放たれる。巨大なオロチの頭よりも大きな魔力波が一気にオロチを飲み込む。

 そして、魔力波が消えた後に残っていたのは、首から先が無くなったオロチの体であった。

 ペインの神器 神鎧(しんがい) 絶対防御(アブソリュート)の鎧(アーマー)は、あらゆる攻撃に耐え、その攻撃エネルギーを蓄積する鎧である。ペインの魔法である反射と反転によって、本人はほぼノーダメージで相手を削り続けて、最後に蓄積したエネルギーを魔力に変換して一撃で決めるというのがペインの戦い方である。


「ふぅ・・・Sランクの魔物の攻撃だから受けてみたけど、案外悪くなかったね。ただ、もっと激しくて豪快な一撃だったら僕は興奮したよ。オロチの敗因は僕を興奮させられなかったことだね」

「うるさいよ変態」

「あ、オーレリア終わったんだ」

「私の生半可な攻撃が一番速かったんだよね~。どうよ!」

「さすがオーレリアだよ。残ってるのはレイア、ミリア、グレンか」

「まぁ、もう決着がつきそうだけどね~」


 最初にオロチの頭を倒したのは、ミリアであった。神速と呼ばれる彼女の速さをオロチは捉えることが出来ず、ひたすらに攻撃を受け続けるだけである。速さだけで攻撃自体は軽いからとオロチは油断していた。攻撃を受けても問題と思っていたが、その考えが甘い。


「私の神器 神刃 成長する短刀(クレッシェンドダガー)の力を知らないのによく呑気にしていられるね。私の短刀は相手の攻撃を受けずに同じ相手に攻撃を当て続けると、どんどん切れ味を増すんだよ。

 さて、今はどれぐらいの切れ味かな?」


 ミリアが攻撃を繰り出すと、オロチの皮膚が大きく切り裂かれる。先ほどまでとは違う威力にオロチは、やっと事態を把握して対処しようとする。

 だが、もう意味は無い。神速であるミリアの攻撃はどんどん加速していき、オロチの首は見事に切断されて終わった。


「ふぅ~・・・疲れた! あ、お姉ちゃんも終わりそうだ」


 目を瞑った状態で集中力を高めながらオロチの攻撃をひたすら避け続けているレイア。集中力を高め、魔力が高まった瞬間に攻撃を仕掛けるのがレイアの攻撃方法である。


「お姉ちゃんって何で目を瞑ってても攻撃を避けれるんだろ」

「空気の流れと相手の魔力を感知して避けてるんだ。ひたすらに武術を極め続けてきたからこそ出来るレイアの技だな」

「はえぇ~レイアって凄いんだね~」

「それにしても、あの技だけは僕も受けたくないね。極限まで高めた魔力から放たれる武術の一撃は痛すぎる」


 魔力を極限に高めたレイアが目を開けて神器へ魔力を流す。神器 神拳 闘究(ゴッドオブウォー)武神(アルティメット)は込められた魔力に応じて攻撃の威力が増す。時間経過と共に威力が落ちて行くのだが、魔力減少までの間にいかに効率よくダメージを叩き出せるのかが大事になってくる。

 だが、レイアは数々の武術を極めてきた。その経験値から敵を見極めて、どう攻撃していくのが最高効率を叩き出せるのかを瞬時に把握する。

 レイアの攻撃が始まる。


「はあああぁぁぁーーー!! 一撃二撃三撃・・・十六連撃! これで終わりよ! 超究覇道!」


 オロチの頭に十六連撃を叩き込み、拳を腰のところで構える。そこに残った全魔力を溜めてオロチへと放つ。膨れ上がった魔力に覆われた拳をオロチに叩き込むと、オロチの頭が吹き飛ぶ。そのままの勢いで突き進むと頭から首まで無くなる。


「これで終わりね。さて、グレンくんも終わりのようね」

限界突破(オーバーリミット)(オルター)。オロチの分析も終わったし一気に決めようか」

「はぁー・・・またグレンくんの悪い癖が出てたのね。私よりも速く倒せただろうに」

「いつものことでしょ。魔物のことが詳しい僕と並ぼうと常に魔物と戦う時に鑑定をして分析してるからね。しかも、わざわざ攻撃を見切ってから倒そうとするんだ。人間相手だったら煽り行為と言われてもおかしくないよ」

「そもそも煽り行為って言っても人間相手だったら戦いにならないと思います」

「ミリアの言う通りだな。グレンを相手にして勝てる相手がいるとしたら俺たちの誰かしかいないだろ。にしても、グレンはどこまで強さの限界が無いんだよ」


 グレンはオロチの攻撃を全て最小限の動きで攻撃を避け続ける。避けたと同時に2本の刀で斬りつける。オロチへの攻撃は苛烈さを極め、次々とオロチの傷は増えていく。ある程度攻撃を与えるとグレンはオロチと距離を取りスキルを発動させる。


「Sランクの魔物だしマナを多めに使うスキルを発動させようかな。千撃一閃」


 2本の刀を構えてスキルを発動させる。魔法とは違いスキルとはマナを使用して発動する技のようなものである。スキル発動と同時にオロチへ刀を振るう。

 以前にブレイブへと見せたように斬撃を飛ばす。だが、前のように斬撃は1つではない。一振りでいくつもの斬撃が飛び出す。高速で刀を振るい、無数の斬撃を放つ。斬撃によってオロチは細切れになって首から先が無くなる。


「うーん・・・相変わらず僕の攻撃に耐えられる神器はありがたいね」

「神器 神刀 正宗と村正か。2対で1つの神器ってのは珍しいよな」

「確かにね。能力は、使用者のステータス値によって切れ味を増す。僕に合った神器だけど、変わってるよね」


 オロチの6つあった頭が全て消し飛び、下がっていた騎士達の歓声が聞こえる。オロチの胴体だけになった状態を見て騎士たちは安堵しているが、グレンたちは気を緩めていない。むしろ先ほどよりも警戒を強めている。


「ど、どうしたんだ? 臨戦態勢の状態でまだいるようだが」

「下がってください。どうやらまだ終わっていません。オロチの胴体から魔力が消えていない」

「何だって!? あ・・・あ・・・嘘だろ・・・そんな・・・こんな魔力ありえない!」


 オロチの胴体がパックリと縦に切り開かれて中から黒い竜が現れる。幼い竜ではあるが、禍々しさを感じさせる風貌をしている。

 幼き黒い竜は紅き目を見開いて咆哮する。そして、オロチの胴体から大量に出た血液を黒い竜は全て吸収して魔力を増大させた。


「黒竜・・・そんな、伝説の・・・おとぎ話の存在じゃ・・・俺たちもいるのに!」

「これはマズイね。みんな僕の後ろへ! 排斥の領域(アンチフィールド)!」


 黒竜は口から劫火を放つ。ペインの後ろへ行くのが間に合わなかった騎士と周りの木々は全て灰となり焦土と化す。


「終わりだ・・・もう、何もかもが終わりなんだ」

「はははははは! いいねぇ、こういう魔物を待ってたんだ。さっきのオロチの頭とか歯ごたえが無さ過ぎたからな」

「アレス~私にもやらせてよ。久々に魔法の実験に出来そうだからワクワクしてきた」

「オーレリアさんもアレスさんも待って下さいよ! 私だって戦いたいんですから」

「はぁ・・・みんな何やってるのよ。私も混ぜなさいよ!」

「初めての魔物の攻撃を受けさせてくれよ。あぁ、知的好奇心が抑えきれない!」

「絶望的な状況なのにどうして君たちは喜んでるんだ?」

「僕たちは冒険者ですからね。未知との遭遇が楽しいんですよ」


 グレンたちと幼き黒い竜との戦いが始まる。

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