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動き出した計画

「レイド、オロチの侵攻は順調か?」

「ゼロ様、東のガーマイン山脈を越えたところです。騎士が何やら攻撃をしているようですが、何事もなく侵攻しております」


 黒いフードを被った人たちが広い部屋でそれぞれの仕事をしている。その中で机に置かれた地図を挟んだ状態で2人の男が話し合っていた。ゼロと呼ばれた男はフードから漆黒の宝石が付いたイヤリングが見えているのが特徴的である。


「そうか。となると、あと3日ほどで王都に到着するな。私たちの動向を追っている騎士団長達ははどうなっている?」

「現在は七大貴族の護衛に当たっています」

「何? 七大貴族の護衛だと? 私たちの計画に七大貴族の襲撃は入っていないはずだが。しかし、オロチを捉えたのにも関わらず王都から動かないだと・・・そういえば、Sランク冒険者が新たにギルドを作ったと騒ぎになっていたな。可能性としてはあるか」

「まさか騎士団が冒険者を頼りますかね? あれほど犬猿の仲ですよ」

「冒険者協会長のゲインと騎士団長のクレイヴは昔からの知り合いだから可能性は十分ある。そのギルドを調べる必要があるか」

「分かりました。すぐに調査します」


 レイドが行ったのを見送ってからゼロは椅子に座って目を閉じる。ここしばらくは計画のために寝ずで動いていたのもあって疲労が溜まっていた。目頭を指で押さえてから気合を入れ直して計画を再度確認する。万が一にでもミスがあってはならない。これは全てを変える革命なのだから。


「ゼロ様、無理をなさらないで下さい」

「アカネか。無理はしていないさ。この計画が成就すれば全てが変わる」

「はい。私たちの悲願である冒険者の解放がされるんですね」

「・・・そうだ。冒険者は自由でなくてはならない。例えどれだけ優良なギルドであったとしても冒険者から搾取していることは変わらないんだ。そんな制度を壊すために我々は王国と戦わなければならない。冒険者協会とギルドは滅ぼす」

「冒険者に真なる自由を。我が真なる解放(リベレイション)の名のもとに」


 ギルドというシステムは過去の巨大王国によって作られた。自由な冒険者達であったが、次第に好き勝手して何をしてもいいという冒険者が出てきたために冒険者協会とギルドが出来た背景がある。ダンジョンに挑戦するような冒険者ほどの強さは一般人からすれば脅威でしかなく、安心して暮らすためには必要なのだ。

 それを根本から壊すために真なる解放(リベレイション)は動く。


「オロチは現在ガーマイン山脈を越えたところを移動している。あと3日ほどもすれば王都にまで到着するだろう。動ける騎士で遠距離攻撃をしているが、足止めにもならねぇ状況だ」

「冒険者は誰一人行ってないんですか?」

「一応は依頼を出したんだが、Sランクの魔物相手に戦おうとする冒険者はいないだろうな。しかも、討伐出来ないとあっては報酬も貰えないから余計だろ」

「確かにですね。ゲインさん、ガーマイン山脈を越えた先にある大きな平原でオロチを迎え撃ちます」

「グレン達頼んだぞ」


 オロチが発見されてから1週間ほどが経ち、オロチ侵攻が現実のものだというのがハッキリと認識出来る距離にまで迫っていた。王都内では先日から西にあるファルマ王国への避難を開始するように呼びかけていた。

 オルティス王国と友好関係にあるファルマ王国へ事情を説明して避難民の受け入れをお願いしたのだ。


「失礼する」


 ゲインとグレン達がオロチの侵攻状況などを話し合っているところに1人の初老の男性と騎士団長であるクレイヴと副騎士団長のエレナが現れた。

 その初老の男性にゲインとグレン達は驚いて声を失っていた。それもそうである。その男性こそ世界最大国家のオルティス王国の王様であるからだ。


「王様!?」

「うむ。アルレイン=オルティスだ。アルと呼んでくれて構わない」

「王よ。さすがにそれでは示しがつきません」

「クレイヴ、私は王であり国を治めることは出来るが国を守る力は無い。騎士団も別件で動くことが出来ない状況である。そんな時にSランク冒険者のグレン、アレス、ペイン、レイア、ミリア、オーレリアがSランク魔物という伝説級の存在と戦ってくれると言うのだぞ。

 私は王という権威を振りかざしたくないと思った。それだけのことなのだ」

「そうでありましたか。そのような考えを汲み取れず申し訳ありません」

「よい。グレン達よ、改めてオロチ討伐に協力して貰い感謝する」


 深々と頭を下げるアルレインにグレン達は頭を上げるように慌ててお願いする。頭を上げたアルレインは、グレン達へ協力できることがあれば何でも言って欲しいことを伝えて部屋を出て行った。


「偉大なるお方だ」

「そうですね。必ず勝たないといけない戦いだ」


 神器を装備したグレン達はオロチのところへ飛空石で飛んで行くために街の入口へと向かう。そこにはブラッディハウンドの元メンバーの人たちが待ち構えており、グレン達の見送りに来ていた。


「グレンさん達、無事に帰ってきて下さいよ。またギルドが無くなって居場所が無くなるのは嫌なので」

「もちろんですよ。僕たちが勝てなきゃどっちにしろ国が滅亡しちゃうので」

「怖いこと言わないで下さいよ~」


 談笑を終えてグレン達6人は飛空石を発動させて飛び立つ。その姿をブラッディハウンドと守衛達が見守りながら祈る。この国を救ってくれと。


「グレン、見えたな」

「そうだね。思った以上に大きい・・・胴体は山ぐらいありそうだ」

「うひゃ~! あんな魔物と戦えるんですね」

「ミリア、あんまり興奮しないの。まぁ、私も強力な魔物そうで楽しみだけど」

「へぇー・・・あれだけ巨体な魔物だからか魔力量が尋常じゃないな。あぁ、一度だけ攻撃を受けてみようかな。けど、さすがにヤバそうだよなー。悩ましい!」

「相変わらずペインは気持ち悪い。ふわぁ~さっさと終わらせて帰りたい」

「おいグレン。あれって騎士団じゃないか?」

「オロチを足止めしてくれてた騎士団の人たちか。少ない人数でよく戦ってくれてた」

「だな。おーい! あんた達無事か?」


 グレン達は地上へと降りる。地上へ降りたグレン達に気付いた騎士団のリーダーらしき人が来て話をする。


「冒険者か? 今すぐにこの場から立ち去るんだ。見ての通り巨大な魔物が出現し、危険だぞ」

「僕たちは騎士団長のクレイヴさんから依頼を受けてオロチ討伐に来た冒険者のグレン、アレス、ペイン、レイア、ミリア、オーレリアです。何か聞いてませんか?」

「討伐依頼・・・すまない、少し席を外す」


 リーダーと思われる騎士が離れて宝物(アーティファクト)に魔力を通して通話をする。魔力の波長を事前に登録しておくことで任意の相手と通話することが出来る便利な宝物(アーティファクト)である。そして、通話を終えて戻ってくると、状況の説明を始める。


「クレイヴ騎士団長から話を聞いた。Sランクの冒険者が来てくれたのであれば心強い。早速で悪いんだが、状況の説明をしたいんだがいいか?」

「お願いします」

「オロチは東から侵攻を続けていて、1日中動き続けている。昼が一番活発に動いているが、夜は移動速度が低下しながらも少しずつ移動している状態だ。ずっと移動しているのを考えると、あと2日もあれば王都に辿り着く可能性が高い」

「なるほど。何か足止めとして攻撃して効きましたか?」

「いや、全くだ。魔法や物理での攻撃をしてみたが、何もダメージが入っているようには見えない」

「やっぱり物理と魔法の耐性があるのか。オロチの方から攻撃をしてきたとかありました?」

「やつは移動のみでこちらのことは一切気にも留めてない。ハエか何かがウロウロしてるなとしか思ってないんだろ」

「現状だと攻撃手段も分からずか」

「すまないな。君たち冒険者の手を煩わせて。俺たち騎士団全員が動ければもっと強力出来たのに」

「仕方ないですよ。七大貴族の命まで狙われているんですから」

「ありがとう。ところで、横にいる魔法使いの子は何をしようとしてるんだ? 何やら魔法の詠唱を行っているようだが」

「どれだけ攻撃が効かないのか試してもらおうと思って」

「先ほども言ったが魔法は効かな―――」

「多元魔法 氷嵐の槍(アイスストームランス)


 空中に20ほどの魔法陣が作られ、そこから氷の槍が出現する。その氷の槍を風魔法で威力と速度を増加させて放つ。本来であればアイスランスは、それほどまで威力と速度が高くない中級魔法である。しかし、風魔法のストームと組み合わせることで威力と速度が最上級魔法クラスへと変貌する。

 超高速の氷の槍がオロチへ放たれたと見えた瞬間にはオロチに直撃し、オロチの体に大きな傷を与えていた。

 その様子を見ていた騎士たちは皆言葉を失い目の前の冒険者たちを見るしかなかった。


「いくら精鋭じゃない騎士の魔法とは言え、傷を付けられなかったんだぞ。それなのに傷を付けた? それも多元魔法だって?

 大賢者クラスじゃないと無理なことを・・・いや、待てよ。賢者の方々が教えを乞うほどの魔法使いが最近になって現れたってのを聞いたことがあるな。

 確か魔賢のオーレリアって―――」

「グレン~疲れた~。もうさっさと倒して帰ろうよ」

「クエスト続きで休息も必要だから速く倒しちゃおうか。それに、オロチの方も僕たちを敵として認識してくれたようだし」

「あ、あ、あれが、Sランク魔物の圧・・・手の震えが・・・」

「下がっていて下さい! オロチは僕たちを標的にしました。攻撃が来ます!」

「あ、あぁ! 王都を頼んだ。あと、必ず生きて帰るんだぞ」

「もちろんです」


 オロチはグレン達を自分の敵と認識して6つの首をグレン達へと向けて対峙する。自分を傷つけるほどの敵が現れたことにオロチは警戒レベルを最大にしてグレン達を見る。


「さっきの傷はもう回復してるのか」

「恐らくは超再生能力を持ってるんだと思う。生半可な攻撃で傷を負わせてもこっちが消耗するだけで終わっちゃうだろうね」

「ペイン~! 生半可な攻撃って私の攻撃のこと!?」

「いや、そういうことじゃないんだけど・・・そうなるのかな」

「そう言ってるのと同じだよ! 久々にムカついた。本気の一撃をアイツの頭にぶち込んでやる」

「おいおいペイン、オーレリアを本気で怒らせるなよ。超極大魔法を使ったら俺たちも巻き添え食らっちまうだろ」

「そんなつもりなかったんだけどなー。まぁ、僕が防御壁をみんなに張るから大丈夫だよ」

「防御壁ごと貫通してやる」


 オーレリアの怒りに応じて魔力が上昇していく。そして、オーレリアの魔法詠唱が開始されたと同時にオロチの口からグレン達に向かって火球が吐かれる。それを全員が避けてそれぞれが6つの頭を担当する形で対峙する。

 Sランク冒険者6人とSランク魔物の戦いが始まる。

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