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ギルドのスタート

「グレンか。話は聞いているぞ。アリシアにあまり無茶なことをするなよ」

「ゲインさん、すいません。ミリアにはキツく言っておきます」


 冒険者協会の協会長室へと呼ばれたグレンは、協会長であるゲインと話していた。ギルド結成は本来であれば、受付に審査を行って合格なら結成するという流れなのだが、グレンのギルド結成に関しては協会長自ら話がしたいとのことで呼ばれたのである。


「頼んだぞ。さて、ギルドの結成だったな。にしても、お前たち6人がギルド結成か・・・。ガキだったと思ったらもう大人になっちまったな」

「ははは、おっさんみたいなこと言わないで下さいよ」

「バカ言うな。俺はもうおっさんだ。さて、ギルドの結成についてだが、なかなか難しいことを言ってくれたなー!」

「そうですかね?」

「そうだろ。Sランク冒険者で、しかも二つ名持ちが6人でギルドを結成するなんて王国内でも初のことだぞ。それ故に注目されて危険視する声も多い」

「そんなことするつもり無いんですけどねー」

「なら、ギルド結成の目的は?」

「ブラックギルド潰し」

「はぁ・・・俺たちとても違法なギルドが無くなるのは嬉しいことだが、ギルドを結成してまでそんなことをするんじゃない。お前達なら誰も為しえ無かった偉業を達成することだって夢じゃない」

「他の5人は英雄と呼ばれるほどの偉人になります。けど、僕は違う。自由である冒険者を束縛するだけのギルドを潰して苦しんでいる冒険者を救いたいんです。

 だってそうでしょ? 彼らだってギルドからしか仕事を受けれないという決まりが無ければもっと自由にいろいろなことが出来てた。なのにブラックギルドのせいで搾取され続けて抜け出せない。

 あまりにも可哀想です」

「なるほどな。お前の考えはよく分かったが、ギルドを私利私欲で動かすことだけはするなよ。ギルドはギルドにいる全てのメンバーによって支えられているんだからな」

「もちろんです。僕がブラックギルドを潰したいのは僕の夢でしかありません。ギルドにいる全ての人は自由に動いてもらいますよ」

「だったらいいんだがな。さて、ギルド結成は問題無いと俺が判断した。ギルド名などもろもろの手続きは下の受付で行ってくれ」

「ありがとうございます」

「お前たちのギルドが進む先は苦難が多いだろうが、頑張れよ。そして、困った時などは俺を頼れ。何も言わずに抱え込むのだけは絶対にするな」

「分かりました。必ず頼らせて貰います」


 グレンは協会長室を後にして下の階にある受付でギルド申請を行う。下の階で待機していた5人と合流してからギルド結成に向けての受付となる。


「ギルド名は全ての脅威(オールメナス)。ギルドへの上納金の設定は5%にして、と」

「へぇ~優良ギルド達が10%なのに私たちのギルドは5%にするんだ。グレンくん優しいね」

「まぁ、正直言って僕たち6人がクエストをやればかなりの金額を稼げるってのもある。この上納金はギルドを支えてくれる人たちへの給料だったり消耗品などに充てようと思ってるよ」

「そういうことか。流石はグレンだな。いろいろと考えてる」

「アレスさんは考えて無さ過ぎですよ。グレンさんほどでは無いにしてももっと考えて行動して下さい」

「アリシアさんをあんな方法で連れてくるやつに言われたくないな」

「え~? あれのどこがいけないんですか?」

「何が悪いのか分かって無いのも余計にたちが悪いな・・・」

「さて、いろいろと必要な書類に記入したし受付に出しに行くよ」

「そういえばグレンくん、僕たちが壊滅させたブラッディハウンドのメンバーを一時的にではあるが、僕たちのギルドに入れるんだって?」

「ブラックギルドを潰して無責任なことを僕たちも出来ないからね。それにブラッディハウンドのメンバーは幹部連中のようなクズ達とは違ってしっかりと冒険者業をしている。そんな人を見捨てておけないよ」

「実にグレンくんらしくて良いね。僕個人としてもどうするのか気になっていたから嬉しかったよ」

「ペインにそう言って貰えて良かったよ。すいません。ギルド結成の受付をお願いしたいのですが」

「はい畏まりました。ギルド名は全ての脅威(オールメナス)・・・。ギルドメンバーはグレン、アレス、ペイン、オーレリア、レイア、ミリア・・・って二つ名持ちのSランク冒険者の方々ですか!?」

「あーっと・・・あんまり大声を出さないで貰えると」


 受付の方の大声で周りの冒険者たちが一斉にグレン達に注目する。二つ名持ちのSランク冒険者は数多く無く、一般の冒険者からすれば憧れの的である。そんな冒険者が6人も集まってギルドを結成となれば騒がれても仕方ない。


「まさかあの6人がギルドの結成だって? 俺達にも入ることが出来るかな」

「いやー無理だろ。Sランクの冒険者が6人もいるんだぞ。俺達が入ったところで戦力にならねーって」

「チャンスがあるなら採用試験受けてみたいわ」

「ブラッディハウンドの元メンバー達は入るって流れらしいぞ」

「まぁ、あそこのメンバーは多かったからギルドを探すにしても難しかっただろうからな。新たに結成されるギルドだけど、グレン達のギルドなら安心だろ」


 それぞれが好き勝手にいろいろと言っている。6人は王国内の冒険者の中でも最強のパーティとされていたため、みんなが知っていてもおかしくない。

 その状況に辟易としつつもグレンは受付の人と話を進めようとする。受付の人が興奮してあまり進まないが。


「まさか王国内でも最強と言われている6人がギルドを結成するなんて夢にも思いませんでした! 私の名はクリスと言うのですが、あなた方のファンなんです!

 各地の騎士団や剣術道場を渡り歩き、鍛え上げた剣の腕は天剣と呼ばれている天剣のアレスさん!

 不動の要塞にして絶対防御を誇り、数多の攻撃からパーティを守護してきた絶防のペインさん!

 賢者すらも超え、現存する全ての魔法を扱え、新たなる魔法を創造し続ける魔賢のオーレリアさん!

 武の神から愛され、繰り出される拳と脚は魔物を一撃で屠る武神のレイアさん!

 その速さは音を置き去りにし、全ての盗賊職から憧れと畏怖を抱かれている神速のミリアさん!

 そしてそして! この5人をまとめているリーダーであり、限界を知らない全ステータス最強である全能のグレンさん!」

「僕たちの長い紹介をありがとうございます」


 グレン達の紹介を長々と受付嬢が行っていると、アリシアが見かねて話に割って入る。


「はぁ・・・クリス、しっかりと仕事はしなさい。さて、ギルド結成は問題ありません。ギルドハウスはどうしますか?」


 アリシアは受付の置くから地図を持ってきて空いている土地を提示する。そこまで多くの土地は空いていないが、それなりに立地条件が良い場所も残っている。6人は地図を囲んでどこがいいのか相談をしながら決める。

 その光景を見ていたアリシアはまだ幼かった頃の6人を思い出して胸が熱くなる。小さかった子たちがもうこんなにも大きくなったのね。


「決めました。冒険者協会からもそこまで遠くなく、周りに様々な店もあるこの土地にします」

「あら、かなりいい場所を選びましたが、かなり高い土地ですよ。大丈夫ですか?」

「ええ。ブラッディハウンドにいた時に貯めてた資金があるので大丈夫です」

「分かりました。では、こちらの土地でギルドハウスを建築しますね。建築家の方には協会の方から依頼しておきます。

 改めてギルド結成おめでとう」

「「アリシアさん、ありがとうございます!」」


 6人全員でアリシアへ感謝の言葉を述べる。それを聞いてアリシアは涙を流す。親のように6人を見てきたからこそ新たなる門出が嬉しくて仕方がないのだ。


「行ってしまいましたね。アリシアさん、心配ですか?」

「もちろん心配よ。親のように彼らを見続けてきたからね。けど、それ以上に楽しみね」

「楽しみ、ですか?」

「そうよ。だって、これからの若者が期待を抱いてギルドを結成するんだもの。今後の活躍が楽しみでしょうがないの」

「ふふふ・・・本当にお母さんみたいですね」

「まだ20代前半よ!」

「す、すいません!!」

「・・・6人とも頑張りなさいよ」


 買った土地を6人は見に行き、その大きさに驚く。貴族の屋敷が2つほど入りそうな大きな土地であり、トップギルドである白金の頂き(プラチナクレスト)のギルドハウスに次いだ大きさを誇っている。


「これは大きいな。グレン、これだけ大きいと逆に広さを持て余すんじゃないか?」

「うーん・・・その可能性はありそうだね。まぁ、いずれはギルドも大きくなるからいいんじゃないかな」

「グレンくんがそう言うなら大丈夫でしょ。早くギルドハウスが完成して住みたいなー」

「え!? レイアはギルドハウスに住むつもりなのか?」

「もちろん! だって、家とか買うお金無いんだもん」

「あー・・・そういえば、ほとんどがこの土地代とかに消えたんだっけ」

「オーレリアの魔術書とかで何とかギリギリお金はあるけど、今はちょっと厳しいかも」

「う~ん・・・けど、私の魔術書はもう無いよ~。新しい魔法も思い付いてないからね~」

「ギルド自体は出来てるからクエストは受けられるけど、どうするかなー」

「グレン、ゲイン協会長に仕事聞いてみたらどうだ?」

「ゲインさんに? どうして? 普通に受付から受けたらいいと思うけど」

「ゲイン協会長なら美味しい高難易度クエストを恐らくは知っている。それこそ受付に出せないようなクエストとかな」

「可能性としてはありそうだけど・・・まぁ、困った時は頼れって言ってたし聞いてみるか」


 こうして、その日は宿を取って次の日に協会長であるゲインのところへ向かうことにした。もちろん夕食はギルド結成のお祝いとして宴会になったのは言うまでもない。

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