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始まりの物語

「なぁ、俺達ってこれで何連勤目だっけ」


 赤い髪の男の子が質問する。


「3ヶ月ぐらい家に帰ってない気がするけど、そこから数えるのを止めた」


 黒い髪の男の子が答える。


「恐ろしい事案だよね。休みなしでも人は働けるって証明出来て嬉しいよ!」


 金髪の男の子は目の焦点が合っていないまま興奮して喜んでいる。


「私も帰って風呂に入りたい。乙女なのに臭いのに慣れるのってどうなのよ」


 青い髪を右でサイドポニーにしている女の子が愚痴る。


「お姉ちゃん、私も同じだから大丈夫だよ」


 青い髪を左でサイドポニーにしている妹の女の子がそれに同意する。


「うぅ~・・・死にたい」


 銀髪のポニーテールの女の子は絶望している。


 冒険者ギルドに併設されている食堂の一角にあるテーブルで6人の男の子と女の子が疲れ果てた様子で動けずにいた。もう何連勤か分からなくなるほど働き通しで、心身共に限界を超えていたのである。

 この世界では珍しい黒髪が特徴的な男の子は腰に2本の刀を携えている。その横にいる赤髪の男の子は背中に身長ほどの大剣を担いでいるのが特徴だ。金髪の男の子は頑丈な鎧を着込んで、巨大な盾をその手に持っている。向かい合ったところには3人の女の子がおり、銀髪でポニーテールにしている杖を持った女の子。2人の女の子は青髪で右と左で髪を結っている場所が違っており、右でサイドポニーをしている女の子は手と足に格闘武器、左でサイドポニーにしている女の子は短刀を2本持っている。

 それぞれが自分のジョブに適した武器を所持しているのである。


「もう嫌だ・・・もう無理・・・もう辞めたい・・・」

「けど、俺たちのレベルだとランク認定は低い。そんなランクだと、どのギルドも取ってくれないぞってギルドマスターのクロさんも言ってただろ」

「そう言ってたけど、僕たちに回される仕事はどれも低いランクのクエストで報酬も安いのばかり。1ヶ月頑張ってクエストをこなしても20万ゼンにしかならない(一般の人の休みもあって働いている人の稼ぎが約18万ゼンほど)。

 低ランクでレベルも全然上がらないから上のランクのクエストにも行けないまま時間だけが過ぎていく日々・・・僕たちってもしかしてだけど、負のスパイラルに入ってるんじゃない?」

「それこそありえないでしょ。私たちの報酬の一部がギルドに入ってるって言っても、元が少ないクエストばかりじゃない。数は確かにこなしてるけど、それだったらさっさとランクを上げて上のクエストを受けさせた方がギルドに入るお金も増えるのよ」

「育てる気があるギルドならそうすると思う。けど、ずーっとこのまま生かさず殺さずだったらどう?」

「そんなこと! ・・・ありえるわね」

「だろ? そこでだ、俺たちのパーティリーダーであるグレンに意見を聞こうと思う」

「ちょっと待ってくれ。いつから僕が君たちのリーダーになったんだ?」

「「今から」」

「はぁ・・・そんなことだろうと思ったよ」

「そんなことはどうでもいいから、グレンの意見を聞かせてくれよ」

「僕は―――」


 地球と呼ばれる星がある場所とは違う遠い異世界での話。この異世界では、500年ほど前にダンジョンと呼ばれる物が各地にいくつも出現した。ダンジョンには魔物が生息しており、魔物を倒すとアイテムや素材や魔石となり、階層と魔物の強さによって難易度が分けられている。そして、ダンジョンの最奥には、宝物(アーティファクト)があり、ダンジョン攻略者は宝物(アーティファクト)目当てで潜り続けている。

 しばらくして、ダンジョンの出現によって冒険者を取りまとめる冒険者協会が作られた。そこでは、ダンジョンの難易度選別だけではなく、魔物の討伐やアイテム収集などのクエストを一般の人から依頼されており、その依頼されたクエストを冒険者協会に登録したギルドへと割り振るのだ。ギルドは、冒険者協会が設立されたと同時に作られ、稼ぎの良さと冒険者としての仕事を貰えるため急激にその数を増やしている。

 冒険者協会はクエスト登録時の依頼料を収益に、ギルドは在籍冒険者がクエストを達成した報酬の一部(一般的なギルドで約20%ほど)を収益にすることで運営されている。

 最初は当然ながら健全なギルド運営が数多くのギルドでされていたのだが、少しずつ少しずつ良からぬことを考えるギルドが増え、そのギルドの後に続くギルドが出てきてしまった。俗に言うブラックギルドである。

 ブラックギルドは、冒険者が得た報酬から受け取る部分を法外な割合にしており、50%という異常に高いに割合にしている。冒険者は、クエストクリアに向けて武具の手入れ、アイテムの補充、クエストの遠征費などなどと出費は多いため、50%も達成報酬から取られると、手元に残る金額は少ない。そういった部分の福利厚生がしっかりしているギルドであれば、問題無いのだが、そうでないギルドでは地獄である。

 稼ぎが良いと言われている冒険者であったが、現在では搾取されているのもあって稼ぎは平均よりも少ないという職業になってしまった。

 冒険者協会もそのことを改善をしようとするのだが、ギルドが無くては成り立たない冒険者協会は強く言うことも出来ず、搾取され続ける冒険者は増える一方であった。

 そして、この6人の子達が所属しているギルドもブラックなのである。もっともらしいことを言ってギルドを脱退させず、低ランクのクエストばかりを受けさせることでレベルアップもさせない。飼い殺しの状態でギルドの収益を増やしているのである。


「僕は、夢があるんだ」

「「グレンの夢!?」」

「そうなんだ。それを叶えたいんだよね」

「いつも俺たちが夢を語ってる時に無いって言ってたグレンがねー・・・その夢を聞かせてくれよ」

「ブラックギルドをこの国から全て消し去る」


 グレンの真剣な表情で凄いことを言っていることに、6人は思わず爆笑した。


「あはははははは! まさかグレンくんの夢がそれだとは思わなかったわ! けど、凄くいい。私たちみたいな犠牲者を無くすためにもブラックギルドなんて無くなるべきだもんね」

「私もお姉ちゃんと同じ意見。相変わらずグレンさんはいい事を言ってくれる」

「グレンの夢を応援するよ。リーダーにして正解だった」

「楽出来るなら何でもいい」

「グレン、けどよ、その夢を達成するにはかなりの力を持たないといけないだろ? 俺たちはレベルも何もかもが弱いぞ」

「そうかなー? 僕はみんな強いと思ってるよ。他の同じレベルの人と比べてもステータス値が高いし」

「そういえば、グレンって相手のレベルとかステータスが見れる鑑定持ってたんだったな。そんなにステータス値が違うのか?」

「結構違うよ。人によってバラバラだからこれだけって言えないけど、基本的には500ぐらいステータス値が違う。つまり、レベルが上がれば上がるほど強くなるから希望はある」

「グレンがそう言うならやる気が出てきたな! 早速次のクエストを受けようぜ!」

「そのことなんだけど、僕から提案があるんだ」

「提案?」

「うん。このままだといつまで経っても変わらない。だから、ダンジョン攻略に行かない? 今月のノルマはクリアしてるからギルドからは何も言われない。ただ、クエストを受けないからお金が厳しくなっちゃう。

 だから、みんなに提案ってことなんだけど」

「「賛成~!!」」

「え? いいの?」

「パーティリーダーのグレンくんが決めたことだもん私たちは何も文句は無いわ」

「ありがとうみんな!」

「それで、ダンジョンって言ってもいろいろと種類があるけど、どれに行くんだ?」


 ダンジョンはランクがあり、F~Sランクまでで分類されている。Sランクになればなるほど難しく強敵も出てくるが、報酬もそれだけ美味しい。

 各ダンジョンに挑む際は冒険者協会へ届け出を出さなければならない。冒険者は自由なのだが、ダンジョンで冒険者が死んだ場合、武具などがダンジョンにいる魔物へと渡ってしまってダンジョンの強化に繋がるからである。

 そのため、レベルに連動したランクが満たされていなければダンジョンへ挑むことすらも出来ない。


「僕たちが挑戦できるダンジョンはFランクまで。Fランクで攻略されていないダンジョンに行こう」

「なるほど。僕たちみたいな低ランクでダンジョンに挑む者はいないからこそ手付かずのダンジョンに行って宝物(アーティファクト)を狙うって訳か。面白いね」

「そう。Fランクで見向きもされてないダンジョンにも驚くような宝はあるかもしれない。そういったのを狙って、ついでに魔物を倒してレベル上げも出来る。

 素材とかは二束三文にしかならないからそこまで期待は出来ないけど、無いよりかはマシな収入にはなると思う」

「そうとなれば冒険者協会へ行くわよ!」


 こうして6人の男の子と女の子達は冒険者協会へと向かった。この時の出来事が後の人生の大きな分岐点になっているとはグレンは思ってもみなかった。

 天剣、絶防、魔賢、武神、神速そして全能。6人は後に各職業のトップの存在となり、オルティス王国の冒険者は尊敬と畏怖の念を込めて彼らをオルティス王国における最強の対国対人対魔対ギルド兵器と呼んでいる。

 全ての組織に対して脅威とされる存在のギルド全ての脅威(オールメナス)が結成されるのは、ここから5年後のことである。

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