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絡め取られていく

今日は短めです。

連れてこられたのは王城の一の宮にある客室。フレデリックに、二人掛けのソファへと手を引かれたオーレリアは、周囲を見渡しながら座る。

賓客が宿泊するための部屋には私物があり、彼の荷物だと分かった。彼女は、護衛騎士のミオに紅茶の用意を頼んでいる横顔を見つめる。


「カルロの帰城まで時間はある。お茶をしながら話そうか」


「ええ、そうね・・・フレデリック様、自室には行かれないの?」


「・・・僕の部屋に行きたい?」


顔が近付き、美声に耳元を擽られる。吐息に肌を撫でられたことで、顔を真っ赤に染めたオーレリアは身を引いた。

見えたフレデリックの顔。いたずらが成功したかのように楽しそうな笑みを浮かべている。


「か、からかっていらっしゃるのね!」


「先程の君の顔があまりにも可愛かったから、また見たくなってしまったんだ。本当に可愛いよ、オーレリア。恥じらう君の愛らしさは僕を堪らなくさせる」


「っ!」


彼が手を差し向けると、彼女の右頬を指の背で撫でる。感触に身を震わせて、触れられた頬を守るように手で覆い、少し距離を開けた。

だが、すぐに詰められてしまう。オーレリアの肩に手を回したフレデリックは、そのこめかみにキスをした。


「少しやり過ぎたかな?ごめんね。君の反応が可愛くてさ」


「・・・もう!」


眉を吊り上げて怒るが、恥じらいからの赤い顔では説得力はなく、彼は喉を鳴らして笑うだけ。

彼女はその肩口に頭を乗せると、筋肉を感じる胸に頬をぐりぐりと擦り寄せる。抗議のつもりだったが、フレデリックには全く効かない。


「ふふっ、可愛い。こんな警戒心のない君を僕の部屋に連れ込んだら・・・」


「いや、止めておこう」と言葉を切って、彼はオーレリアがサイドに寄せて結っている金の髪に指を絡ませる。


「僕の部屋に連れて行ってもいいけど、王城にある部屋は・・・そうだな、物が一切ないんだ。必要なものは今暮らしている別宅に運んでしまっているし、使わない家具類も片付けている」


「どうして?王城は王子であるあなたの家でしょう。いつの日か帰る場所だわ」


「帰るつもりはないんだ、オーレリア。僕は君との婚約が成立したら、日を待たずして婚姻を結ぶ。婚約から長くても一年後に僕達は夫婦になる。以前も言っていただろう?」


彼女が目を瞬かせて上目遣いで見れば、フレデリックの夕日色の瞳と視線が合った。どうやら、彼はずっと覗き込むように眺めていたらしい。

言われたことを脳内で反芻して記憶を呼び起こせば、確かに以前、話していた。十一歳のときの新年祭でのこと。


「私達、十六歳になったら学園に通うことになるのよ。学生結婚になってしまうわ」


「いいじゃないか、長年婚約者だった貴族子女では偶にあることだよ。家中のことも、卒業までは従者や使用人に支援してもらおう」


「いいのかしら・・・」


フレデリックはひたすらオーレリアを見つめる。その鮮やかな色の瞳から、彼女は目をそらせない。吸い込まれそうだと見つめ返した。


「いいんだよ、オーレリア。在学中でも婚姻可能なんだ。僕達は夫婦になる。絶対に結ばれるんだ。だから、『いい』だろう?」


「ええ、『いいわ』」


言われたから従う。霞む思考に唇が勝手に動いて承諾してしまった。

すぐにハッとしたオーレリアは気が早まったと思う。視線を下げると、唇を押さえるように指で触れた。


「私・・・」


「オーレリア」


時折、思考が鈍ることを不思議だと感じて、疑問を口に出そうとした。

それはすぐにフレデリックに遮られる。名前を呼ばれたことで、意識は彼に向かう。頬に触れる温もりによって顔を上向きにされて、視線が絡み合う。


「結婚後は、ブラスの居城の側に屋敷を構えよう」


「え?」


「あの辺りは新しい村ができる。居城跡を守るために人々が集ってくることで、指導者が必要になるだろう?グリオス平原と北西部は、王家管轄の領地となっているが殆ど手付かずだ。反逆者とされたブラスを祭る人々の地域だったからね。彼らは王家に対して忌避的で、政策の否定をされることも儘ある。歴代の国王も、みだりに手を加えるべきではないとグリオスの指導者階級に統治を任せていた」


オーレリアは相槌で頷くだけ。フレデリックの瞳から逃れられない。


「だが、今回の君の発掘調査にグリオス平原の人々は協力的だった。君を含めた紫色の瞳を持つルヴァン公爵家には、対応も態度も軟化していたんだ。理由は分かる?」


「・・・紫色の瞳だから?グリオス平原の氏族の色を持つことで同族と見られた?」


「そうだよ。君の瞳の色の起源は明確だ。グリオス平原の氏族の娘であるリリアノ由来の瞳の色。リリアノの血筋が、国の重鎮となってグリオス平原に帰ってきた。彼らはそう思ったんだ。態度で示していた。コルツ町でも、発掘現場でもルヴァン公爵家を受け入れていたよ。君のこともリリアノの子孫が帰ってきたと歓迎していた」


「そうなの?」


「そうだよ、新聞のインタビューで載っていた」


「新聞?」


フッと息を吐いた彼が、オーレリアの額に唇を当てる。吸い付かれたことで、音を立てて離れていった。


「あまり読まないよね。歴史関係のものは少ない。あったとしても、君が知り得ていることばかりだ・・・とにかく、君は歓迎されていた。君がいるなら彼らは従うよ。受け入れてくれる」


フレデリックの瞳がずっと彼女を捉えている。そらしてはいけないと、思わされる。


「グリオス平原と新しく村のできるブラスの居城跡を含めた北西部を拝領しよう。君が爵位を得たら、その地帯が君の領地になる。僕がそうする。父上にも話している。グリオス平原の人々も君なら迎え入れてくれる。だから」


夕日色の瞳は細まる。笑みを浮かべているからか、オーレリアを凝視したまま猫の目のように細くなった。


「ずっとその場所で暮らそう。君と僕、すぐに生まれてくる子供達と一緒に・・・ブラスとイレーヌが成し遂げられなかった幸せな家族になるんだ」


「・・・ええ、勿論よ」


フレデリックの顔が近付いてくる。彼の唇を受け入れるため、彼女は目を閉じた。

それは一瞬の触れ合い。部屋のドアがノックされたことで、二人の顔は離れる。キスに恥じらい顔を伏せるオーレリア。応対のために、フレデリックが顔を向けて返事をする。

入室したミオが、紅茶の入ったティーセットをテーブルに置くと、素早く退室していった。彼女は背もたれに身を預けて、いつもの紅茶が用意されるのを待った。

あの濃桃色の液体が混ぜられた紅茶。飲むように言われたオーレリアは、すぐに飲み干した。ぼんやりする思考と熱くなる体。

熱を与えられた彼女はキスを強請られたことで、時間が許す限りフレデリックと触れ合った。

隙あらば、薬飲まされて言いなり強化されちゃうオーレリアちゃん。

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