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どこか皆が優しくしてくれる

今回の恋愛(?)相手がやっと登場しました。

オーレリアは父親のいる執務室のドアをノックすると、返事を待って入室した。

中には父のルヴァン公爵とアルバがいた。領地経営に関しての書類をチェックしていた彼ら、主にルヴァン公爵に訴える。


体の弱さを治すために発掘事業に参加したい。代々の家業を引き継ぎたい。

必死に歴史に興味があること、歴史家としてルヴァン公爵家に仕えたいと訴えて、唸りながらも渋る父親に縋った。

執務机を挟んで奥にいるルヴァン公爵へと身を乗り出して熱意を伝えれば、父は頷いてくれた。


「家業の一部門を担いたいと言うなら、私は任せていいと思う」


即決ではないものの許してくれた父親に違和感を覚える。ルヴァン公爵は厳格な貴族男性だった。

令嬢と生まれたからには婚姻によって家に利益をもたらすべきだと、死に戻る前は口癖のように言ってオーレリアの苦しみなど知らない振りをしていたのに。

何故か優しくなっているが、父親から許可を得た。ただ、純粋に喜ぶオーレリアを尻目にアルバが声を張り上げた。


「オーレリアは我がルヴァン公爵家の令嬢ですよ!婚姻をせずにして職業婦人になるなど、オーレリア自身の価値を損ないかねません!彼女は王妃になりうる格と器すらあるのです!」


「黙っていろ、アルバ。この子はまだ幼い。今から様々な道があると知って、自身に相応しい将来を見つけるべきなのだ」


「父上はオーレリアの才能を見誤っている!」


オーレリアのことで争う二人。

あり得ないと身を強張らせた。兄のアルバは父親に忠実だった。後継として従い、以前オーレリアがカルロと結婚するときも、苦々しい顔で認めていた。


(なぜ・・・いえ、お兄様のことを考えるべきではないわ。私は私のために生きていくと決めたのだから)


「夢を叶えたいのです。以前、お祖父様の元で発掘調査の見学をしたことを覚えていますか?私はあれほど、過去の物を見つけて調べるほど、興味を持てるものはありません。発掘調査は私の夢なのです」


怒鳴り合う二人の声に掻き消されることなく、はっきりと意志を伝えた。


アルバはそれでも引き止めようとした。母は父に従うだけだから離れて暮らすことを寂しがるだけ。


「何も心配しなくていい。お前が夢を見出したのなら、私は背中を押そう」


公爵という立場から、父親は家内から上がる不満の一切を封殺して、オーレリアを祖父母の元に送ってくれた・・・───。






───・・・王都の南部にある地方都市。隠居した前公爵の祖父は、突如転居してきたオーレリアを快く迎えてくれた。

優しい祖母と共に、愛らしい孫娘との同居を楽しみにしていたと純粋な愛情を向けてくれる。


(私が捕縛された時も、真っ先に無実を訴えてくださったわ)


直ぐに処刑をされてしまったから最期に目にすることは叶わなかったが、祖父母の慈愛は身に沁みている。

連れてきたメラニー同様に、オーレリアにとっては信頼できる人達であった。


生活するために整えられた部屋で荷物を収納し、祖父母に長年仕えている執事に屋敷を案内された。

祖父母との夕食を楽しんだあとで、メラニーに介助されながら入浴を終えて就寝する。


明日から近郊で発見された遺跡調査に加わる。祖父と共に、後継として追従する予定だ。


どの時期の遺跡で、どのような施設だったのだろうか。何が発見されるのだろうか。

高鳴る胸が睡眠妨害をするが、オーレリアは眠ろうと目を力一杯に瞑った。




早朝。

期待に多少寝不足ではあったが、メラニーによって身支度を手伝ってもらい、可憐かつ清楚な令嬢として祖父と馬車に乗った。

邪魔にならないようにフリルの少ないライトブラウンのドレスだったが、細やかな刺繍がされていることから地味ではない。オーレリア自身の美貌も相まって、麗しさを強調していた。

祖父は不満そうではあったが。


「君にはもっと可愛らしい装いが似合うよ」


艷やかな金の髪はツインテールのふんわりとした編み込みにされている。その金色は、窓から見える景色に夢中になっていたオーレリアが、祖父へと視線を向けたことで揺れる。


「お祖父様、私は視察にまいります。遊びのつもりではないので、相応しいドレスを侍女に頼んだのです」


「真面目だねぇ・・・私としては可愛い君を皆に見せびらかしたかったのだが」


「私は見せ物ではありませんよ?」


呆れて言えば、祖父は楽しそうに笑う。情の感じる温かな眼差しで、可憐なオーレリアを眺めていた。


「そうだね、我が家のお姫様の機嫌を損なわないようにしなければ。帰路に付いたら私行きつけのカフェに寄ろう。美味しいパンケーキがあるんだよ」


とても甘い言葉を贈りながら、愛しい者だと隠すことなく言い表す。

手放しの愛情を久し振りに、死に戻る前には殆ど受けてなかったことでオーレリアは気恥ずかしくなってしまった。林檎色に染まった頬を隠すため、両手で包み、窓の外を眺めようとする。

馬車は遺跡に到着したようだった。作業員の姿や発掘道具。何より畑の中心にある穴から見えた石柱群に、オーレリアは目を輝かせた。

馬車は祖父が先に降り、差し出された手に掴まって彼女もタラップを降りる。


「閣下!」


駆け寄ってくるのは発掘調査の現場監督だろうか。土汚れの目立つシャツとズボン姿。手にしている書類や巻物は、資料だろうかとオーレリアの関心を寄せる。

ただ、目の端に映った人物が、直ぐに彼女の意識を奪った。


数人の従者を連れている麗しい美少年。上位貴族の令息、などではない。オーレリアもよく知っている人物。

烏の濡羽色の黒髪と夕日のような鮮やかな橙色の瞳を持ち、銀灰色の礼服を身に付けた彼は、カルネアス王国の第二王子。フレデリック・ダリオ・カルネアスがいた。


一瞬、ミドルネームをディオにしようとしてしまった。自重のためのダリオです。敢えてのダリオ。

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