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7話

 この街は過去、隕石による災害で壊滅状態に陥った。

 当然犠牲者は多く、俺と俺の妹もあわや命を落とすかもしれなかったのだが、目の前の朱華の救助活動により一命を取り留めた。


 ここで1つ断っておくと、魔法少女となったのはその恩という訳では無い。


 魔法少女として変身すると、身体能力が向上するため、最終手段だが救命行為として変身させる事もある。


 例えばさっきスライムとの戦いでの俺がそうだ。


 全身大火傷で急ぎで処置をしても助かるかどうかは分からないラインの重症だったが変身することにより魔力によって自己回復が出来たため、なんとか一命を取り留めた。


 魔力による再生は自身の意思で行うものと、道具の安全装置として周辺魔力を集めて持ち主を治療するものの2種類ある。

 主に後者が、重傷者の首の皮を1枚だけ繋げる希望として使われる事が、無くもないらしい。


 というのも魔法少女に変身できるかどうかは賭けだ。まず性別が男か女の1/2を通さねばならない。

 そのうえで、魔法少女になれる体質かどうかも賭けだ。


 そこへ来ると俺はその最初の1/2を外していたのだが、妹たっての希望で朱華を説得し、最初に俺の命が助かるかどうかを試す事になったそうだ。


 この辺の話は当時意識が無かったため、朱華や妹経由で聞いた話となる。……改めて聞いても意味がわからないが。


 そんな災害に俺達兄妹が遭遇したのはまさに俺と朱華が今いるこのショッピングモールだ。

 来る度に当時の事を思い出してしまう。

 今まではさほど特別な感情は湧かなかったが、変身時以外も女体化してしまうとなると当時の事に何も思わない訳では無い。


 しかしそれでも今いるここはわずか1年で再生し、当時以上の活気を取り戻している。それはとても喜ばしい事なのだが……


「これとこれ、どっちがいい?」

「あ、あの……出来ればジャージを……」

「どっちがいい?」

「……そっちの、白い方で。」


 しかしそれとこれとは別。

 ひょっとするとこんな店があるから、俺は今着せ替え人形みたいになっているのかもしれない。


「じゃあ、これとこれなら?」

「ええと……地味な方で。」

「どっち?」

「……黒っぽいやつで。」


 確かに何時までこの状態になるのかは分からない以上、衣服が1枚だけと言うのは良くないと思う。

 だがしかし、あんなマネキン買いする程にオシャレをする必要があるのか?

 俺のその手の知識は妹が遊んでいたカードゲームで止まっているんだが、ひょっとしてこの時のために昆虫同士で争わせるのを辞めて、ファッションの予習しておいた方が良かったのか?


 ……いや、無い無い。


 何故か朱華は滅茶苦茶張り切っているが、普通に考えてそこまでの必要が無い。無いが……まあ、横に並んだ時にジャージが嫌って言うのなら全然分かるので、その時に関しては合わせるか。


「試着して。」

「……今!?」

「良いから!」


 物凄い圧を感じた。

 当然、慣れない衣服のため着替えにしては結構時間がかかったのだが、言われるがままに試着すると買い取る事になり、そのまま退店。


 周囲の視線に怯えながら、ショッピングを再開することとなった。


「……俺、こんな事してていいのかなぁ。」


 あまり多用しない為、今頃スマホが無いことに気づいた。おそらく変身道具と一緒で、男に戻れなくなったあのタイミングで、身につけていたものは衣服から持ち物まで全部無くしていたのだろう。


 帰りが遅くなっている事に関して連絡が出来ていないが、心配していないだろうか……


「お兄ちゃん遅いなぁ……」


……


 今日は兄の帰りは遅かった。

 こう言うとかなり変だが、兄は魔法少女だ。

 殆ど私の身代わりになる形で、魔法少女として働いている。

 女装……とかではなく、変身すると本当に体が女の人になっていた。


 1度冗談でお姉ちゃんって言ったらちゃんと怒られたけど、もしかして姉が居たらあんな感じなのかな?


 私にとっては大事な家族の1人だから、性別なんてあまり関係無いんだけどな……


「まだ返事が来ない……」


 いつもならもう仕事が終わって、その連絡が来て、そこから買い物に行ったり、出かけたりするか決めるはずだけど……今日はこっちから連絡しても、返事がなかった。


 1人でも外に出れない事は無い……んだけど、1人より2人の方が色々便利だから、いつもそうしてた。


「……買い物、行かなきゃな。」


 それに何時も仕事帰りの兄を使うのは、実はちょっと気が引けている。


 もしかしたら忙しいのかもしれないし、今日くらいは自分の力で何とかしないと……!

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