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28話


「そろそろ目的を聞いてもいいですか?」

「そんな畏まらなくても。言わなかったっけ? 面白そうだから……だよ?」

「教わる身分ですから。それと、それは私に色々教える理由ですよね? 私や先輩に構う理由の方です。」

「そっちも大差はないんだけど……これを教えてから引き下がられると、ちょ〜っと困った事になるのと、お兄さんにもまだ言っていないので、紺野ちゃんにも内緒だよ。」

「私は先輩の身代わりでもあるので、聞く権利ぐらいはあるはずです。」

「……引き返せなくなったとしても?」

「勿論。」


「事の発端は去年の話です。あなたなら特にご存知の事かと思われますが、この街で大規模な火災がありましたね。」

「……別に私でなくとも知っていると思うけど。」


私や、特に先輩は忘れられるはずがない。

先輩には言っていないが、私もあの災害で変身道具による救助をされ、そのまま魔法少女になったからだ。

それにそうでなくとも、都市部に隕石が落ちるなんて天災が、地震や台風でもかなりの傷跡を残す世の中で、1年やそこらで忘れられるはずが無いのだ。


だが……一体何でそんな話を今?


「なるほど。では知らない情報をお教えしましょう……あれは人為的に引き起こされた物です。」


「……は? え?」


今、こいつは人為的……つまり人の手によるもの、と言ったのか?

誰が? 何の為に? という、至極当然な疑問が……


驚くほど頭には浮かばなかった。


有り得ないからだ。


昔、地球をスイカとした際にリンゴ大ほどの比率の大きさを持った隕石がおちるとどうなるか? というCGを見た事がある。

接地面は当然ながら、破砕した地殻や隕石が飛来……宇宙の話には詳しくないが、素人目には地球が崩壊といって差し支えないように見えた。


あの時の隕石は当時それと同等、という話を聞いた。


どうやったかは分からないが、結果として被害はそんな宇宙規模の話ではなく、例えば首都直下のような甚大なダメージこそ生まれたものの、それでも災害の範囲に収まっていたため、あの時の大袈裟な話がどこまで本当かは分からないが。

……いや、この場合首都直上型か? なんて不謹慎な疑問にまでたどり着いたところで、現実に戻ってきた。


「ふふ、面白い顔になってますよ。」

「……いや。いやいや! 有り得ない……ですよ。」

「そうでしょうか? いえ気持ちは分かりますよ。私もこの目で見た時は正直……吐き気を催しましたから。」

「目で……見た? 嘘でしょ?」

「事実です……といっても、本物ではなく記録ですが。」


「この時代です。魔法を扱える人間の一挙手一投足は全て記録されてると言っても良いでしょう。あまりにもプライベートな物は他者からの閲覧ができなくなるようですがそれはさておき……私はあの一件で不自然な物を感じました。」


話には聞いた事がある。

一種の監視カメラのようなもので、観測可能内であれば人の動きから空気の流れまで全てを記録している観測機がある……という話だけなら。

もっとも私は実物を見た事が無いので、そんな話をいきなり出されてもとりあえず信じる。みたいな対応しか取れないわけだが。


一旦話を進めるために彼女の話が全て真であるとして聞き進めよう。分からない事があったら先輩にでも聞けばいい。


「不自然とは……?」

「魔法少女が、増えすぎている。」

「……いい事では?」


話が全然見えてこず、全くピンと来ない。

彼女の立ち居振る舞いを見るに、むしろ閃かないように意図的に話を遠回りにしているのかもしれないが……

それでも今聞いた話には困る事は何も無いように思えた。


「一見するとそうかもしれません。人命を守るり治安維持に貢献する部隊である以上、人手はあって困るものではありませんから。」


例えば例の災害が世紀末化を進め、治安の悪化を進めてしまったとなれば話は分かりやすい。

魔法少女は基本的には人間同士のトラブルには首を突っ込まない為、魔法少女が増えたところで魔物ではなく人間による被害が多ければ……という理屈であれば全然言いたいことは分かる。


「しかし、事件前後で5倍の人員になっている組織もある事を考えると話は別です。明らかに「利益」が存在している。」

「ちょ、ちょっと待って。じゃあその、あなたの言う利益の為にあんなに人が死んで、苦しんで、今もその傷が残っている人達が居るって事?」

「はい。」


だが、仮に、仮にあの災害が人の手で起こされたとて、一体どんな立場の人間がそれを行う理由が存在するというのだ。

目的も分からなければ手段も分からない。

何もかも見当が付かない話というのは確かに……今の先輩には言わない方が良いのかもしれない。


これはもはや……テロだ。


だが……もしそれが本当であればそんな規模のテロ行為に、魔法が介入していないはずがない。

そうなったら、私たち魔法少女の仕事となる。


「一体どこの誰が? そんなことが許されていいワケが……」

「ふう、話せるのはここまで。今はお兄さんの戦力もアテにしているので、まずはそっちを片付けてからですね。」

「……あなたが余計な事を言ったんですよ?」

「うーん。お兄さんのことだから、言わずともいつか起爆した気はするんだよね。そんな不安定な状態で居るよりは早い方がいい気がしてね。」


「真面目な話は息が苦しいですね……ふう。じゃ、お兄さんが落ち着くまで、紺野ちゃんは座学で。」

「ざ、座学……」


……正直、今の話を聞いた上で何かを手に付けられる程、私は器用ではなかった。


「ううむ……私に魔法の知識が全くないのは、もう、これ以上ないくらい分かってはいるんですが……い、一旦休憩を……」

「それは全然いいけど……その分遅れるのは紺野ちゃんだからね。」


とりあえずさっきの話を纏めておいて、何処かのタイミングで先輩に相談しよう。


「ふう……先輩も似たような事してたんですか?」

「いいえ? お姉さんはこの辺り完璧でしたね。身近に先生でもいたんでしょうか。」

「え、じゃあ先輩にはどういう事を教えていたんですか?」

「前提知識があるならあとは身体に馴染ませるだけだからね。血反吐吐くまで殴りあってたよ。」

「ひっ……ち、血反吐?」

「うん。お姉さん、綺麗な戦い方は出来るんだけど、魔法少女の戦い方じゃないんだよね。だから多分、生身だと私とお姉さんがツートップで強いよ。」


……変身をせずに魔力による強化のみで戦うのであれば、確かにオリオンにも小言を言われずに済むかもしれない。

だが、そんな事おいそれと出来るものではない……! 基本的に道具によるアシストが無ければ怪我を直すのも苦労するほどだ。

そんな事が簡単に出来てしまうのなら、私たちはわざわざ重傷を負った時に変身までして生命維持をしたりしない……!


「せ、先輩が……?」

「……やってみる?」

「い、いえ! 大変、遠慮させて頂きます!」


もしかすると、先輩はかなり危険な事をずっと前からしているし、その自覚がないまま私を連れてきてしまったのかもしれない。

私がここに来てしまったのは私が無理を言ったからなので、そこはもう私の責任ではあるが……

()()()()である先輩が危険な事をしていたのを全く感知出来ていなかったのはかなり、ショックを受けた。


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