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21話

 実は変身というのは魔法少女の特権ではない。

 というより、魔法少女のコスチュームに変身している連中が魔法少女を名乗っているだけではある。


 じゃあ他の変身パターンはどんなのがあるか? という話だが……

 魔法少女以外は特定のコスチュームを取っている事は実は少ない。


 というのも魔法少女は人命救助の側面がある為に統一性を持たせているという節もある。

 だがそれは制服から役割を推測されてしまうという事に繋がり、また同一の所属である事も伺えてしまう。


 やましい事が無ければ何の不都合もないが……それらが不都合に作用する輩も居た。


「メリュジーヌ様……」

「菊池ちゃんさあ。負けるのは別に良いんだよ。もうしょうがない。私だって勝てない相手の方が多いくらいだからさ、気持ちはわかるよ。」

「……はい。」

「でもね。役割を果たせないのはやっぱ違うんじゃ無いかなって。菊池ちゃんの仕事は何?」

「……オリオンを筆頭とした、魔法少女の戦力調査です。」

「できた?」

「……できませんでした。」

「なんでか分かる?」

「……倒そうとしました。」

「そうだね、そこで質問。比較的足止め能力に特化してる菊池ちゃんは何故魔法少女を倒せるなんて勘違いしたのでしょうか?」

「ち、違います! 2人組のうちに新顔の魔法少女が居て、そいつなら捕えられるかと思ったんですが……魔法生物の制御が上手くいかず……!」

「なるほどなるほど……捕まえて頭の先からつま先まで調べられればそりゃあ一番効率がいい。」


「でもね。一つだけずっと口を酸っぱくして言ってる事あるよね。相手の強さを見誤るなって。これ意地悪じゃなくて、あまり死んで欲しくないから言ってんだよ。再生もタダじゃないからさ。」


「ま、菊池ちゃんには荷が重いみたいだから私が代わりにやるよ。そろそろ潜入も始めようと思ってたからね。その魔法少女の名前はなんて言うの?」


「メリュジーヌ様が……ですか?」

「顔を覚えられてるキチクネビクには出来ないでしょ。」

「実はね、魔法少女の免許を手に入れたんだ。拾ったものじゃなくて正規に発行してもらったものだからちゃんと使える。勿論所属すると色々不都合が起きるからフリーの魔法少女になると思うけどね。」


「服はどうされるのですか?」

「変身はまあ、着替えれば大丈夫だよ。変身後の変装は時間制限をつければ出来る事が調査済だからね。」


 ……


 人を探すなら上空から、というのが今までの魔法少女探しにおいて一番勝率が高い戦法だった。

 だがしかし……ここ数週間の間、ただの一度も目的の魔法少女は見つけることが出来なかった。


「アリスブルーか……あいつおかしい。」


 厳密には顔を合わせた事はある。

 しかしそれはこっちも魔法少女として活動している間なので、とてもじゃないが追跡という訳にはいかない状態だった。

 普段の立ち居振る舞いで非協力的な魔法少女と認識されると今後の調査に影響を及ぼす可能性もある。

 一人の魔法少女が見つけられないと言うだけで今後の評価を捨てるにはあまりにも重いコストだった。


「魔法少女にも日常があるはず……なのに、アリスブルーにはそれが一切ない。見つける事すら出来ない。」


 顔さえ覚えられればと思い、一度話したい事があるといって足止めしてみたはいい物の、その時はなんやかんやと逃げられてしまった。

 その後も顔を合わせる事はあったため、警戒されているという訳ではないようだが……



「仕事の時以外に姿すら見つけられないなんてことある? ……考えられるのは変身による成長で別人レベルになってる可能性だけど……」


 私も正直その節がかなりある。

 ……私は別に若いとかそういう訳ではないハズなのに、変身すると身長がかなり高くなる。

 これだけは解せなかった……それはそれとして。


「見つけられないだけじゃない。明らかに情報が隠されている……ただの魔法少女にそんな保護が? ありえない。何か見落としが……」


 連絡先すらも手に入れられないというのはなかなか攻略難易度の高い魔法少女のようだ。

 がしかし、地道な調査のおかげで彼女の活動範囲の傾向は掴めてきている。

 休み出さえなければ、僕を使ってほぼほぼ間違いないといえる確率で遭遇する事が可能になっていたからだ。


「よし、菊池ちゃん今日も魔物の放出頼むよ。細かい操作は出来なくていいから、まずは魔力の絶対量を増やそう。そうだな……今日は魚で行こう。尖ったやつ。」


 こういう時に彼女に攻撃性能が無いのはとても便利に感じる。

 うっかり目標を殺してしまう事が無いからだ。

 もっとも、最近は規模が上がって来たので一般人の救助に割く時間が増えてきてしまっているのだが……それは成長痛として割り切っておこう。


『協力要請が来ています。』


「オッケー、メリュジーヌ改め、魔法少女ピアニーに任せなさい。」


 イレギュラーが起きたのはその後だった。


 とっくに避難が済んだと思っていた地域に呑気に散歩しているバカが一人いた。

 こういうバカはたまに居る。正直自然淘汰の一つとして消えてくれても私個人の思想としては問題ないのだが……

 アリスブルーがよく出没する地域で死なれるのは普通に困る。今は彼女を刺激したくない。


 仮に彼女を警戒させても万に一つにも私の計画がバレる事など無いとは思うが、警戒されなければよりありえない。


 そう思い助けに向かったが……間の悪い事に変身の時間切れが来た。

 本来戦闘能力のないハリボテの衣装に元々の変身服の性能を渡しているため、どうしても1時間以上は活動が出来ない。

 また、変身と変身のインターバルも必要になる。 こちらはまあ正直無視はできるが、その場合変身する姿は元の姿となってしまう。


 死ぬくらいなら迷わず変身するが、魔法少女や一般人に目撃されるのだけは避けたい!


「……10分だけ! 10分間だけ協力してくれると……!」


 不覚にも、一般人に助けられる形となってしまった。

 勿体ないが……今回はアリスブルーの調査は諦める事にしよう。

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