連戦
『コングラッチュレーション。敵性存在の初撃破を確認』
ピットクリフの声を聞き流しながら、私は茂みの影から歩き出ると、額を撃ち抜いたワーウルフへと近づいていく。
走りよってくるワーウルフに対して、回り込んで茂みの身を伏せた私。ワーウルフはそんな私を、怖がって隠れたと思ったようだった。
獲物を狩る本能に負け、さらにワーウルフは私のことを侮ったのだろう。勢いのまま茂みを飛び越え、じかに私に飛びかかろうとした。
そう、狩猟犬のように。
ワーウルフの筋肉の動きを見ているだけで、その体の次の動きも、その考えさえも私には丸わかりだったのに。
後は、簡単だった。
空中にいて、避けられないワーウルフへインテリジェンスガンを向け、引き金を引く。
たったそれだけ。
特に感慨も、生き物を殺した実感もわかない。
──よく、お話とかだと、銃で撃ったときに、手応えがあったとか、あるけど。全然そんなことないや。
だから、私は本当に自分が生き物を殺したのか、確認に向かったのだ。
足元に転がるワーウルフの死体。
チョンチョンと爪先で突っついてみる。
『他のガンガールの支援下にない状態での魔石の回収は非推奨です』
インテリジェンスガンのピットクリフがまるでそんな私をいさめるように告げる。
「魔石……ああ、そんなつもりじゃないの。ただ、確認したかっただけで」
見当違いのピットクリフに、私は思わず苦笑してしまう。
──インテリジェンスガンってもっと万能の機器ってイメージだったんだけど……
『移動を推奨します。現在、他のガンガールへの応援を依頼。しかし次の敵性存在の接近には間に合いません』
「ああ、迎え撃ちやすいところに行けばいいのね」
沈黙するピットクリフ。
なんとなく噛み合わないものを感じながらも、私はそのまま足の向くままに移動を開始する。
──風が吹いている。こっちにしよう。
無意識に風上に向かう足。
それが偶然にも幸運へとつながるのだった。