sideセレナ=田中
「っう! 強烈っ」
ガードした腕に感じる衝撃。まるで小型の自家用車が激突してきたかと勘違いするほど。
思わずインテリジェンスガン、ダブルスを取り落としそうになる。しかしセレナ=田中はツインテールを振り乱し、下腹部に意識を集中させてこらえると、震える腕に力をこめてダブルスを強く握りしめる。
──少なくともまだ、二体以上、いる。見えない敵か。なんて厄介。
すでに戦闘開始から受けた打撲で、全身が軋むようだ。
セレナは衝撃で震える腕を伸ばし、必死に二丁拳銃ダブルスの引き金を引き絞る。
──手応えは、なし。くっ。不味い。痛みで狙いが定まらない上に、行動が読まれている。このままじゃ……私は、皆を守るべきガンガールなのに!
'頑張って、セレナ様!'
'ああ、おいたわしい……'
'もう、見てられません……はぁはぁ'
'不謹慎ですわ……はぁはぁ'
'貴女もですわよ、全く……はぁはぁ'
インテリジェンスガン、ダブルスと連動しているドローンが撮影している戦闘配信の映像。
そのダブルスチャンネルのコメント欄は、主にセレナ=田中を心配するコメントが溢れていた。
一部を除いて。いや、半分くらいは。
残り半分はセレナ=田中が攻撃され苦悶の表情を浮かべる度に大量のコメントを書き込む視聴者だった。
そんなダブルスチャンネルのコメント欄はいつの頃からか不思議な不文律が存在していた。
それは、コメント主の性別問わず、コメントの語尾は一定の規則にのとってコメントするというもの。
そしてコメント主の間での互いの呼び名は「貴女」にするというものだった。
それはセレナ=田中の見た目と気質がお姉さま風なことから一部で始まった習わしだったが、今ではすっかりコメント欄での不文律と化していた。
しかし、全く余裕の無い今のセレナはそんな半分をしめる応援のコメントも、残り半分の好奇に満ちたコメントも目を通す余裕はなかった。
──不味い、視界すら、暗くなってきた……ぐぅっ!
ふらっときた瞬間に打ち込まれた衝撃。なんとか片手だけで反撃を放つ。
しかしそれもまた、空振りとなる。
──もう、ダメか……
気丈なセレナですら、そんな諦めの気持ちに襲われかけた時だった。
奇跡が起きる。
暗く歪んだ視界の先に現れた、銃を構えた女性。
──だれ? ガンガール? でもあんなパッツン前髪の子なんて、いたかな?
何かをセレナに話しかけてくるその現れた見知らぬガンガール。
そしてその次の瞬間鳴り響く、三発の銃声。
するとなんとそれだけで透明だった敵性存在三体がセレナの足元へと現れたのだ。
あまりの出来事に、何が起きたのか受け止められないセレナ=田中。
──あの子、見えている、の? もしかして彼女が通達のあった新人? 円上ルリを逆に救援したと噂の、おデコちゃん? 私、もしかして生き残った?
呆然とパッツン前髪のガンガールを眺めていたセレナ=田中だったが、ガンガールとしての最後の矜持をかき集めて意識をしっかりさせる。
そしておデコちゃんへお礼を伝えようと彼女の元へと歩みだすのだった。




