北畠の川筋
玉手山を北に下っていったあたりと思われる北畠（阿倍野区北畠の西半分）が気になって、それからしばらく北畠に通った。
北畠（西半分）も上町台地にあり、西には更に下りになっているのだけれど、東にすぐの熊野街道や南にすぐの帝塚山（玉手山）からは下ったところ。
西からだけじゃなく北からも上ってくるところだったから、玉手山の北西の中腹部にあたるのかもしれなかった。
阿倍野神社の東の道（川筋だったのかもと思った道）を北上するとさくら坂で、急な下り坂で一気に低地に下った。
下ったところで道が３つに分かれていて、左手に進むと西の紀州街道へ、右手に進むと南東に熊野街道へ、そのまま進むと東に向かい、すぐに壁につきあたり、上にはマンションが建っていた。一気に下ってきたけれど、また高台がある、ということは、ここは川筋だったのかな。
今、東に歩いてきた短い距離分がその川筋の横幅。ここを流れてきた川に、阿倍野神社の東の道からの谷川が注いでいたのかも。
その頃のわたしはまだまだ分かっていなかったし、このあたりは谷でいっぱいだったのかも、というのも確証のないただの犬の戯言くらいに思っていた。西すぐに天神森天満宮もあって、清水が豊富だったらしい、とは思いはしつつ、まだまだ目の前のコンクリで固められた住宅密集地に目くらましされていた。
このときいっぱい歩いて、目くらましの術が解けていったのかも。
いっぱい歩いて、結論から言うと、このさくら坂を下ったところを左右に進む道が、北西に流れる川筋１。そこに阿倍野神社の東側を通って北に流れる川筋２が注ぎ、それとは別に東からの川筋３もこのあたりで注いでいたのじゃないかな、と思う。
草木が茂る中、苔むした谷を沢が流れる、そんなところだったのじゃないかな。雨が降ったら川になり、西の海に注いでいたのかな。
川筋１だったと思われる道は、熊野街道（阪堺電車上町線）沿いの晴明丘中央公園あたりから始まっていた。姫松停留所の少し北。
南港通と熊野街道との交差点が姫松交差点で、そのすぐ北に姫松停留所。ポアールとかフォルマとか有名なケーキ屋さんも並んでいる。かつてはなだらかな丘だったのかな、と思われるあたり。
交差点から晴明丘中央公園にたどり着く手前（米屋さんのところ）、道路の向こうに西に向かう道は、ゆるく右にカーブしながら下っていた。
ここを進んでいった。北畠も帝塚山同様、大きなおうちが多かった。
大きなおうちの中には中国や韓国の人らしき表札もあった。
左手に急な上りのみなみ坂。これも阿倍野の七坂の１つ。蓋つきの側溝からは水が流れる音がしていて、急坂とあって勢いがよかった。溝は一部は道の真ん中を通っていた。沢の名残なのかも？
それからやしろ坂。前に阿倍野の七坂をめぐった時には、この坂の上では大きなマンションが建設中で、「やしろ坂」の石碑は折られていた。マンションは完成して、石碑ももどされたらしかった。
ここを過ぎると、しっとりした雰囲気に。おうちの石塀の間から大きなクスノキたちが育っている光景に見覚えがあった。旧家の庭のモミジが見えていて、野鳥が鳴いていたりする。空気も青々と苔むしているような感じ。
それからさくら坂があり、晴明丘西公園。
阿倍野の七坂を探した時、ぐるぐるどこを歩いているかもよく分からずに歩いた。けれど、この道を行けばいいだけだったんだな。もう３つも見つかった。
かつてのわたしには坂は点でしかなかったけれど、線でつながっていたんだな。ここは上町台地の中でも山あり、谷ありだったのだろうところで、その谷に沿って坂があったんだな。
川筋３だったと思われる道は、さくら坂の少し北あたりを通っていた。
得忍寺（普通の家に見える）のあたり。お寺の玄関側（北側）は一般道で面白くなかった。
けれど、裏の細道は面白かった。かつて片田舎の村だった頃、数軒の家があり、そこから裏山に上るための道だったって感じがした。一部そんな感じを残していた。
東に進むと道の右手（北畠）にも左手（相生通）にも家がぎっしり並んでいて、左手の１つが得忍寺。そして左手の家はよく見れば２階だった。
北の公道に面している家々は一階に玄関がある。それと同じ高さに建てられた南の細道に面する家々は２階に玄関があった。それだけの段差があるんだな。
川が流れていたのは細道（北畠と相生通の境界線）の北側。
前にど田舎のおうちに行ったことがある。ごうごうと流れる小川があり、そこにかかる橋を渡ったところにおうちがあった。裏は山で、中腹の日当たりのいい場所に畑を作っているから、そこに上るじぐざぐ道があった。少し離れたところにあるおうちでは牛を飼っていた。川の向こうは田んぼ。
ここもそんなところだったのかも。阿倍野にも牧場があったらしいし。
この細道は途中でなくなるので、北の一般道で川筋あたりをさかのぼっていった。
阿倍野相生郵便局があり、このあたりは右も左も急な上りの坂になっていて、谷だったのがよく分かった。
右手に「相生“阪”」の石碑。これも阿倍野の七坂の１つ。北に見える公園は、晴明丘相生公園。このあたりの公園は丘の中腹的なところにあることが多いけれど、ここもそうだった。公園の南口からでも北口は見上げる高さにあった。
緑陰豊かな公園で、かつての晴明丘（でいいのかな？）はこんな素敵なところだったのかな。
道は上りになっていった。大きな家があって、すぐチン電（阪堺電車上町線）の線路だった。踏切を渡ると、すぐ熊野街道で、「八軒屋浜から７．４ｋｍ」の碑があった。右手には源正寺。
北にはすぐ晴明丘公園。経塚跡の碑なんかがある小さな公園。５０円の自販機なんかがあって、帝塚山あたりからいきなりの下町ぶりだった。もう少しで阿倍王子神社や安倍晴明神社。
上町台地の尾根部だったらしきこのあたりの水が川筋３を流れていったのかな。
