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コロナ

それから緊急事態宣言が出された。

しばらく遠出の散歩に行っていないのに、これがこの先も1カ月は続くのか・・・。

ちょっとくらいいいんじゃないの? 電車は動いているし、すいているだろうし、マスクしていればいいんじゃないの? とか思った。けれどテレビで報道されるのは、医療崩壊し始めたイタリアの若い看護師さんの涙ながらの言葉などだった。

「外に行かないで。自分の自由だと外を出歩くけれど、世話をするのは私たちです」

「私たちは使い捨てのマスクだ」

そんなのを見たら、好き勝手には歩けなくなる。あんな思いを人にさせてはいけないと自宅待機。

人間の世界は考えられないくらい便利で、すごいと思っていた。けれどその世界は、すごく簡単に崩壊してしまうんだな。安全、清潔、医療、水道、電気、食品、物資、みんな当たり前にあるものだと思っていたけれど、簡単に失うこともあるんだな。

当たり前にあったのじゃなく、提供してくれる人々がいて、みんなが与え合って、与え合って、成立している世界だったんだな。


けれど家にばかりいると気が滅入った。

テレビはずっと繰り返していた。家にいてください、少しでも人との接触を減らして、できれば人との接触を8割カットしましょう、それにはたとえば買い物の回数を減らしましょう。マイクを向けられた人は、コロナ対策のために寝ずに頑張ってくれているだろう人たちの無策を説いていた。

おかあさんはマスクをして、顔周りに手をもっていかない、帰ったら手洗いをする、わたしは足も洗う、それを心掛けながら、ストレスにならない程度には人には会わない外出をした。

東粉浜小学校の桜が満開になっていくのを見た。志村けんがいなくなった世界にまだ全然慣れずにいた頃。

素敵な長屋などを見ながら東粉浜小学校の北の階段道へ。住之江の素敵な長屋に携わったという会社が建てた長屋が、このあたりにも散在しているんじゃないかと思う。

小学校のグラウンドにほんの二人くらい小学生がいて、世話する女性が一人。医療従事者などでどうしても預けるしかない子どもだけ小学校で預かるといっていたような。

その上で、満開の桜が咲いていた。


万代池に向かい、途中のパン屋でパンをゲット。パン屋には「人員不足のため創業祭は中止します」の貼り紙。

万代池公園も桜が満開で、強風の日だったけれど、ほとんど散らずに咲いていた。

歩いている人がいっぱいいた。花見というより、外出して体を動かしにだけ来たっていう感じ。少し前にはレジャーシートを敷いている人もいたけれど、もう誰もいなかった。

マスクをして将棋をうつおじいさんがもいない。片方のおじいさんはマスクをあごまでずらしてしゃべっていたりしたけど。みんなマスクはしつつも、あごにずらして固まって遊んでいた小学生のグループもいない。

行きかう人は8割がたマスクをしていて、マスク越しにおしゃべりもしていた。そんなのを見るだけでほっとした。無言の人ばかり見る日々だからなあ。

マスクしていないのは、おじいさんが多かった。独り暮らしとかで、マスクを買うための行列に並ばないし、手作りもしないのかな。手作りといったって、マスクゴムは売り切れだし、この頃は代用の帽子ゴムもなくなっているって。

人気のないベンチでパンを食べた。

家に戻る途中には、解体されている家や、新築中の家が多くて驚いた。たいへんな局面でも、人の暮らしはつづいていくんだなあ。

過去のことになったら、いろんなことが分かるのだろう。けれどただなかにいるときはなにが正解かなんて言える人はいなくて、暗中模索の中、それでも暮らしは続いていくんだなあ。


それから咳をする人にたまに出会うようになった。「しつこい空咳」というやつ。

大阪の感染者は、一日に100人くらい判明するようになった。

通りの飲食店は半分くらいは「お休みします」とシャッターがおりていた。「ご自愛ください」とかのメッセージ付きで。スーパーマーケットも、安売りを知らせる広告は当分自粛するらしい。人を呼ぶのを避けるために。

道頓堀商店街の「がんばれ武漢」の違和感のある横断幕は「がんばれ大阪!」に変わっていた。

外ではあまり人を見なくなった。みんなで一丸になって難局を乗り越えていく感があった。

これは緊張感の高まっていた時だな。緊張感が高まって、気が緩んで人出が増え、また緊張感が高まって・・・というのを繰り返していたな。

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