表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

STORIES 046 :曖昧な記憶を、あいまいに掘り起こす

作者: 雨崎紫音

STORIES 046

挿絵(By みてみん)



高校3年生になった僕は電車通学をしていた。


田舎なので、通勤・通学の時間帯でも、電車は1時間に2〜3本。

高校生なんてみんな同じ電車になりがちで、学校が同じなら尚更だった。

つまり、朝はいつも同じ顔ぶればかり見ることになる。


そんな中に、どこかで会ったようで、でも誰なのか思い出せない新入生がいた。

少し短めに直したスカート、濃い色のハイソックス。


結構かわいい。


…可愛らしい、のほうが近いかな。

妹みたいな感じで、恋愛的感情はない。


乗る駅が一緒だから、同じ町に住んでいるのだけはわかる。

向こうは僕のことを認識しているのかいないのか微妙な感じ。

僕の勘違いかな…


そのまま何週間か過ぎた。


.


ある土曜日の帰り道。

ホームで上り電車を待っていると、あの子が1人で現れた。


少し離れた場所で電車を待つ。


やっぱり思い出せないな。

でも今日は帰り道だから、駅を出てどっちへ向かうかくらいはわかるか。


そして僕らは、その距離を保ったまま電車に乗り、僕らの住む街の駅で降りた。


.


あの子が先に改札を抜けて歩き始める。

僕もいつものペースで歩く。

駅前の交差点を渡り、まっすぐ歩いてゆく。


ん?同じ方向か…


そのまま10分くらい。

あの子が前を歩き、僕は10mくらい後ろをゆっくり歩く。


あれ?もうウチもだいぶ近いんだけど。

どこまでこのまま歩くのかな。

ストーカーみたく思われたらどうしよう…


と思っていたら、通り沿いの見覚えのある家に入っていった。


へぇ…あの子はあの家の子だったのか。


そういや面影はあるか。

懐かしいなぁ。


.


保育園の頃だったか…

その家の女の子とたまに遊んでいたのだ。

庭で砂遊びとか、そんな程度かな。


でも、よく通る道路沿いなので、忘れることなく、思い出だけはずっと残っていた。


あの子、可愛くなったんだなあ。

こんなふうにみんな、知らないところで確実に時を重ねているんだね。


幼なじみ。


幼い頃によく一緒に遊んでいた記憶はあるのに、その後の人生に全く登場しない人たち、というのはけっこう多い。


親たちの都合に応じて、友達が変わってしまうことも多いからね、子供って。


.


その後もよく顔を合わせたけれど…


話を交わしたりすることはないまま、僕は卒業してその街を離れた。


だって、話したいことなんて、いまさら何も思いつかなかったしね。


彼女は可愛くて、僕らは幼なじみ。

それだけでもう充分じゃない?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ