表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vamp  作者: 明日奈 美奈
2/19

2記

「モラン様の弟君ね。

お初にお目にかかりますわ。私、アイリス伯爵が息女、リルアともうします。」

丁寧に挨拶をしてくれた義姉に丁寧な挨拶を返す。

義姉の面差しはどこか見知った顔によく似ていて、だけど、どうしてもその面差しの持ち主が思い出せずにいる。


「あら、忘れるところでしたわ。」

後ろに控える侍女に目を配らせて、これは私の妹のリリー=アイリス。

あたしの2期下の学園の付き人だったから、あら、カイア様も同じ学年ね。

あたかも妹をメイドのように扱う。

リリーは無言で幼なじみの姿をそのセルリアンブルーの瞳に写す。

そして、用意していた嘘を反芻する。

すべてはこのときのために。


「リルア様、妹君を庭園にご案内してもよろしいか?」

どうしましょう?

保護者である姉を見やる。

保護者の許しがなければ行動が取れない。

姉の普段の態度から、リリーのような妹を義兄の家族に知られることが嫌なはずだ。


「いいわ。カイア様、お願いできるかしら?」

妹の幸せのためには、妙齢の有力貴族の子息との縁談が必須。

その上で、相手方の後見を願い出るより道はない。


「驚いた。リリーがリルア様の妹だったなんて。」

至極率直な感想だった。

兄嫁の妹が幼なじみの少女だったなんて。

違うわっ。

あたしはリルア様の妹ではないわ。

あたしはリルア様の付き人メイドよ。

あなたにもいるでしょう?

一緒に学園で学ぶ付き人が。


「ずっと対等だと思っていた幼なじみが、自分より格下だと知ってスッキリした?」

違うっ。違う。

あたしは、本当は。

だけど。ノーザンバード子爵を継ぐものとしてアイリス家と縁を切らなければならない。

お姉さまの妹じゃないと、共にノーザンバードの血を引く最後の身内なのに言うのは辛い。

だけど。

ノーザンバード子爵を継ぐと決めた以上は責務を果たさなければ。


「・・・そんなぁ。」

あんまりにも情けない声しか出せなかった。

このときにはまだ、リリーが背負うものも知らなかった。

面差しからも実の姉妹だとわかることなのにどうして嘘をつくのかと疑いすらした。

本当に、リリーのことを何一つ知らなかったんだ。


「リリー、カイア様とは楽しめて?」

はい、といつものように答えてはいるが。

わからないと思っているのか。

表情がいつもより和らいでいる。

鉄仮面をかぶり、冷たい瞳をしているこの妹が。

初めて人間らしいと思えるようになった。

このときはまだ、二人の関係について何も知らなかったけれど・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ