主人公が来る!!
次の日、アカデミー内を歩いていると女子生徒たちが数人固まっているのが見えた。
なにか噂話でもしているのかしら?と、すこし聞き耳を立てながらゆっくり通り過ぎる。
「…で、平民の方が。」
「よっぽど優秀な方なのかしら。」
「かなりの美貌だとお聞きしました、それもあるのでは…。」
「ではこの学園のどなかが呼んだとか…?」
ハッとした。
そうだった!!プリニワの主人公、ハンナが入学してくるんだった!!!!!
ベネディクトのことを考えすぎてすっかり忘れてた!!
ハンナはベネディクトの一方的な好意で入学してくる。
それが裏口入学だなんで夢にも思わず、本人は自分の実力で入ったと思ったままで。
それが断罪イベントに繋がるんだった!
ハンナにはなんとか取り繕わなくちゃ。
小走りでベネディクトを探して、アカデミー内を駆け回った。
すると柱の陰に女子生徒数人と談笑するベネディクトがいた。
こいつ…昨日の今日で…。
「ベネディクト様!!!」
私は大声で呼び、むう、とした表情で睨んだ。
「あ…ヴェロニカ!」
ベネディクトはなんの悪びれもなく微笑んだ。
くそ、顔がいい…。
「ベネディクト様、大切なお話があります。」
チラッと女子生徒たちを一瞥すると、婚約者を前に流石にまずいと思ったのか、令嬢たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
「ベネディクト様、私が昨日言ったことをお忘れですか?」
睨みながらそう言う。
「あー、そうだったよねぇ。でも、あの子たちから話しかけてくれたから…。」
そう困ったように言うベネディクトをさらに詰める。
「話しかけてくれた???一体なにを言っているんですか?校内でベタベタと、しかも他の令嬢と。いやだって言ったじゃないですか!」
「ヴェロニカ、急になんでそんな怒ってるの?」
「だって嫌なんです!他の子と話してるの見るのが!」
「いつも君はそんなの平然と横目に見てたじゃないか。特段興味なさそうに。」
「そんな余裕ぶるのはやめました。イヤなものはイヤ!そう伝えます。」
「いや…でも…話しかけられたら蔑ろにできないんだよ…。」
「そういうところです!そこを毅然と断るところから始めてください!」
ベネディクトはウッという表情をしていた。
「そ、それで…大事な話って?」
こいつ、話題を変えようとしてるな。
そう思ったけど、ハンナのことはかなり大事なことなので素直にその話をすることにした。
「ベネディクト様、平民の女の子を裏口入学させたでしょう?
カワイイからって。」
「えっ?!?!なぜそれを?!?!?!」
「私はなんでも知っているんです。
隠し事をしようだなんて思わないでください。」
ゲームプレイ済みでシナリオを知っている、という軽いチートだけど。
「昨日の話以前のことなので、裏口入学させたことについては特に追求しません。
ただ、その彼女はきっと自分の実力で入学してきたと考えているはずです。
ベネディクト様が裏口入学させてたなんて知ったらさぞかし傷つくでしょうし、そもそも王家の力を使って個人的に気に入った娘を裏口入学なんて、王子としての印象最悪です。」
「た、たしかに…。」
「なにも考えてなかったんですか?」
「僕は元々王子にふさわしくないから、好き勝手やろうと思ってたんだ。」
「はあ…。」
ため息しかでない。なんでこの人はこうなの?
「もう好き勝手なんてさせませんよ。これからは私が監視しますからね!」
「…ヴェロニカは本当に急に変わったね?」
「…そんなことより、ハンナのことです。今日から入学してくるんでしょう?それなら、やれることは一つです。」
「えっ…?」
ベネディクトの腕を引っ張って、アカデミーのガーデンにむかった。
ここでハンナは入学して一番最初にベネディクトと会話イベントがあるはずだからだ。
ガーデンにつくと、噴水のそばに一人の女の子が立っていた。
たなびくピンクブロンドと、平民がゆえの質素なドレスが儚さを演出している。
「ハンナ・ストランドね?」
私は後ろから声をかけた。