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77.ツンデレな元娘

「貴女、カルリ・バーンヘイズと関係が深いと言っていたわよね?」


 アニスが少し離れた場所で聞いてくる。

「え? はい、カルリお嬢様は私の恩人で、とても大切な方です」

 唐突の質問に戸惑ってしまう。


「まだ決まった訳じゃないけど、この国の王太子ルーク殿下と婚約する事になるかもしれないわ」

「え?」


 そう言えばアニスはこの国の双子の王子様の家庭教師をしていると言っていたな。それならそんな情報が耳に入ってもおかしくない。

 そういう事ならカルリは将来の王妃様って事?


「凄い…」


 思わず口にしてしまった。


「凄い! どんどん手の届かない場所まで行ってしまう。本当に凄い!」

「呆れた、本当にその子の事が好きなのね」


 横にアニスがいるのを忘れていた、自分の事ではないのに興奮してしまい恥ずかしくなってしまう。

「まあ…確かに凄い事なんだけど」

 アニスの表情が少し曇る。


「あの、どうかしたのですか?」

「そうね私の勝手な感想だけど…ルーク王子は何か違うのよね? 何だろう? とてもじゃないけど12歳とは思えないのよね、とても大人? いや違うかな?」


 アニスが言い淀む、上手く口で表現出来ずに困っている。


「ああ、もどかしいけど上手く言えないわ。まあ、今日は貴女が偶然ここにいたから教えてあげただけよ。それにあくまでその可能性があるっていうだけ、だから他の人に吹聴しないでよ」


 言い出しておいて自分から話を切り上げてしまった。アニスは今も上手く表現できないのがもどかしい様子だ。


「ありがとうございますグランマーレ様。カルリお嬢様のお話、とても励みになります」

 どうやら私の為に教えてくれたみたいだ。思ったよりアニスとコミュニケーションがとれている事に困惑はするが、悪くはないと思ってしまう。


「アニスでいいわ…」


 ん?


「名前で呼ぶ事を許してあげるって言ってるの!」


 さっきアレクシスが意地っ張りでツンデレと言っていた、最初は何の事か分からなかったけどコレの事か!?


「ですが」

「良いから呼びなさい、ウェルマ」


 ソッポを向きながら私の名前を初めて呼ばれた。


 これは誤算だ。私はウェルマとして生きて行こうと決心し、グランマーレ家の人達とは距離をとろうとしていた。なのに向こうの方からどんどん近づいてくるなんて。

 そして、喜んではいけないのになぜか嬉しくなってしまう。


「…分かりましたアニス様」


 ソッポを向いているが自分で言って恥ずかしかったのだろう、耳まで真っ赤になっている。ここは気を利かせて話題を変えよう。


「それで、あの方が剣老と呼ばれている方なのですか?」

「え? ええ、そうよ。知らなかったの? 剣術とかやっている人なら知らない人はいないって言われているのに?」


 全然知らない、ベネルネスだった頃でも剣を教えている事さえ知らなかったし。


「少し前に話した私のお母様の叔父にあたる人よ、グランマーレで剣術を教えているの。そこらじゅうに弟子がいるらしいわ」


 アニスの上辺だけ掻い摘んだ説明に興味のなさが伺える。そして実は私には剣老なんかより気になる事がある、さっきから視線がそっちに向いてしまう。


「あの…オリヴィエ教官とグランマーレ様は」

「…元婚約者同士よ。私だったら気まずくて会おうと思わないと思うわ。まあ、大人になるとそれは無理なのよね」


 アニスに大人の世界を教えられてる、何か少し変な気分だ。


「私は…その恋愛とかに疎いので分かりませんが、お互いに嫌いあっているようには見えませんが」

「うん、私もそう思うわ」


 アニスは素直じゃないのかはっきりと言わないが、2人が上手く行けばと思っていそうだ。遠目で見ながらアニスが切実な思いを吐露する。


「ところで貴女は恋愛に疎いの?」


 変な事に興味を持たれた!? 何でニヤニヤして私を見ているんだ?私の事なんて関係ないと思うが。


「…その……周りの男の子から大女とか、怪力女とか言われて馬鹿にされてきましたから、そう言った経験は全くありません」


 誰にも語らなかった悲しい過去を思い出す、私は馬鹿にされてもエルダのようにやり返したりしなかったので泣き寝入りしていた。

「ふん、その周囲の男共はクソね」

 何か私側になってないか?少し前までは私を見て嫌悪するような目をしていたのに? これは手の平返しってやつなのか!?


「ウェルマ、こっち!」


 ここでナフタが私を呼ぶ、その顔がとてもキラキラと輝いている。もうこの時点で嫌な予感しかしない、一縷の望みをかけてアニスを見ると「どうぞ、行ってきなさい」的なジェスチャーをされる。


 現実はそんなに甘くなかった。


 仕方なく呼ばれるがままにナフタのもとへ向かう。すると腕を掴まれてマクシミリアンの前に連れてかれる。


「お師匠様! この子が言ってた凄い強い女の子です!!」


 ナフタ、あまり持ち上げないで!!

「おお、でっけーお姉ちゃんだな」

 聞き慣れた第一印象だ、マクシミリアンが私の顔を覗き込む。こんな顔だったかな? 若い頃しか知らないので少しだけ違和感を感じる。

「ナフタと仲良くしてくれているらしいな、ありがとうな」

 人懐っこい笑顔で感謝される、この顔を見て何となく思い出す、ベネルネスに対してもこんな顔をしていた気がする。


「いえ、仲良くしてもらっているのは私の方です」

 慌ててナフタを私の前に立たせる、ナフタという盾があれば剣の手合わせとか言い出さないだろう。

 一方のマクシミリアンは興味深く見ている、私はその視線から逃れるために小柄なナフタの背中に隠れる。


「…あれ? なんか嫌われてる?」

「いえ、そういう訳ではなくて…」


 ナフタまで私を不思議そうに見てくる。


「その…ここのところ立て続けに強い人にボコボコにされて負けてまして、少し自信を失いつつあると言いますか何と言うか、少しだけ強い人から遠ざかりたいという願望がありまして」


 特にゲルトバルトなんて手も足も出ずに完膚なきまでに負けたからね。ナフタも私がデルライザーにボコボコにやられたのを思い出したのかハッとしたような顔になる。


「そうだよね、デルライザー様に本気でボコボコにされて酷い目にあってたもんね」

「は? デルライザー? アイツなにやってんの? 女の子相手に何やってんの? 馬鹿なの!?」


 ここでデルライザーの名前が出たのでマクシミリアンが驚いている、一応誤解のないように模擬戦形式の訓練だという事は言っておく。


「…待てよ? それならデルライザーはお前さんに対して本気でやったって事?」


 そういう言い方は止めてほしい! 明らかにお手合わせしたいという顔になっているだろ。





読んでいただきありがとうございました。

明日も投稿します。

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