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6.私は3歳になったよ!

 ウェルマ・ライアン、怪我も病気も無く無事3歳になりました。

 好き勝手歩く事も出来るし、おしゃべりだって上手になりました。


 さてと、このライアン家も大きな変化はあったもののみんな元気です。

 まずその大きな変化というのは私に弟が生まれました! 名前はウォルフ・ライアン、プニプニしたほっぺがクセになる可愛いらしい男の子です。

 サイアムは北への遠征が終わったらしく最近ではよく家にいる。時々誰かに呼ばれて駆り出されているようだがとても元気だ、そしてよく分からないが昇進したと言って喜んでいた。

 母のミシェルはウォルフを出産したばかりなので家で養生している。家に母親がいてくれるとやはり安心できると思う今日この頃だ。ただ本人はいたって元気なので最近は近場で狩りをやり始めているようだ。

 次は長姉のサーニャだ、この前10歳になったと言っていた。つまり私の世話を7歳の時にしてくれたという事だ、本当に頭が下がる思いだ。相変わらずのみんなのお母さんをしてくれるし、最近ではミシェルの指導の下で小さな獣を捕まえてきた。外で捕まえた山ウサギを解体していたから本当の話なんだろう。

 長男のザックは9歳になったと言っていた。集落のガキ大将みたいで、よく怪我をしたりドロドロになって帰って来る。

 実は何も知らなかったがサーニャもザックも同年代の子供達と比べて体が大きく、運動能力は飛び抜けて良いらしい。


 最後に次姉のエルダだ、今は7歳になって大分落ち着いてきたようだ。兄のザックとはよく喧嘩をしているが、私に対しては物凄く優しくなったと思う。ただ兄弟の中でも一番気が強く、同年代の男の子とも平気で喧嘩すると聞いている、今の私に対する優しい態度からは信じられない。


 そしてエルダは7歳になった事で大きな節目を迎える事となる。

 今、私が住んでいる場所は、どうやらエルバニア王国で間違いなさそうだ。なぜならこの国では主宗教であるロスローリア教の洗礼を7歳で受ける事になっているからだ。それは私がベネルネスだった時にもその習慣があった。

 洗礼の儀式とは幼少の節目を7歳で迎えるという意味の儀式で、大人への第一歩となる。

 その顕著な変化を迎えるのが魔力だ。このくらいの年齢から魔力が色づき始めると言われ、この洗礼の儀式で魔力に色があるかどうかが分かる。ある意味、その子の将来がここで決まると言っても過言ではない。


 私も息子のアレクシスの洗礼の時には本当に緊張した。無色だったらどうしようと夜も眠れなかったな、病に伏せていたけど無理を言って参加させてもらったのを思い出す。結果は無事グランマーレ家特有の深い青色が現れてくれて安心したが、その時まで本当にドキドキだった。

 娘のアニスはどうなったのだろうか? 立ち会えなかったのは残念だけど上手くいっている事を祈るしかない。今が何年か知る事が出来ればいいけど、この家には新聞などの外の世界を知る物がないから全然分からない。


 話が脱線してしまった。今度はエルダが教会で洗礼を受ける事となる、サーニャとザックの2人も7歳の時に洗礼を受けたけど無色だったのは聞いている。サイアムは残念がっていたけど、両親の家系が無色なら子供も無色なのがほとんどなので仕方ないらしい。ただ稀に無色の血族からでも色つきが生まれる事もあるので一応は期待をしているみたいだ。



「エルダねーさま、行ってらっしゃいませ」

「ウェルマ、ねーさまは止めろって言ってるだろ?」


 洗礼に行くエルダを見送りをすると頬をグリグリされて怒られる。こればかりは癖でつい言ってしまう、気をつけて直さないといけない。

「そうだ、ウェルマも一緒に行くか? 街に一回も行った事なかったろ?」

 サイアムが私を抱き上げてそんな提案をする。

「そうだね、エルダも3歳の時に初めて街に行ったからね。どうだい?」

 ミシェルまで賛成している。


「いいの?」

「ああ、いいぞ! その代わりちゃんと父さんとお姉ちゃんのいう事を聞くんだぞ」


 嬉しい! この集落から出た事が無かったから外の世界を知れるのは本当に嬉しい!!

「行く!」

 こんなチャンスは滅多に来ない、逃すわけにはいかない。

「よーし、ちょっと待ってろ。よそ行きの服を用意するからな!」

 昔サーニャとエルダが着ていたよそ行きの上着を今は私が着ている。私の服は全て姉達からのお古なのが残念なのだが、今の私に何も出来ないのでこれを着るしかない。

 昔だったら自分の服が欲しいと思うが、最近になって今の現状に慣れてきたと思う。おそらくこうやって今の状況に馴染んでいくのだと思う、なのでこの服への拒否感は一切無い。


「よしよしダンダム、街まで乗せてってくれよ」

 エルダに連れられて外にいるサイアムのもとに行くと、そこには我が家の愛馬ダンダムに鞍をつけて出発の準備をしていた。

「ダンダム!」

 エルダが呼ぶとダンダムは顔を近づけてくる。とても頭が良くて優しい性格をしている馬で、戦場でサイアムと一緒に駆け抜けたらしい。


「よし、ウェルマは籠の中に入ってくれ」

「うん!」


 サイアムの背負う大きな籠の中に私は入る。そしてエルダはサイアムが抱き抱えるように鞍の前の方に座る。

 馬車ではなく、馬に3人乗ることになるとは前世では想像も出来なかった。


「ちょっと待って、これも持って行って」

 ミシェルが慌ててやって来て私が入っている籠の中に獣の毛皮や肉や骨などを投げ入れる。


「いちゃい…」

「ははは、ごめんよウェルマ、荷物のスペースがそこしかないから少しだけ我慢してね」


 これらを入れた理由は分かっている。母ミシェルはハンターを生業にしている、なのでこれらを街に行って換金してきて欲しいようだ。

 大きな籠の大半を毛皮などに占拠された状態で出発する事となった…乗り心地は最悪だ。


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