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4.新しい家族、新しい自分

 ここが何処かは分からない、だけど私は新たな命を授かり、新しい家族に迎えられた。

 だから私はその中で生きていかなければならない。色々と観察しつつ今の自分が何なのかを知って少しずつ現状を受け入れていこうと思う。


 最初に分かった事、それは私がウェルマ・ライアンという名前でこの家の第4子であることだ。

 兄弟の事にも触れていこう、まずは長女のサーニャ。年齢は分からないが身体が一番大きいから最年長だと思っている。色々と私の面倒を見てくれて母親の代わりに世話をしてくれている。

 二番目が長男のザック。私にほとんど会いに来ないのではっきりと人物像は分からない。ただ悪童っぽくてよく叱られている、ただ髪の色はサーニャや次姉のエルダ、私と違って赤ではなく濃い茶色だ。

 三番目が次女のエルダ。私と歳は近いようだが口は悪い、女の子なのにガサツでよくサーニャやザックに叱られている。そして気が強いようで年上相手でもやり返そうとする、まあ体格差があるので毎回負かされて泣かされている。


 何か今まで住んでいた世界と正反対すぎて困惑してしまう。


 そんな私は一年経ってようやく立つ事が出来る様になった! 今まで自然にやっていた事がこんなに難しいとは思わなかった。


 それでも私は自由を得た。柵で囲われたベビーエリアの中なら自由に動き回れるようになったのだ! そして日課となっているのが窓に映る外の風景を眺める事だ、改めて見るとかなり田舎の小さな集落のようだ。

 そして同時に新しく生まれ変わった自分の姿が窓に映る。以前のベネルネスの頃とは似つかない、全く正反対の顔をしている。自慢の銀髪は燃えるような真っ赤になり、少し釣り上がっていた目も、クリクリとまん丸な可愛らしい目をしている。きっと将来は愛らしい女の子になると自分で勝手に妄想してしまう程だ。


「帰ったよ」


 外から女性の声が聞こえる、再び外を見ると猪? みたいな獣を軽々と担いだ女性が入ってくる。

 背が高くて筋肉隆々、私達姉妹と同じように燃えるような真っ赤な髪をしている。


「母ちゃん!」

「お母さん!」


 姉2人が迎える、母ちゃんやお母さんと呼ばれるこの女性こそ私の母親のミシェルだ。どうやら狩人を生業にしているみたいで頻繁に外出し猪やら鹿や熊を狩ってくる。

 これがこの家の収入源なのだろう、みんなが手伝って狩ってきた獣の皮を剥いで洗ったりしている。そして毛皮や肉などを切り分け、それを売って生計を立てているようだ。

 そのおかげかは知らないが、この家の食卓には常にお肉が並んでいる。けして生活水準は高くないのに必ずお肉がお腹いっぱい食べられる、この矛盾は最初は本当に意味が分からなかった。

 一方で食べるものは贅沢しているのに服などは本当にお粗末だ、長姉のサーニャは着飾れば絶対に光るのに何もしないなは勿体ない気がしてならなかった。


 そして私はまだお肉を食べられない。現在は離乳食が主食なのだが、この家の人間は野菜をほとんど食べないのに気づく。サーニャが別で用意してくれなかったら赤ちゃんの私にお肉を食べさせていたかもしれない。

 この家で私の生命線は長姉のサーニャだ、彼女だけは絶対に逆らってはいけない。


「ウェルマ、帰ったよ」

「おえりなしゃい(おかえりなさい)」


 母のミシェルが部屋に入って来るなり私を抱き上げる。舌足らずながら少しずつ喋れるようにはなった。

「ウェルマは頭が良いかもな、何となく言っている言葉が聞き取れる」

 私と話しているとミシェルの顔が物凄く良い笑顔になる、きっとこういうのが表情豊かな母の顔なんだと思う。ベネルネスだった頃の私とは正反対で、それが私の中で物凄く新鮮に感じる。

 私は子供達に対してはどうだったろうか? 自分の理想を子供達に求めてばかりじゃなかっただろうか? 今更ながらこうすれば良かったと後悔の念が押し寄せて来る。


「アンタ達、喜べ! もうすぐ遠征からお父さんが帰ってくるぞ」


 家族全員が揃った食事の席でミシェルが嬉しそうに報告する。お父さんというのは父親のことだろう、私が生まれた時にいた野太い声の男性の事だと思う。どんな人かは知らないけどみんなが嬉しそうにしている、私としては会った事がないのでピンとこないが、いつも留守しているので何をやっているのか気にはなる。

「ねえ! 父ちゃんはいつ帰ってくるの!?」

 女の子に囲まれて肩身の狭い思いをしていただろう、ザックがミシェルにまとわりつく。本気で嬉しそうな顔をしている。

「ふふふ、いつだと思う?」

 深みのある笑いを見せる。


「じゃーーーーん!! 今だよおぉぉ!!!」


 突然扉が開くと立派な鎧に身を包んだ大男が入ってきた。突然の出来事に全員があっけに取られて言葉が出ない。


「…ね、ねえ、やっぱり普通に出てきた方が良かったんじゃ?」

「いやいや、久しぶりに父ちゃんが帰って来たんだ、少しくらいサプライズがあった方がインパクトがあるだろ!」


 思った反応と違うのか父と母は狼狽えている。

「とーちゃーん!!」

 状況を把握したザックが父に突進する。


 ゴンッ!!


 鎧を着込んでいるのを忘れていたのか鉄部分に顔を思いっ切り強打する、物凄く痛そうな音がした。


「わたしも負けねえ!!」


 次姉のエルダも負けじと父に突進する。だが鎧の尖った部分に顔を強打し、弾き飛ばされると同時に鼻血を派手に吹き出してしまった。


「お、おい、待て! なにやってんだ」

「ちょっと、エルダ!!」


 突然の出来事に慌てる父と母。

「うわぁぁぉぉぉぉぉおぉぉぉぉわぉお! いいだだぁいいいいい!!!!」

 鼻血が止まらなくて大泣きするエルダ。

「あははは、馬鹿じゃーーーん!!」

 腹を抱えて笑うザック、貴方が全ての元凶だろ!!

「鼻血を止めなきゃ!」

 冷静にお母さんをするサーニャ。


 私が生まれた家は少々落ち着きがないみたいだ。



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