33.解決で良いのかな?
驚いた、もしかしたら私と義理の母娘の関係になっていたかもしれないオリヴィエ・エルドラゴン公爵令嬢とこんな場所で会うとは思わなかった。
たしか息子のアレクシスと同い年だったから25歳か?こんなに美人になってくれて嬉しく思う、確か小さい頃はとんでもないお転婆っ子だったはず。
どうかな? 既婚者かな? 独身かな? 結婚しているなら相手はアレクシスかな? 色々と根掘り葉掘り聞きたいけど、聞いたら間違いなく変な目で見られるよね?
「そんなに貴族の名前が重要なら正式にエルドラゴン家から抗議してやろうか? お前達が士官学校の受験を汚した事も全てこの目で見ている、どうせなら本元のハイルランダー公爵家に直接文句を言ってやってもいいぞ?」
「ま、待ってくれ」
男の一人がオリヴィエを止めようとする。
「待ってくれ? よくもまあ公爵家に対してそのような口をきけるな? さっきまで貴族の権威をかさにかけていたではないか」
強い口調で威圧する。
「も、申し訳ありません、このまま引き下がるので、どうかお許しを」
慌てて下手に出て取り繕おうとする。
「ならん! 貴様らの試験での態度は許せるものではない! 真剣に試験に臨んでいる者を冒涜している、しかも15歳の少女にボロボロに負けたあげくこうして大勢で攫おうとしている、これはどんな弁明もきかない大恥を晒していると分からないのか?」
すると男達が逃れられないと思ったのかシェスカに向けて走ってくる、そして手には光る物が見えている。
困ったな、男が刃物を持っているのが見えてしまった。
でもここに公爵家のオリヴィエがいるなら正当防衛を証明してくれるよね。
前に出て男の首根っこを捕まえて突進を止める、すると私と目が合ったと思いきや、いきなり悲鳴をあげて気絶してしまった。
「あ、この人、私と対戦した人だ」
ようやく思い出した。
「きっとトラウマになったんじゃない?」
ナフタが酷い事を言う。そう言いつつも突進してきたもう1人の男の首筋に抜き身の剣を突き立てている。顔は笑っているがやっている事は恐ろしい。
「ははははは、本当に情けない者達だ」
オリヴィエは笑いながら残る3人の男達を制圧していた。
「後は任せておけ、コイツらを尋問してハイルベンドに送り返してやる」
「あ、ありがとうございました」
シェスカが助けてくれたオリヴィエに頭を下げる。
「気にするな、最初からこの者達の態度は気に食わなかったからな。それに未来ある芽を摘み取ろうとする愚行は許さない」
なんてカッコいいんだ!
「それに君達は私が指導する予定だ、生徒が減るなどありえん」
何気に爆弾発言をしている。まさかオリヴィエ自ら私達を教えてくれるのか? それはそれでちょっと嬉しい。
「取り敢えずコイツらを連行する、君達はそのまま帰ってくれ」
オリヴィエが5人を引きずって帰っていった。
「カッコいい…」
「惚れる」
「結婚したい」
ナフタ、シェスカ、クラリスが好き勝手言っている。私は何か物凄く疲れてしまった。
「私達も行きましょう」
3人を連れて私の泊まっている宿へ向かう。
「「「安っ!!」」」
宿泊費を見たみんなの第一声がそれだった。
「これだったらお金借りなくても大丈夫そう」
3人とも持ち金は似たようなものだ。
「ふん、安くて悪かったな」
宿のおばさんが睨みつけてくる。ペコペコ頭を下げながら逃げるように3階の部屋へ向かう。
「あっ、窓は開けない方が良いよ。解体してるから」
「「「解体?」」」
いきなりクラリスが窓を開けてしまった。
「びぎゅうあうううう!!!」
魔物の最期の断末魔が聞こえる、すぐにクラリスは窓を閉める。
「言ったでしょ?」
「…はい」
3人とも青い顔をしている。
「安い理由も分かった?」
「うん」
泊まれれば良い人向けの宿だ、文句を言ってはいけない。
「それと・・今からあの肉を食べるけど、大丈夫?」
「無理」
まあ、気持ちは分からなくない。だけど私はお腹が空いているので食べるけどね、部屋から出ると3人とも私についてくる。
「…お腹はすいた」
空腹には耐えられなかったようだ、ちなみに私はハンター証を持っているのでギルド内の食堂で食べる事が出来る。3人も私のハンター証のおかげで格安ご飯にありつけるのだ。
「いいな、ハンター証、私も取れるかな?」
ナフタが興味津々で私のハンター証を見ている。
「あると便利だよ、そこらの森に入ってウサギとか狩ってくるだけで食料が手に入ってお金を貰えるよ」
色々と説明をする、どうやらナフタは本気で取ろうと考えているようだ。
「私は無理かも、可愛いウサギなんて狩れない」
シェスカは早々に無理だと諦める、でも今食べているのはウサギの肉だ。
「私は教会の人間ですから」
そう言えばクラリスは教会の孤児院で育ったと言っていたな、確か殺生は禁止だっけ?それでもクラリスは肉を食らっているから食べるのは良いみたいだ。
何か知らないけど普通に仲良くなってしまったけど、すべてがバラバラの人間なんだよね。
「ねえ…ウェルマって本当に無色なの?」
ここで改まってナフタが尋ねてきた。まあ、私は自分でバラしてしまったから今さら撤回とか誤魔化しは出来ないだろう。
「うん、そうだよ」
すると深く考え込むような顔になる。
「まあ、苦労は多いけど、ある人との約束があるからね。騎士になるのを目標にしているの」
私の初めての友達のお願いだ。それを叶えるためにみんなが助けてくれて今の私がいる、だから一歩踏み出せた事は本当に嬉しい。
「いえ、変な意味じゃないの、気を悪くしたらゴメン。ただ試験でウェルマと対戦だったら、私は手も足も出ずに負けたなって感じちゃって」
うん? 変な事を言われたぞ?
「あの時ナフタさんって、魔法を使ってなかったでしょ? だったら全力を出さずにあれなら私なんかついて行けずに一方的にやられ放題だよ」
すると否定してながら首を横に振る。それから「さん」をつけるのをやめて欲しいと強く言われてしまった、呼び捨てで呼んで欲しいと言われてしまった。
「実は私は緑色の魔法を持っているの、風ね。あの後方へ距離をとったのって実は魔法なの」
そうなの? 全然分からなかった、凄い技術だ。
「凄い、全然分からなかったよ」
私の代わりにシェスカが驚いてくれた。
「いえ、その聞きたかったのは試験官が言ってた、無色の魔力持ちってどういう意味なのかな? って思ってしまって。あ、言えない事なら言わないでいいから」
うーん、実はバラド師匠から説明してもらったけど、自分でもよく分かっていないんだよね。
読んでいただきありがとうございました。
明日も投稿します。




