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32.戦い終えて

「やった! 何とか勝てた!!」

 何とか勝てて良かった、意気揚々と武器倉庫に重槍と大盾を返してナフタ達のもとへ戻ろうとする。


「…これを振り回していたのか?」


 審判をやっていた騎士がなぜか倉庫にいる、何やら私が使っていた槍と盾を手にしている。

「意外と何とかなりますよ」


 しまった、つい軽口が出てしまった。


「…いや、普通は何ともならんだろ」 


 口元が引き攣っている。怒られるかと思ったが大丈夫そうだ。取り敢えず一礼して会場に戻る。


 会場に戻ると何やら騒ついており、少し落ち着かない様子だ。ナフタ達のいる場所に戻ると3人が興奮した様子で私を迎え入れてくれた。

「凄かった! 凄い! 私、感動した!!」

 大袈裟にナフタが出迎えてくれる、私としてはナフタの方が全然凄かったんだけど。

「貴女達みたいな怪物と当たらなくて良かった」

 シェスカから危険人物認定された!?

「怪我はなさそうですね!」

 クラリスはこの輪の中にもう溶け込んでいる。


「ところで君は魔力を自分の意志で使っているのか?」


 突然責任者っぽいベテラン風の騎士が私に話しかけてきた。

 そして私の力について知っているような口ぶりだ。


「…いえ、私は魔法を使うという感覚が分かりません」

「ははは、無色の魔力持ち共通のムラっ気まで一緒じゃねえか!面白いもんだなぁ」


 ベテラン騎士は何かを知っているかのように笑う。


「まあ、お前らは全員合格だから安心しろ」


 そう言い残すとベテラン騎士は女性騎士を伴って去って行った。

「え?私、負けたのに?」

 クラリスは呆然としてその後ろ姿を眺めていた。


「今から呼ばれる者は合格者だ!」


 背の高い騎士がよく通る声で番号を読み上げる。

「79番」

「よ、良かった」

 シェスカが安心して安堵の息を漏らす。

「81番」


 やった!私も合格だ!減点されたから心配したけど合格出来た!


「199番」

「本当だ、負けたのに本当に受かっちゃった」

 クラリスが驚いている。さっきのベテラン騎士の言った通りになってしまった。

「218番」

 ナフタも合格したみたいだ。嬉しそうに私の方を向いて手を差し出す。


「これからよろしく!」

「うん」


 何か新たな友達が出来たみたいで嬉しい、ここにいる4人が全員合格だ。


「以上合格者総勢32人、明日以降寮を解放するから7日以内に入寮するように!」


 入寮は明日から? 良かった宿を1日多く取っておいて。

「あ、あの今日から入寮はダメでしょうか?」

 ここでシェスカが申し訳なさそうに手を挙げる。

「悪いが部屋の準備が整わない、申し訳ないが最速で明日にしてくれ」

 シェスカが残念そうに項垂れている。

「た、例えばここのベンチで寝るとかはダメですか」

 なんとクラリスがここで野宿をしたいと言い出した。

「出来れば私も」

 ナフタ!?そしてシェスカもそれに同調している。


 今日知り合ったばかりの3人だけど、見捨てるのは忍びない気がする…取り敢えず3人分くらいなら持ち合わせのお金で何とか出来るかな。


「あ、あの、私の泊まっている宿なら安いので、3人分くらいなら貸せるよ、食事はないけど」


 もちろんお金を貸すんだ、奢るほど私は裕福ではない。


「で、でも」

「さすがにそれは」

「申し訳ない気が」


 3人は拒否しようとするが野宿させるよりかはマシだ。

「いえ、あくまでお金を貸すんです。私だって余裕ないんだから、後でちゃんと返して下さい」

 そう言うと納得したのか3人は了承してくれた。そして外に出るとベンチで寝ている人が本当にいた! テントまで用意している人もいる。

「そうか! テントか、頭良いな」

 ナフタが手を叩いて悔しがっている。確かにそれならお金がかからないし、ここなら水が使い放題だ。私も少し残念に思いつつ士官学校を後にした。



 みんな全ての荷物を持って行動していたようだ、かなりの大荷物を抱えている。しかもナフタは自前で剣まで持って来ている、自分の武器が持てるなんて本当に羨ましい。


「…ねえ、誰かにつけられてない?」


 ふとナフタが後ろを振り向く。私達も振り向くが後ろには誰もいない。


「気のせいかな?」

「…ちょっと待って」


 ナフタは自信なく首を傾げる、シェスカが注意深く後ろを見ている。

「ごめん、私のせいだ」

 突然謝られると一人で後ろに歩いていく。


「出て来なさいよ! 私はアンタ達なんかに負けない! 私は自由になるんだ!!」


 シェスカが声を張り上げる。


「悪いがそうはいかない、奥様にお前を連れて帰って来いと言われている」


 ああ、例のハイルベンド妨害部隊の人達だ。最後の最後でシェスカに対して強硬手段に出るようだ。

 女の子1人に5人だなんて卑怯にも程がある、ただ手助けしたい気持ちはあるが貴族のイザコザに巻き込まれるのも嫌だ。


「後をつけてきて正解だったな」


 突然、凛とした女性の声が男達の後ろからする。そこには模擬戦会場にいた女性騎士が立っていた。


「士官学校生を攫おうとは、いい度胸をしているな?」


「うるさい、我々はハイルベンド家の者だ! たかが士官学校の指導騎士程度が上位貴族に楯突くとは良い度胸だな!」


 女性騎士は男達の間を割って私達との間に立つ。


「士官学校では貴族の名に意味はない、もしそれをかさにかける者がいるなら、エルドラゴン公爵家の名において排除する」


 剣を持つ女性騎士が圧倒的な闘気を放つ。エルドラゴン家といったら8公の一つのエルドラゴン家の事か? 白色の魔力を司り、エルバニア王国の騎士団の頂点に立つ最強の公爵家じゃないか!


「ぐ、たかが騎士のくせに、公爵家の名を騙るとは」

「それを言うなら私の名前はオリヴィエ・エルドラゴン。エルドラゴン公爵家の者だが?」


 あっ…オリヴィエ・エルドラゴンって聞いた事ある。


 息子のアレクシスの婚約者候補のエルドラゴン公爵家の次女じゃなかったか?

 こんなに美人で立派になって…幼い頃の姿しか知らないので全然分からなかった。


19時に次話を投稿します。

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